政府の進める「デジタルコンテンツ支援策」――3つのポイント

このところやや不振の国内デジタルコンテンツ業界。そこで日本政府は,著作権問題の解決や不正コピー防止の整備など“金を出さない援助”に乗り出すという。

【国内記事】 2001年11月21日更新

 国内のデジタルコンテンツ業界は最近,元気がない。こう嘆くのは経済産業省の文化情報関連産業課長,岸本周平氏だ。同氏は千葉幕張で開催されている「STREAMING MEDIA JAPAN 2001」で,講演を行った。

経済産業省・商務情報政策局の文化情報関連産業課長,岸本周平氏

 政府はこれまで,基本的にコンテンツ業界には干渉してこなかった。それによって今日のテレビなどの隆盛があるのだが,ブロードバンド化が進むつれて,状況は新たな局面を迎えている。コンテンツのさらなるデジタル化を促進するには,どうやらこのままでは無理のようだと岸本氏は語る。

 「業界を支援していく。ただし,補助金を出すかというと,これはやめようと考えている。そもそも金を出すと,同時に口も出すということになってよくない。政府としては,デジタルコンテンツ業界が上手くいくようなインフラを整備することで,業界の発展を図る」(岸本氏)

 同氏が語るインフラの整備とは,具体的にはどういうことか? 講演の中で挙げられたのは,著作権管理,コンテンツ制作ファンド,不正コピー防止の3つだ。順に見ていこう。

著作権管理――テレビ番組もネットで放送可能に

 岸本氏がまず指摘したのは,著作権管理の問題だ。たとえばテレビ番組の著作権などは「1回流すだけ,という考え方に基づいた,あやふやなもの」(岸本氏)。このため,著作権の関係者があまりに分散されすぎているという。

 おかげで,インターネット上でテレビ番組を配信しようとしても,利権が複雑で,コンテンツを買い取ることが難しい。実際にコンテンツを流そうとすると,多くの著作権保有者に確認をとらなければならないうえ,そのうちどこか1つにでも反対されると実現しない。ひどい場合,相手の連絡先が分からない場合さえある。こうなると,コンテンツの権利を買い上げて利用することはお手上げとなるわけだ。

 岸本氏は,この問題の対処方法を紹介する。権利者の住所が分からない場合は,まず新聞に広告を出し,一定期限までに名乗り出るよう促す。あとは指定の協会などに該当する金額を振り込むだけで,権利を獲得できる仕組みがあるのだという。

 「これまでもこうした制度はあったのだが,融通がきかないものだった。現在,文化庁が柔軟に利用できるよう検討中であり,われわれの立場からもそのように働きかけている」(岸本氏)と,著作権の管理を円滑化することで,既存コンテンツのデジタル化を進める考えだ。

コンテンツ制作ファンドの普及を促す

 また同氏が指摘するのは,現状ではコンテンツ制作の資金集めが困難だということ。映画を見ても,日本では制作費が最高クラスで10億円であるのに対し,ハリウッドでは大型作品ともなれば100億円を超える。

 「言葉は悪いが,(日本の映画は)身内だけで細々と作っている印象。集める金額が米国と一桁違う。国内でも,外から資金を取り入れる仕組みを作り上げなければならない」(岸本氏)。

 同氏がそのモデルに挙げたのは,米国などで一般的に行われている“映画制作ファンド”。制作サイドがまずシナリオを出し,それを目利きの人間がヒットするかどうか判断,各方面から資金を募る。映画が実際にヒットすれば配当がもらえる仕組みで,20%ほどの確率で“当たり”が見込める。

 日本でも映画ファンドやゲームファンドなどで,ファンド方式によるコンテンツ制作資金の調達が進み始めているが,米国に比べると,その普及はかなり遅れている。岸本氏はその原因が「日本人は,郵便貯金の多さを見ても分かるように,リスクを嫌うところがある」(岸本氏)からと推測する。

 国民性に根ざすだけに,根本的な解決はなかなか難しいが,同氏は対策の1つとして,とかくドンブリ勘定になりがちな制作現場が資金使途の透明性を確保し,投資家に安心感が与えることだと言う。「集めた資金を何に使ったか明確にして,情報をディスクロージャーしていくことが大切だ」(岸本氏)。

不正コピーはコンテンツ死活問題

 岸本氏はデジタルコンテンツの重要な課題としてもう1つ,「不正コピーをいかに防ぐか」を挙げた。デジタルコンテンツはコピーされやすいうえ,何万回コピーしてもデータが劣化せず,元のデータと変わらない。

 具体的な対策としては,コンテンツにID番号をふって権利情報を埋め込んでいく。「コンテンツIDやコンテンツの属性,権利の属性など乗せるべき情報は多い」(岸本氏)

 同氏が目指すのは,グヌーテラなどでサーバを通さずにP2Pでデータを共有されても,ID情報を基にユーザーを追跡できる仕組みだ。たとえ違法なコピーによるデータでも,ユーザーがコンテンツを利用しようとする際に課金を求められるようにするというわけだ。

 岸本氏のグループでは現在,2億円の予算を確保して,どのような番号や情報が埋め込めるのか調査している。総務省のコンテンツ流通室や文化庁の著作権課とも協力し,来年度も数億円規模の予算を財務省に要求しているという。

 「一般の企業ではこうした技術にかけられる金額も限られているだろうから,政府が替わって研究する。アメリカの西海岸などでリサーチも行っており,米Disneyや米AOL Time Warner Groupなどとも歩調を合わせて調査したい」(岸本氏)

 同氏は併せて,リアルな世界での海賊版が多いことにも言及。いまのところ日中で海賊版撲滅に向けて定期会合を行っており,来年からは台湾,香港なども含めてアライアンスを組んでいきたいと述べた。

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[杉浦正武,ITmedia]

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