他局とは違う? ――テレビ東京の工夫と成果

ポータルサイト構築ではなく,自社制作の番組を他社サイト・ISPに販売するテレビ東京。民放各局のなかで独自路線をとる,同社の取り組みを聞いた。

【国内記事】 2002年3月7日更新

 ブロードバンドに対するテレビ各局の姿勢が見えてきた。日本テレビ放送網の「B-BAT」と,東京放送,フジテレビジョン,全国朝日放送が設立したトレソーラは,いずれも“場”を提供してコンテンツを集める立場。コンテンツポータルを作り,そこに自社制作番組を乗せようとしている。しかしテレビ東京だけは,少々異なる道を歩んでいる。

 テレビ東京は昨年から,ポータルサイトを運営する方針を転換。テレビ東京ブロードバンド(TX-BB)を設立して,他社サイトやISPに自社番組を販売する方向性を打ちだした(TX-BB,11月22日の記事参照)。

 TX-BBのコンテンツ販売事業について,同社企画業務部の渡辺豪ジェネラルマネージャーに話を聞いた。

単純にコンテンツを売っているわけではない?

 渡辺氏は同社の事業について,単にテレビ東京から他社サイトに“卸売り”している訳ではないと話す。

 「例えば経済ニュースを金融機関に販売しているが,そのサイトでは番組を無料で視聴できるようにしている。サイト運営側は,エンドユーザーに対する情報サービスを拡充するために番組を購入されている」(同)。

 この場合,番組はサイト会員数を増やすための付加価値として位置付けられる。サービスを差別化するためのツールとして,映像コンテンツが利用されているという。

 またISPなどに対し,番組をレベニューシェア方式で提供することもある。この場合も,単純な売り買いには留まらないようだ。

 「初めはコンテンツを,多くのISPに水平展開すればいいと思っていた。しかしそれよりも,特定のプロバイダと提携してブランド価値を築いた方が,リターンが大きい(事業としてうまくいく)かもしれない」(同)。

 例えば,スポーツ関連情報が強いサイトに対してテレビ東京のスポーツ番組を提供し,一緒にサイトを作り込んでいくといったケースが考えられるという。

 現状,ブロードバンドコンテンツのビジネスはなかなか成り立たないと見られている。そんな中でソフトとしてのテレビ番組を販売するための,同社の工夫がそこには感じられる。

強みはやはり“アニメと経済ニュース”

 提供するコンテンツの中では,やはりテレビ東京の強みとされるアニメと経済ニュースが人気だと渡辺氏は言う。

 「これはテレビ東京のサイトを見ていれば分かる。同サイトでは週ごとのアクセスランキングを出しているが,上位10個のうち8〜9個がアニメ関連。残りの1,2個が経済ニュース関連になっている」(同)。

 同分野が強いという認識が高まることで,さらにコンテンツに人気が集まる。渡辺氏いわく,“ブランドが循環している”のではないかとのことだった。アニメについては今後,グローバル展開も視野に入れているようだ。

「数字自体は悪くない」

 渡辺氏はTX-BBの採算性について,「数字自体は悪くはない」と話す。

 「収入が少なくても,支出が少なければいい。マーケットサイズ(番組の売り上げ)が上下するなら,支出も上下させられる組織にしている」(同)。

 例えばテレビ番組の制作部隊も,オンラインコンテンツとして2次利用しやすいよう意識しているという。「もちろんテレビはマス向けにすることが至上命題だから,2次利用をしやすくということを第一義に考えてはいない。ただ,事前に話し合いなどはしている」(同)。

 テレビ局はブロードバンドに乗り気でないという見方もある。しかし渡辺氏は「やる気がないなら,事業をやめている」とこれを否定した。「我々は現に,事業をやっている。“数字が悪くない”といったのは,事業を続けるに見合う数字だということだ」(同)。

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▼ テレビ東京

[杉浦正武,ITmedia]

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