“脱ファイル交換サービス”を訴えるP2P業界

P2P専門カンファレンス「P2P Conference」が開催された。P2P関連企業の大命題は「信頼性の向上」である。

【国内記事】 2002年4月11日更新

 4月11日,P2Pに関するカンファレンス「P2P Conference in Japan 2002 Spring」が開催され,P2P業界の各社がカンファレンスを行った。P2Pというと,話題性もあることから,ファイル交換ソフトと同義に扱われることもしばしばだが,同カンファレンスの講演を聴くと,P2Pビジネスを立ち上げるにあたっては,こうしたイメージからの脱却が命題となっているようだった。

 「P2Pアプリケーションの現状」と題した講演で,コミュニケーションや分散分散コンピューティング用の各種P2Pアプリケーションを紹介したGMO総合研究所の新谷隆氏は,「P2Pはファイル交換サービスだけではない。“P2P=Napster”という考え方は間違いである。まだまだ,いろいろな可能性を探っている状態だ」と強調した。

 また,P2P普及団体であるJnutella.org代表の川崎裕一氏は,「NapsterがビジネスシーンでのP2Pのイメージを破壊してしまった。P2Pという名前を捨て,Grid Computingなど新しい標語的なものが必要かもしれない」と提案。さらに,「P2P関連企業が信頼を獲得するために,大企業との積極的な提携をすすめる必要がある」と述べ,「信頼性の向上」が最重要課題であることを訴えた。

 「P2Pには大きな収益をあげる可能性がある。例えば,ポータルは無料でオンラインストレージを提供しているが,システムが重くなるだけで収益にはあまり貢献しない。これを,ファイル共有に特化したソリューションで代替すれば,ユーザー側にストレージコストを追いやることができる」(同氏)。

ファイル交換サービス“以外”のP2P

 では,P2Pのアプリケーションにはどのようなものがあるのだろうか?

 例えば,同時開催の「Jnutella Workshop」では,NTT未来ねっと研究所の星合隆成工学博士がP2Pプラットフォーム「SIONet」(Semantic Information-OrientedNetwork:意味情報ネットワーク)のデモンストレーションを実施,「ダイナミックで動的なコミュニケーションを可能にする」(同氏)P2Pサービスの可能性について語った。

 SIONetの技術的なバックグラウンドは,技術発表時の記事に詳しいが,星合氏は「簡単に言うと,家庭用ゲーム機みたいなもの。われわれが,P2Pサービスに必要なインフラを用意する。この上に,ファイル交換や,インスタントメッセージングといったサービスをプラグインで走らせることができる。P2Pで何かをやりたいと思ったときに,ゼロから始めるのではなく,プラグインだけを開発すれば良いので,コストがかからず,短期間に導入できる」と説明する。


SIONet動作中の画面

 つまり,P2PプラットフォームはNTTが,P2Pアプリケーションはサードパーティが開発するという構想なのだが,星合氏は「当面は,プラグインの仕様はNTTグループ企業にしか公開しない。ファイル交換サービス用のプラグインも作らない」と話す。「われわれが開発しているプラグインは,ファイル交換サービスよりも何倍も面白いもの。ぜひ,期待してもらいたい」(同氏)。

 P2Pの技術を,実際にビジネスに結び付けようとしているのが,ビットメディアとアンクルだ。両社は,P2Pを使ったストリーミングサービス「シェアキャスト」の実証実験を行っている。シェアキャストは,サービスにログインしている各ユーザーのPCが中継機能を備える配信ノードになることで,大規模なサーバを使わずにストリーミング配信が行えるシステムだ(2月13日の記事参照)。

 この実証実験の体験レポートがブロードバンドチャンネルに掲載されているが,カンファレンスの会場でアンクルのエンジニアである三原啓志氏に実証実験の手ごたえを聞いた。

 結論から言うと,実証実験の初日には,大量のアクセスにより,コンテンツを視聴できないユーザーが出てしまった。負荷分散が大きなメリットであるP2Pサービスでなぜ? と当然の疑問が生じるが,三原氏によれば「ツリー構造のどこかにパーソナルファイアウォールやNATを使っているユーザーがいると,ほかのユーザーからのアクセスが受け入れられず,中継機能が働かなかった」という。


P2P Conferenceでは,NAB2002の会場の模様をシェアキャストでストリーミング配信していた

 「個人のPCを使って配信システムを構築すると,どこかに不確定要素を含んでしまう。また,ツリー構造で自分の上にいるユーザーがログアウトした場合にセッションが中断してしまう場合もあるが,そもそもシェアキャストのコンセプトは,映画などの有料コンテンツを視聴してもうらためではなく,天体観測など,個人的なコンテンツを配信してもらうということにある」(三原氏)。

 各社,さまざまな取り組みを見せるP2P業界。ファイル交換ソフトと結び付けて,単純に「怪しい」と切り捨ててしまうのは,あまりにも早計ではないだろうか。

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関連リンク
▼ P2P Conference in Japan Spring 2002

[中村琢磨,ITmedia]

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