ニュース 2002年7月4日 03:25 AM 更新

メディアに反旗を翻す吉本興業

既存メディアの下、「コンテンツ屋」として力を蓄えた吉本興業。昨今のブロードバンド化に際し、内心期するところがあるようだ

 ブロードバンドコンテンツの制作力で注目を集める吉本興業(記事参照)。7月3日の「NetWorld+Interop 2002 Tokyo」では、その吉本興業のアジアプロジェクトプロデューサー兼、ファンダンゴ社長の中井秀範氏が基調講演に登場。同社のメディア戦略を語った。


ファンダンゴ社長の中井氏。「みなさん、『なんで吉本興行がN+Iの基調講演でしゃべんねん』と思われただろう。私もそう思う」

 今でこそ各種メディアで、吉本興業のタレントを目にしない日はない。ブロードバンドなど新しいメディアへの取り組みにも積極的だ。だが、中井氏によれば最初からそうだったわけではないという。

 「かつて、世の中にラジオが出てきた頃のことだ。ラジオ向けのコンテンツとして、音声だけで楽しめる漫才や落語が注目された。そこでNHKは、当時の林社長(林正之助氏)に、『芸人をラジオに出してくれ』ともちかけた。しかし社長は『タダで聞けるようになったら、わざわざ劇場に客が来んようになる』と断り、NHKと大喧嘩をやらかした」。

 しかしこの時、桂春団児がラジオに興味を持ち、会社に内緒でラジオ出演の契約を結んでしまう。「激怒した林社長は、社員を総動員して大阪のラジオ放送局を取り囲み、春団児が局内に入れないようにした。ところが敵もさるもの、春団児は京都の放送局から番組を放送する。林社長は怒り心頭、『アイツはクビだ!』と大騒ぎになった……」。

 ところが様子を見ていると、ラジオから人気が出て、逆に劇場の入りは増えた。それを知った社長はコロリと方針を転換。NHKの社長と固い握手をかわす。「この瞬間、わが社の“メディアを生かす”という方針が決まったといえる」(中井氏)。

メディアの利用から、メディア獲得へ

 その後吉本興業は、地上波放送にも進出。「漫才ブーム」などを追い風に、急成長を遂げてきた。いわばテレビの申し子ともいえる同社だが、最近では、地上波放送のあり方にやや不満があるようだ。

 「テレビ局というものは、郵政省からの免許事業。“護送船団方式”と批判された銀行よりも、もっとぬくぬくと守られている」(中井氏)。局側が既得権益をほしいままにしているというわけだ。

 同氏によれば、最初にスポンサーが出したお金が、代理店を経て、地上波放送局の経費と利益分を引くと、もう半分くらいになってしまうとのこと。

 「文句をいうと、テレビ局側は『下請けがなんだ。金を出しているのは我々だ』とくる。こっちとしては『いやいや、金を出してるのはスポンサーでしょう』というのだが……」。

 それでも、吉本興業は人気のタレントを抱えているだけ、まだマシなほう。中井氏によれば、中小の制作会社ではせっかく作った番組の著作権を局側に譲ってしまうようなことも、ごく当たり前に行われているという。

 しかし、最近になってこの状況を変える可能性が芽生えてきた。厳格な免許のいらない衛星放送事業や、ブロードバンド放送がそれだ。

 中井氏は同社が「SKY PerfecTV!」の284chとして「ヨシモトファンダンゴTV」を運営しているのも、Fandango!といったサイトでコンテンツを配信しているのも、根本的な理由はそこにあるという。「いっそ、自分達でメディアを持とうか、ということだ」(中井氏)。

著作権問題も「1秒でクリア」

 メディアを自ら育てる同社が、今後目指すのはどんな企業か。中井氏はそれは、「垂直統合モデル」だと打ち上げる。

 同社の事業の根幹をなすのは、タレントの才能マネージメントだ。「たとえば(同社に所属するタレントの)ジミー大西などは、個人交渉ではとても才能に見合ったお金をもらえないだろう」。エージェントとして、多くのクリエーターを多く囲い込みたいという。

 この土台の上に、これまで蓄積した番組制作のノウハウが乗る。これにさらに、メディアを追加すれば、「タレント事務所」「制作会社」「配信メディア」の全てを、自前で用意できるわけだ。

 中井氏は、このシステムがうまく機能すれば、もう著作権処理に手間取る必要はないと意気軒昂だ。「コンテンツを転用してもいいだろうか? と思ったら、自分でOK!といえばいいわけで、1秒でライツクリアランスできる」。

 同氏によれば、エイベックスも同様の考えでいるようだという(記事参照)。芸能・音楽の2大コンテンツプロバイダが反旗を翻そうとしているわけで、既存メディアが聞けば青くなりそうな話をしていた。

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関連リンク
▼ NetWorld+Interop 2002 Tokyo特集ページ

[杉浦正武, ITmedia]

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