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P2Pストリーミングの可能性〜シェアキャスト実験参加レポート

「ストリーミングにおけるP2P」とは何なのだろうか? 回線が混雑しないように,誰かが受信しているストリームをそのまま受信しちゃおうというやり方なのである。

【国内記事】 2002年3月7日更新

 P2P……つまりピア・トゥ・ピアのストリーミング。私がこの可能性に興味を持ったのは,昨年の「Streaming Media West」からである。同室だった「インターネット・マガジン」副編集長のオッサンが,会場で見つけたP2P技術について熱く語ってくれてから,ということになる。そして,P2Pのストリーミング技術が,いよいよ国内でも登場した。

P2Pストリーミングって何?

 皆さん御存じだと思うが,時に誤解がみられるので,まず,P2Pという言葉から攻めてみたい。P2PはPeer To Peerを意味しており,「同等のレベル同士でのやりとり」ということを示している。つまり,クライアント/サーバのネットワークの中でクライアント同士は同じレベルだから,その人達が直接やりとりするということである。昔はマシン同士を直結して「Peer To Peer」と言っていたものだから,私などは「1対1」のことを意味するのかと思っていたが,それは間違いである。

 「じゃあ,ストリーミングのP2Pって何だ? ネットミーティングのようなものもP2Pでのコミュニケーションなのか?」

──いや,サーバを介していれば,そうは言わないだろう。

 「ブロードキャスト用ソフトで直接誰かにストリーミングをサーバなしで送り込めばどうだ?」

──その場合は発信側が一種のサーバだと考えて,P2Pとは言わないんじゃないだろうか?

 では,一体,「ストリーミングにおけるP2P」とは何なのだろうか?

 例えば,A君とB君が同じストリーミング放送を受信するとしよう。普通のクライアント/サーバ型であれば,A君もB君も,サーバからのデータを直接受信する。当然,サーバから流れるデータ量/秒は,2人を相手にしている時には2倍ということになる。

 で,サーバ側には人数や帯域の制限があるので,例えば「1000人までしかぶらさがれない」「全体で10Mビット/秒を超えるとアウト!」ということになる。接続する人が増えれば増えるほど,いろいろな場所が混雑してしまうワケである。

 で,P2P型というのは,混雑しないように,誰かが受信しているストリームをそのまま受信しちゃおうというやり方なのである。

 はじめにA君がいてストリーミング放送を楽しんでいる。次に受信しにいったB君は,今度はA君が受信しているデータをいただいて楽しむ。こうやっていけば,特別な機器を使う必要もなく,1カ所に負担をかけることもなく,みんながハッピーになれる。「皆さんが加入すれば,皆さんが幸せになりますよ」と,そういうお話なのだ。

P2Pって,不安ですか?

 エ? 胡散クサく感じる? それは単に私の表現がインチキ臭いだけ。別に新興宗教やマルチ商法の勧誘とは違うのだ。ただ,何となく不安になる気持ちは理解できる。第一,常に自分のマシンからデータが流れているというのが気持ちワルいだろう。それに,一体,自分が誰からのストリームを受けているか分からないのもイヤかもしれない。

 そこで,いかにして効率よく,安全に配信するのか,というのが,各社の腕の見せ所なのだろう。一番近いところからデータを引っ張ってくるという考え方もあるだろうし,単にトランザクションが少ないところから引っ張ってくるという方法もあるだろう。

 もう1つ,著作権管理に問題があるのではないか? ということを考える方もいると思う。しかし,この場合,オリジナルはあくまでも1本なのである。発信する側がそこまで,つまり子や孫や曾孫まで分かるようなシステムになっていればよろしい。

「でも,勝手に自分のマシンからデータが引っ張られているっていうことは,知らない間に上りの帯域を使っていることになるんでしょ?」

 それは,確かにその通りだと思う。ちょっとだけ気持ちが悪いが,それが世の為人の為になるということで納得していただきたい。負荷分散のことを考えれば素晴らしいことなのだ。

ShareCast登場! Winだけだけど……

 で,このP2Pストリーミング技術が国内でも開発されたのだ。その名も「シェアキャスト」。ビットメディアとアンクルが始めた事業であり,つい先日,実験を行っていたところである。当然,私は参加させていただいた。

 で,受信しようとすると,現在はWindowsでしか見ることができない。そこで私,ダサくて扱いにくいWindowsマシンを引っ張りだして見ていた……。専用アプリケーションをダウンロードして,番組IDを打ち込んで接続ボタンを押してみる。


専用アプリを起動すると,Webブラウザが開く。画面は「接続」をクリックし,接続が完了したところ。


すると次にWindows Media Playerが開く。

 ……ここで,ドサクサ紛れに言っておきたいことがある。世の中,Windowsのシェアが圧倒的だ。よって,Windowsだけをサポートすればいい。そう思っている人は実に多い。

 実にまともな考え方に思える。そう考えるならそう考えてもいい。だけど,もう一歩突っ込んで,ユーザーの特性ということを考えてみれば,そうとも言えないのである。

 映像に興味持ってるユーザーは,ことのほかMacのほうが多い。それに無線LANサービスがある喫茶店などに行くと,Macを使ってるヤツらの多いこと……(昨年7月の記事を参照)。とてもシェアが10%台のマシンとは思えない場面に,私はよく出くわすのだ。

 だから,特定のことに関しての関心の度合いというのは必ずしもシェアとイコールではない。コンテンツの内容にもよるが,Macって,ビジネスの対象として侮れない存在なのだということを,もう少し皆様に理解してほしいのだ。Macユーザーにも,ストリーミングって聞いただけでヒィヒィ言ってブイブイ言わせている人は山程いるのだから……。

「一か八か」ストリーミング?

 ……という話ではなかった。

 で,テストしてみた感じなのだが,一言でいうと,「混んでいる時は繋がりにくかったが,一度繋がってしまうと快適に見られた」ということになる。

 面白かったのは,自分がどこにぶら下がっている所がどこか,グラフィカルに分かるようになっている点である。一度,サーバ直下のレベルにぶら下がることができれば,後は比較的楽に見ることができるようだ。一度ぶら下がったポイントが途中で変更されるということは,私が試した限りにおいては起きなかった。そして,ついぞ私の後ろにぶらさがる人を見かけることはなかった。


接続状態はこのように表示される。赤が自分。おそらく,この状態はサーバに直接ぶら下がっていることを意味しているのだろう。


別のタイミングで接続した時にはこのようになった。これはユーザーの誰かにぶらさがっていることを示しているものと思われる。


こういう接続になった時もあった。これはおそらく,受信しているユーザーのストリームを受けているユーザーの下にぶら下がっていることを示しているのだろう。なお,接続中に自分の接続先が変わったということは一度もなかった。いろいろな図があるのは,私が何度も接続し直したからである。

 同社のページを見るとお詫びなど出ているが,それでも,「見えるんだけど帯域を分捕られて画像の状態が悪くなる」ということがなかったのは良い事なのではないかと考えている。

 疑問点としては,私が誰かの下のレイヤーにいる時,私の接続先の人が受信を止めてしまった時の処理はどうなるのかということ……。このあたりについては,後日,お話を聞き,正確にレポートしたいと考えている。

結論……ガンバッテほしい

 今はまだ実験段階だが,是非,この技術を熟成させていってほしいものだ。ストリーミングが流行すれば流行するほど,交通渋滞の可能性は高くなる。そこでP2Pシステムがあれば,渋滞は緩和されるハズなのだ。

 同時に,IPv6によるマルチキャスト環境の普及というのも重要になるだろう。これはこれで頑張ってほしい。

 ただ,忘れてはならないのが,これらの方法は,あくまでもライブでのストリーミングにしか有効ではないということだ。まあ,オンデマンドではそれほどアクセスが集中するわけではないからよいのだが……。

 ということで,こういった技術を発展させつつ,QuickTimeでも,そしてMacでも実現させてほしいというのが,私が一番言いたいことだったりするのだ。

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[姉歯康ITmedia]

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