ブロードバンドの舞台袖,テレビ局の出番は“光待ち”はい本番はいります! の掛け声はかかったものの,かんじんのメイン出演者はいまひとつ気乗りしない様子。IP.netの講演会で,ブロードバンドに対するTBSの考えを聴いた。
すでにブロードバンド時代の幕は上がった。しかしことコンテンツ提供に関しては,主役クラスと目されるテレビ各局が,ステージに上がるのを逡巡している様子だ(2月15日)。 放送局から現在のブロードバンドはどう見えているのか,「IP.net JAPAN 2002」で東京放送(TBS)開発局長の福井省三氏の講演を聴いた。
TBS開発局長の福井省三氏 福井氏はブロードバンドについて,その可能性を認めていると話す。昨年6月30日深夜に,同社の番組「CDTV」をWeb上で配信する実験を行ったが(記事参照),これは満足のいく結果だったという。 「番組放送中,字幕スーパーでブロードバンド同時配信も行っていることを告知したところ,とたんに3200アクセス程度が集中した。こちらは4000同時アクセスに耐える設備しか用意していなかったから,あやうくサーバがダウンするところだった」(同)。
またブロードバンド以外でも,「双方向性」というのは新しい番組づくりのキーワードのようだ。 「(TBSのBSデジタル放送である)BSiの『タイムオーバー』では,双方向クイズ番組に毎週1万人あまりが回答を寄せる。またTBSの『オールスター感謝祭』ではiモードを使って視聴者が回答に参加できる形式をとったが,事前予約1000名のうち実に850人が参加した」(同)。 しかしその一方で,ブロードバンドがまだ“ビジネスにならない”のも事実。TBSが年末に有料配信した「猪木軍 VS K-1最強軍」では,各対戦カードを200円程度の価格で販売した。また年越しイベントでアントニオ猪木氏が108人をビンタする企画も,500円などの価格で配信した(帯域は500Kbps/56Kbpsの2種類が用意された)。 この結果について同氏は多くを語らなかったが,「108人ビンタについては,ビンタされた108人は見ると予想したが……実際はその倍ぐらい買っていただいた」。全体としては「やっぱりというか,がっかりというか」。それほど思わしい成果ではなかったようだ。
FTTHで“上り回線”に活路を見出す講演で福井氏が話したビジネスモデルは,ブロードバンドを新しい販売チャネルとみなし,テレビ番組の2次利用を図るもの。 ここまでは他社と変わらないが,福井氏によれば,「FTTHにこそチャンスがある」という。FTTHになればアクセス回線の速度アップが望めるうえ,“上り/下りとも大容量”というメリットがある。この上りこそが,実はポイントになるとの見方だ。 同氏が指摘したのは,テレビ番組「さんまのスーパーからくりTV」で,素人が撮影した多くのビデオ映像が使われていること。ブロードバンドでも同様に,個人から個人へ,また個人からメディアへと情報を送信していく,新しい形式のコンテンツに将来性を感じるという。 「(FTTHの高速な上りを利用すれば)いろいろなことができる。ブロードバンドのキラーコンテンツは,上り回線から出てくると思う」(同)。 裏返せば,上りが低速な現在のADSLでは,キラーコンテンツが生まれ得ないともとれる。実際,福井氏はブロードバンド上での本格的コンテンツ提供について「ADSLではまだ」と明言する。 「ブロードバンドのビジネス環境が整うのは,2005年から。2003年から立ち上がってくる,光ファイバーが本命だと考えている。現在は,それに備えたプレゼンをしている段階だ」(同)。
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