連載 2002年8月23日 08:47 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
敵が見えなくなったストリーミングの世界

AOLも参戦するなど、混沌とするメディアプレーヤー業界。今後、各社がシェア争いする「プレーヤー戦争」が激化するって? 私はそうは思わない。そもそも、そんな戦争は存在すらしないと、思っている

 先日、Newsに「メディアプレーヤー戦争、激化の予感」という記事が掲載された。読んでいただければわかるが、AOLがWinampに動画再生機能を搭載したという話である。だからメディアプレーヤー戦争が激化するゾー、というわけだ。

 ほほう、と思いつつ、たまたまRealOne Playerを使っていて「Check for Update」なんていうところをいじっていたら、2.0にバージョンアップされ、Helix仕様のユニバーサルなプレーヤーになってしまった。QuickTimeもWindows Mediaもほぼ再生できるものである。AppleからはQuickTime 6のWindows用とMac OS 8-9用の日本語版がようやくリリースされた。さらに、MPEG-4で有名なEnvivio(記事参照)はWindows Media用のプラグインをいよいよリリースした……。

 フウ……。というワケで、はじめの引用がショボく感じられるくらいスゴい世界になってきたのだ。しかし、これを「プレーヤー戦争の激化」というのだろうか? 私の見方は違う。基本的には「ますますもってプレーヤーのシェアなんてものは、どーでもよくなってきている」というのが正解だと思うのである。

 だいたい、RealNetworksのサーバでWindows Mediaのストリーミングができる時代になろうとしているのである。そこで「おお、Windows Media Playerのシェアがダントツだ!」とか言っていても、RealサーバのシェアがダントツだったらMicrosoftにとっては何もおいしくない。

 そして今後、MPEG-4が普及すれば、プレーヤーはさらにどうでもよくなる。私などがいくら「MicrosoftはMPEG-4陣営ではない」なんていっても、EnvivioTVがリリースされたために、Windows Media PlayerはMPEG-4が再生できるプレーヤーになってしまったのである、Microsoftがどう考えようが(笑)。

 そしてRealOne Playerが爆発的にヒットしても、そこで受信されているコンテンツがQuickTime Streaming Serverから流されたものだったら、Realはちっとも幸せではないのである。

 いや、シェア争いに全く意味がないとは言わない。ただ、プレーヤーでは「儲け」が出ないということを言っているのである。プレーヤーは「基本的には」みんな無料なんだし……。

重要なのはフォーマットの統一とコンテンツの差別化……ン?

 では、ここから先、何が重要になっていくのであろうか? 当たり前の話だが、やはりコンテンツだ。ユーザーにとっては、好きなコンテンツをどのプレーヤーでも見られる環境が望ましい。さらに、コンテンツプロバイダーにとっても、1つのフォーマットで済ませてしまえればコストと時間の削減になる。となると、「フォーマットの統一」が大事になるだろう。

 一方、RealやMicrosoftにとって重要なのは、「サーバを普及させるためのコンテンツの差別化」であったりする。単純にみんなが同じフォーマットを扱うようになって、好き勝手できるようになってしまうと、この2社は、下手すると利益を上げられなくなってしまう。あくまでも「ウチはひと味違う!」という部分を出さなければならない。

 だけど、これはユーザーが望む「フォーマットの統一」とは掛け離れた世界に進んで行く可能性が大きい。そこでRealは、「すべてを飲み込んで対応する」というHelixによって「ひと味」の違いを打ち出した。基本的にはMPEG-4などにも賛同しつつ、オリジナル路線も強化しつつ、「全部ひっくるめて俺がリーダーだ!」作戦である。さすがである。

最終的には「誰と組めるか」がポイントかも……

 こうなると困ってしまうのがMicrosoft。会社の利益だけを考えた場合、MicrosoftにとってWindows Mediaは、あくまでも.NETサーバを普及させるためのツールである。ところが、「全部できるんだったらHelix Serverでもいいや」という人が出てきてしまいそうだ……。困った。

 が、本当のところはそこまで困っていないのだ、たぶん。こちらの記事を読んでいただきたい。私はまだWindows Media Technology 9に触れていないので何とも言えないが(触れていたとしても機密保持契約があるから書けないハズだ)、要するに、「Windows Media Playerを使うとこんなサービスにアクセスできるよ!」というタイアップ作戦である。

 こういったやり方でいかに人気のあるコンテンツを持ってくるか、ということを考えたら、おそらくMicrosoftはスゴい力を発揮するだろう。そうなってしまったら技術も何もふっとんでしまう。

 だいたい、ユーザーの関心は細かな技術の違いなどにはない。「面白いものを見せろ!」というだけである。ならばコンテンツを持っているヤツと組んで商売してしまおう、というワケだ。これは会社のブランド力を高める意味でもいい手である。

 で、これを先にやったのは実はRealである。同社が米国で行ってきた「SuperPass」もこういったサービスの一つと考えられる。今後は両社にとって「組む会社」が非常に重要なポイントとなってきそうな気がする。

 ということで、私は「コンテンツホルダー争奪戦争」「ユーザーをコンテンツに誘導するための仕組み作り戦争」が激化するのではないかと見ているのだ。

 そういったビジネス面で、MicrosoftとRealの間ではかなり壮絶なバトルが繰り広げられる。その一方で、技術的にはRealはHelixを拡張していく。MicrosoftはWindows Mediaにイヤらしいアップデートを加えて、Helixで使えなくしてしまう……(笑)。そんなことが繰り返されそうな気もしている。

 もう一つ、PC以外のデバイスでの争いというのもあるが、それは別の機会に……。

で、AppleのQuickTimeは?

 さて、ここまでAppleのQuickTimeには触れてこなかった。なぜか? Appleはハナっからストリーミング配信の部分で儲けようとしていないからである。QuickTimeという技術を提供して、使いたい人が使えばいい。サーバもフリー。基本的にはQuickTimeはストリーミングだけのための技術ではなく、コンテンツ制作のための技術でもある。むしろそちらの用途のほうが大きいので、QuickTimeを使ってコンテンツを作って、あとはMPEG-4にエンコードして、お好きなプレーヤーでお使いください。ということである。

 なんか、実にいいポジションにいるような気がする。制作用の技術としてQuickTimeより優れた技術が登場してこないのだから……。

結論:Generic Mediaを見直しましょう……

 こうやってマルチフォーマット、ユニバーサルフォーマットな技術が出てきて、気付いたことがある。「やっぱり一番美しいのはジェネリックメディアの「Generic Media Publishing Service」(GMPS)の考え方なのでは? ということである。制作する側は1つのフォーマットでアップロードすれば、あとは自動でプレーヤーの環境に合わせてトランスコードしてくれる。でもって、実はここのシステムはRealやWindows Mediaのサーバを使っているワケだから、それぞれの会社も利益を挙げられる……。

 何も私が躍起となって「プレーヤーなんてどーでもいい!」と言わなくても、この会社は、はじめっからそう言い続けてきたのであった。ということで、個人的には、最終的にGMPSあたりを「落としどころ」にしたいものなのだが、なかなかそうもいかないのだろうなあ……。



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[姉歯康, ITmedia]

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