ニュース 2002年5月13日 11:10 PM 更新

著作権ドタバタ・ケーススタディ 〜イーライセンス

「ある日、事務所に某大手総合商社マンが『大変なことになった!』と飛び込んできて言うことには……」

 デジタルコンテンツの著作権管理の問題は、現場に立って、初めてその難しさに気付くことが多いようだ。ブロードバンドの普及により各サイトでオンラインコンテンツを扱う機会が増すにつれ、やはりいろいろと混乱が生じているという。

 イーライセンスは、昨年10月1日の「著作権等管理事業法」改正をうけ、JASRACが事実上独占してきた著作権管理事業に新規参入した企業。これまでに見てきたデジタルコンテンツにまつわる事例を、同社の三野明洋社長が紹介した。


講演するイーライセンスの三野氏(10日の第65回 EC研究会にて)

 三野社長は、著作権管理の難しさを知るいい例として、某大手総合商社のケースを挙げる。

 「ある日、イーライセンスの事務所にその商社マンが『大変なことになった!』と飛び込んできた。話を聞くと、映像コンテンツを購入してしまってから、その著作権がクリアになっていなかったことに気付いたという」(同)。

 いきさつはこうだ。その商社にはネットワークメディアを扱う関連会社があり、そこで配信する音楽ライブ映像を探していた。折りしも、アーティストのライブ映像を所有するコンテンツホルダーがおり、交渉した結果、250アーティスト・1500曲ほどの映像を買い取った。

 もちろん、購入にあたっては契約書を交わし、「著作権については大丈夫ですね」と念を押した。これに対してコンテンツホルダー側は「全く問題ない、ちゃんと契約書もそろっている」と答えたため、安心していた。

 ところが、いざ契約書の内容をよく見てみると、なんとそれは“アーティストがライブハウスで実演する”ことについての契約だった。ネットワークで配信するどころか、録音・録画権にさえ一言も触れていない。これでは、なんの権利もクリアにもなっていない。商社は途方にくれてイーライセンスに相談したという。

 この依頼を受けたイーライセンスは苦慮した末、1つ1つ話をつけるしかないということで、契約書類を改めて作り直して、各権利者に送付した。「これこれの事情につき、過去のアーティストの実演映像を配信したい、よければ書類にサインしてくれ』というわけだ」(三野氏)。結果、6割ほどから同意を得たが、残る4割については承諾を得ることができなかった。

 「これは当たり前の話だ。ライブハウスで演奏することについて契約したのに、それを突然配信するなどと言われても、そんなことは聞いていない、となる」(同)。

企業は“権利処理がいかに煩雑か”の自覚を

 三野氏は、そもそも著作権を専門とする担当者を持つ企業が少ないことを指摘する。

 「多くの企業では、商標登録や特許に関わる『工業所有権』について、専門の担当者を抱えているものだ。しかし著作権となると、あまり担当者がいない」(同)。

 同氏は、現場で著作権をクリアすることがいかに煩雑で、困難な作業であるかを強調する。同社が過去に依頼された事例では、音楽アーティスト「GLAY」のDVDを製作するためのライツクリアランスに、実に220社の権利をクリアする必要があったという。

 「DVDの売上から、1社に1%を支払うとしても、220%になる。こんなことはありえないわけで、中には交換条件を出して権利承諾を得るところも出てくる」(同)。

 三野社長は講演の中で、企業が著作権に関する意識を高める必要があることを指摘。併せて、イーライセンスが通常の権利者の著作権管理業務のほかに、権利使用者に向けた社員教育などを含む総合コンサルティング・権利クリアランスサポート業務を行っていることをアピールした。

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[杉浦正武, ITmedia]

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