ISPの合従・連衡を狙うBBX

BIGLOBEとhi-hoが参加する,IPトラフィック交換サービスBEX。そのビジネスモデルは“単なるIXではない”独特なものだという。

【国内記事】 2002年2月19日更新

 いまやブロードバンド業界は,群雄割拠の戦国時代。多くのISP・通信事業者が乱立している。

 そんな中,ブロードバンド・エクスチェンジ(BBX)は2月7日より,IPトラフィック交換サービス「ブロードバンド・エクスチェンジ」(BEX:べっくす)の正式運用を開始した(2月7日の記事参照)。開始当初はBIGLOBEとPanasonic hi-hoの2事業者が接続する。

 同社がBEXで狙うのは何か? 19日の「エクストリーム ソリューション セミナー」ではBBX経営企画部の内野義生氏が講演を行い,その意図を話してくれた。


BBX経営企画部の内野氏

 内野氏は「BEXは,単なるIX(インターネット・エクスチェンジ)とは違う」と話す。

 同氏はBEXについて,L3(ネットワーク層)レベルのネットワークエクスチェンジサービスであることを強調。NTT東西やTTNetもネットワークエクスチェンジサービスを行っているが,こちらはL2(データリンク層)レベルのサービスだとして,BEXとの違いを強調した。

 「既存のIXは事業者のネットワークをイーサネットでつなぐだけであり,実はそれだけではインターネットはつながらない。相互接続には(イーサネット上でパケットを流すため)ルータの設定についてピアリング交渉が必要だが,これがなかなか困難なものだ」(同)

 具体的には,ネットワークのトラフィック量の多い少ない,さらに事業者間で加入者数が多い少ないで,交渉が難航することが多いという。事業者の力関係によっては,なかなか一筋縄ではいかないのが実情だ。

 いっぽうBEXでは,事業者間でピアリング交渉を行うことなく,L3レベルの論理的接続が可能。参加の意思さえあればネットワークへのコネクティビティが保証される,中立的なプラットフォームになっている。接続形態は多くの拠点で接続する「点ではなく,面での接続だ」(同)。

 このため,エンドユーザーは複数事業者のネットワーク間でも,最適な経路で目指すサイトにアクセスできる。ネットワークにはコンテンツプロバイダやiDC(インターネット・データセンター)などにも参加を呼びかける方針で,その場合,BBXさえ通ればワンホップ(通過するルータが1つ)でコンテンツにアクセスすることも可能だ。「これと同じビジネスモデルの事業者は,いまのところ見当たらない」(同)


内野氏が示したBEXと既存のIXサービスとの違い(クリックで拡大)

ISP間での合従・連衡?

 BBXが推進する動きは,いうなればISPや事業者に対してネットワークやコンテンツを開放・共有するよう求めるものだ。エンドユーザーにとっては有難い話だが,より多くの加入者を「囲い込もう」とする事業者からは,同意が得られにくい可能性もある。

 この点について内野氏に聞いたところ,「現在多数あるISPや通信事業者は,いずれ協力し合って少数に収れんしてくるのではないか」との答え。世間で大手と言われるISPでも,多くが自社だけではネットワークを維持できない。群雄割拠の状況は“合従・連衡”して,大規模な勢力にとまとまってくるとの見方を示した。

 その際に,BBXのような求心力を持つプラットフォームがあれば,各企業が集まる格好の受け皿になる。「規模の大小に関わらず,共にビジネスできる仲間を増やしていきたい」という内野氏の発言も,そんな思惑の表れだろう。

 ちなみに歴史上の「合従・連衡」は,春秋・戦国時代の中国大陸で強国だった“秦”への,周辺諸国の対策だった。BBXが今後“秦”(内野氏によれば2つあるようだが)とどう接していくのかも,興味深いところだろう。

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[杉浦正武,ITmedia]

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