コンテンツに値が付く時代がくる〜NTTの思惑

インフラ事業は放っておいてもどんどん進むところまで来た。しかし,ブロードバンドを使ったビジネスモデルを考え始めたら,いっぱい課題があった。NTTの考える解決法とは?

【国内記事】 2001年10月25日更新

 ブロードバンド元年はADSLサービスを開始した2000年か,それとも本格的な普及期に入った2001年か? そんな議論を飛び越えて,2001年は「ブロードバンドコンテンツデリバリー元年」になるのかもしれない。NTT Group 総合展2001で公演を行ったNTT法人営業部副本部長マルチメディア推進部長の高島元氏によると,「コンテンツ自体に値が付くビジネスモデルが成り立ちそうだ」という。

 NTTは,既にADSLを全国272都市で,またBフレッツを都内9区で展開している。先駆けといえる常時接続可能なISDNサービス「フレッツ・ISDN」は,1999年11月にサービスを開始して以来,月額8000円という料金から4回にわたる値下げを行い,現在は2900円だ。ADSLについては,それを上回る5回の値下げが行われている(10月25日には6回目の値下げが発表された:別記事を参照)。既にインフラの安さにおいて米国を抜き,日本の通信料金は世界トップレベル。高島氏によると,日本のインフラ事業は「放っておいてもどんどん進むところまで来た」という。しかし……と同氏は続ける。「で,ブロードバンドを使ったビジネスモデルを考え始めたら,いっぱい課題があったというのが今の状況ではないか」。

課題は4つ

 高島氏が挙げたコンテンツ配信の課題は,大まかに分けて以下の4つ。

1.不正コピーの防止
デジタル化されたコンテンツの不正コピーをどう防ぎ,著作権を守るか。

2.同報配信が弱点
放送と異なり,通信は同報よりもオンデマンド性やインタラクティブ性にメリットがある。しかし,市場のニーズはむしろスポーツ中継やライブ放送に顕在化しており,パラドックスが生じている。

3.多様な端末の普及
パソコンの操作は敷居が高く,また高価でもある。

4.インフラの整備
サーバや中継系ネットワークの負荷に課題が残っている。加えて,同報配信を行うにはマルチキャストの機能が必要。

 不正コピーの防止に関しては,既にさまざまな技術が登場している。パッシブセーフティ(受動的防止策)として,電子透かし,コンテンツIDによる管理など。アクティブセーフティ(能動的防止策)として,コンテントの暗号化やカプセル化,そしてDRMなど。しかし,「どれもコンテンツホルダーが満足するに至っていない」(高島氏)。

 ただし,最近は2つの技術が注目を浴びているという。1つは,コンテンツのデータや権利条件を,メタデータとしてコンテンツそのものに付与し,流通させようという試みだ。メタデータを使うメリットは,番組の編集作業や再利用を容易にし,たとえP2Pでやり取りされても記録が残るという点。

 もう1つは,IPv6だ。なりすましを防ぎ,不正な流通を行わせないためには,エンドユーザーに固有のIPアドレスをふって特定できるようにするのが近道となる。「メタデータとIPv6の組み合わせを軸に環境を整えていく」(高島氏)。

 マルチキャストには,技術的な課題も残されている。それは,信頼性とスケーラビリティだ。エンドユーザーが確実にそのコンテンツを見たという情報を取得するのが難しい上,ドメインをまたぐ経路情報を制御するシステムがない。しかし,米Digital Fauntainや米Fantasticの技術を使うことで,この点は解決できる見通しだという。

 そして,端末に関してNTTは「Thin Client」型を提唱する。Thin Clientとは,直訳すれば痩せた端末。重い処理をサーバ側にまかせ,端末は画面の表示など,軽い処理だけを担当する仕組みだ。クライアントのコストを削減するほか,サーバ側でクライアントを詳細に管理できるメリットがある。「家電メーカーと話を進めており,実用化はかなり近くなった」(高島氏)。

 NTTの構想は,マルチキャストをはじめとする各種機能を持ったCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を構築し,そのエッジにユーザー毎の「パーソナルポータルサーバ」を設置。家庭にはThin Clientを置き,直接コンテンツのやり取りをするのはポータルサーバ,という仕組みだ。実際,総合展の会場にはNTTブランドのSTBも展示されており,実現に向けて同社が地歩を固めつつあることが伺える。

コンテンツに値が付く

 別記事で触れたように,今のところNTT地域会社がコンテンツ配信を請け負うASP的な事業を展開することはできない。しかし,同社は需要を喚起することで規制緩和の方向に持っていこうとしている。高島氏は,2万4000人が視聴したというエイベックスの浜崎あゆみ有料ライブ放送や“TX-BBが近く黒字化する見込み”といった報道を挙げ,「コンテンツ自体に値が付くモデルが成り立ちそうだ」と聴衆にアピールした。

 加えて,NTTは単なるリッチコンテンツ配信にとどまらず,コミュニケーション分野を包含した形で事業を進める意思を示している。たとえば,映像付きの掲示板やビデオチャット付きのネットゲーム対戦といった具合だ。「リッチコンテンツとコミュニケーションは相互に補完し,シナジー効果を生む。(NTTは)双方に注力し,ユーザーの生活上の利便性を提供していく」(高島氏)。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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