BIGLOBEの語る「未来のISP」と5社連合構想「囲い込み」戦略をとらないISPは,どんな路線を進むべきか? その答えは,BIGLOBEの今後の方針から見えてきそうだ。
BIGLOBEは4月10日,事業戦略について説明,ブロードバンド事業でインフラでは収益よりコンテンツビジネスを重視する姿勢を改めて示した。 説明会ではまた,無線LANのインターネット接続サービスや,Phone to PhoneでのVoIPサービス,ネットワークゲームサービスなども検討中とした。
NECソリューションズ常務の芳山憲治氏 昨年度の業績は,概ね好調なようす。会員は2月末時点で1313万人を獲得しており,ADSL加入者も3月末で17万人まで増えた。 事業別では企業向けASPサービスが増収になったほか,回線コストをビットあたり年平均35%減らすことに成功。結果として「BIGLOBE事業としては2000年度で赤字だったが,2001年度は単年度黒字に転じた」(BIGLOBE)という。
コンテンツは「1人1万円払ってもらえるように」コンテンツ戦略では,世間一般の購買傾向を引き合いに出して,エンドユーザーの消費行動が2極化していると説明する。 「ユニクロの衣料などコモディティは安く購入し,ブランド品など価値あるものには金を惜しまない」(NECソリューションズ常務の芳山氏)。BIGLOBEでは,後者の“リッチコンテンツを高額で”提供する方向だ。 同氏はコンテンツの現状について,“おさいせんのような値段で”薄利多売されていると表現する。だが,「300円のものを100万人に配信するのと,3万円のものを1万人に配信するのでは,(売上は同じでも)明らかに運用コストが異なる」。課金・配信インフラへの投資を考えると,少人数から高額料金を徴収できた方が効率がよいわけだ。 今後は,ISP会員の中から,リッチコンテンツを視聴してもらう「プレミア会員」やパーミッションをとってマーケティングに活用できる「オプトイン会員」を多く獲得する方針。さらに次の段階では,毎月継続的に5000円〜1万円を支払ってくれる「ロイアリティ会員」を増やしていく。 ここで問題になるのが,「高額でもニーズのあるコンテンツとは,一体何か?」ということ。この点について聞かれた芳山氏は,「今日はちょっと,心の準備ができていないので……追って発表したい」と冗談交じりにかわしていた。 会場でビジネスBIGLOBEサービス事業本部長の瀧澤三郎氏にも聞いたところでは,「e-ラーニングが有望」との答えだった。「従来,企業がお仕着せで教育してきた内容に,個人がネットで取り組む時代になる」(瀧澤氏)。
ネットワークは「5社連合」で共有へBIGLOBEはISP相互のネットワーク接続を目指す「BBX」に参加していることからも分かるとおり(2月19日の記事参照),事業者同士の“連携推進派”だ。 「広告でも,BIGLOBEと@nifty,So-net,hi-ho,OCNの5社で連携広告を受注している。ブロードバンドのネットワークも,主要5社で提携すればいい」(芳山氏)。 その裏には,東西NTT地域会社やYahoo! BBといった,自社ネットワーク内の閉じた環境でサービスを提供できる「囲い込み型」事業者への警戒感がある。一部の大規模事業者による市場独占を防ぎ,かつ各ISPが生き残るためには,相互の連携しかないというわけだ。 BIGLOBEの思惑どおりISPの連携が進むと,各社のネットワークを相互接続して“共有”することになるため,ユーザーから見るとISPの違いが「ネットワークの入り口の違い」程度になってしまう。「極論すれば,ISPなんかいらない,という意見につながるかもしれない」(同)。そうなった時,重要になってくるのはコンテンツ事業。同社がコンテンツにこだわるのは,こうした事情がある。 「(インターネット接続料の)月額2000円程度で勝負する気はない。その上の,コンテンツにお金をはらってもらいたい」。芳山氏は,そう繰り返した。
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