リビング+:連載 2003/02/07 17:30:00 更新

ネットワークな生活は何処からやってくる?(3)
意外と盛り上がっていた「ITエクササイズ」&そのほか諸々

フィットネスの本場が米国であることを忘れていたわけではないが、やはりそうなのか。前回のお題「ITエクササイズ」のフォローから始まり、読者の方の意見を紹介しつつ、「デジタル制御」の可能性について考えたいと思う。

 さて、例によって前回のフォローから。このあいだの記事は思いつきで書いたもので、もちろん、ある程度のリサーチもしたのだが、やはり詳しく調べてみるには越したことがない。要望をある程度実現した製品は、すでに存在していたようだ。

『エクササイズマシンという範疇からはずれちゃうかもしれないけど、自転車の屋内トレーニング装置のオプションで「パソコンと連動して画面上の仮想コースを走行できるセット」があるみたいです』

 これは一見、「バーチャルによる目的意識の提供」部分のみを実現したもののように思えるが、実はそうでもない。MINOURAの製品紹介ページ上の「ICEは米国FITCENTRIC社の開発したソフトを使用しています。コースの追加ダウンロード、ソフトに関する詳細はFITCENTRIC社Webページをご参照ください」という記述の指示どおり、FITCENTRIC社WEBページを見てみると、「NetAthlon」という仮想トレーニングコースを提供するソフトウエアを中心に、「UltraCoach」での運動分析、「Web Racing」によるネットワーク競技など、前回の空想にほぼ近い構成を徐々に実現しつつあるようだ。そのうえ、これは何もバイクタイプのトレーニングにとどまらず、ランナー、(ボート)ローイング、スキーなど、あらゆるタイプのトレーニングマシンとの接続を視野に入れているようだ。このコンセプトに対応した機器は、さまざまなメーカーからリリースされており、MINOURAの「ICE」もそのひとつというわけだ。連動可能なセンサーや負荷装置は各メーカー機器で異なるが、心拍モニターに対応したマシンもある。コースの起伏に合わせて負荷が変動するというのもよさげ。しかし、コースデータの月面ロードレースとか月面マラソンとかいうのは、バカっぽくて楽しそうだ……。

画面
NetAthlonのコースデータ例

『弊社ではすでにPCとのリンクによるデータ管理やインターネットfitnessclubへのデータ送信が可能であるエアロバイクaiを開発・販売しております。このエアロバイクaiは赤外線通信による歩数計とのリンクも可能です。その気になればゲーム機とリンクすることもできますよ!(コンビウェルネス 開発企画者)』

 失礼しました。こちらはより真面目な指向のネットワーク・フィットネス機器の模様。やっぱり、フィットネス業界の方もこういう方向をきちんと考えておられるようだ。そうとも知らず、素人が勝手にいろいろヘンなマシンを想像しちゃってもうしわけないです。

『昨年の東京国際自転車展(通称:自転車ショー)で、ローラー台をUSBでPS2につないでプレイするゲームタイプの参考出品製品を見かけました。かなりバカっぽくてよい感じだったので、あんなのがぜひともほしいです。あとは記事に書かれていたようなツールはあったらほしいですが、北海道ツーリングバージョンなんかやったら、仕事辞めて北海道に行っちゃうかも(笑)』

『大学で人間工学を学んでいたのですが、バイク運動の飽きやすさをいかに克服するか、というのは1つの課題でした。ブロードバンド利用のバイクは効果が高そうに思います。なにより、こういうことにこそネットを利用したいです。冷蔵庫につくよりも効果的な使い方と思います。エクササイズとITは一見遠い分野に思いますが、ITを利用してこそできることがある、という典型と思います』

など、「ITエクササイズ」にはこのほかにも多くの意見をいただいた。あまり引っ張ると、エクササイズ専門連載になってしまうので、このへんで割愛させていただく。ご協力ありがとうございました。

なんでも「ピピッと」

 広い意味で、コンピュータは「暮らし」に入り込んでいくために、とてつもない速度で進化してきた。そのうえで基本であり、かつ重要だったのは、数値化および符号化という作業だろう。もともと数値や数式で表せるものの処理、つまり計算から手をつけ、次は文字や文章の処理、さらには、いまでは音声や画像をはじめとするさまざまな対象をサンプリングして、データとして取り扱い、蓄積・分析・送受信といった処理が可能になっている。次の段階としては、少しやっかいそうに思えるものの不可能ではない、「香り」「触感」といった対象の処理に入っているようだ。

 これで現実の物質すらも同様に処理できれば、もはやいうことはない。つまり、ショッピングサイトで購入した商品が、インターネット経由のデータをもとにローカルで物質化され、物流の必要がなくなるということだ。しかし、それが実現されるのは不可能、あるいは遠い未来になるとしか思えない。あらゆる物質をサンプリングして、データとして蓄積・送受信したりということは可能かもしれないが、物質自体を粒子化して伝送したり、あるいはデータをもとにそっくりそのまま物質化という技術はまったく次元が異なる。

 もちろん、昔の人にとっては、声や景色を符号化して記録し、自由に再現したり、遠くへ送ったりできるようになるとは、夢にも思わなかっただろうから、物質の処理もまったく不可能ではないかもしれない。ただ、ともかく、このようなデジタル化の次の段階への移行は、たぶん生きているうちには見られないと覚悟している。「転送」は「宇宙大作戦」の中だけで楽しむことにしよう。

 でも、だからといって、デジタル化やデジタル制御が容易な対象のみ、IT化、ネットワーク化していけばよいというはずはない。で、何を語っているのかというと、説明が長いが、要はこの連載でのテーマ、「こんなものまでネットワーク家電にするの?」的なヘンな発想を自己弁護、正当化しているにすぎない……。

 最近、それをことさらに感じたのは、東京ガス「ピピッとコンロ」のコマーシャルである。現在では、いわゆるデジタル関連製品にかぎらず、多くの家電製品や家庭用機器でも、いくらかはデジタル制御されているものだ。灯油ファンヒーターやエアコンがデジタル制御されているんだから、ガスコンロをデジタル制御していても、なんら不思議ではない。それに、このような製品はほかにも昔から存在するのかもしれない。しかし、ぼけっと馬鹿面でテレビを見つめていた時、急に田村正和が画面に登場し、「マサにガスだね」と電子制御されたガスコンロの特長を次々と披露され、揚げ物は自動温度調整ですよ、超トロ火も一発調節ですよ、湯沸かし機能は沸騰アラーム鳴らしたあと5分弱火維持してから自動消火しますよ、タイマーも搭載ですよみたいなことを言われ、しまいには炊飯の「ハジメチョロチョロナカパッパ」まで勝手にコントロールしますよ的なことを告げられた日には、すっかり夢心地になっていたのである(コマーシャルの忠実な再現ではなく、あとから東京ガスのWebサイトで仕入れた情報による妄想部分あり)。

 そんなわけで、牛乳やビールが切れたら発注する冷蔵庫なんかいらない、けど、パンツと靴下がすりきれてきたら仕入れといてくれるタンスはほしいぜー、とおかしなことを考えるようになってしまったわけだ。と、いつものごとく、記事の前半と後半のノリがまったく違ってきたので、このへんで読者の方の意見を読んでみる。

『“ネットワークうちわ“ なんてどうですか? 普段は電気を使わない生活を基本に暮らしてもらう。で、暑いときには当然うちわ。パタパタとあおぐと涼しいわけです。で、それですんでしまえば冷房はいらない。けれどもなかなか涼しくならないので、続けてパタパタとやっていると、だんだん腕が疲れてきます。すると、うちわに内蔵されたコンピュータがパタパタの周期の乱れを感知して「あ〜、ユーザは疲れてきたのかなぁ」と考え、内蔵の無線LANなぞでエアコンに「出番だぞ」と伝えるという仕掛け。エアコンをつけるためには、まずうちわで頑張りなさい、というつまり人間が最初に努力しないとラクになれないという仕組みです。“心拍ゆらぎ“ の応用ですね。もちろん、エアコンは「あ、これから動くから、窓閉めてね」と窓枠サッシに伝える――なんてことはなくて、「窓を閉めてください。窓が閉まったことを確認の後、冷房運転を開始します」なんて人間に命令するわけです』

『冷蔵庫をホームサーバにするのどうでしょう。家庭の中で常に電源がオン状態の電化製品だし、空冷の必要がなくなるし』

 真剣に捉えると矛盾が出てきたりするのだが、ともかく何か思いついたまま膨らませてみるという発想は個人的に好きだ。「オートマチックにしたはずなのに下働きさせられる人間」。少し哲学的な香りが……。冷蔵庫をホームサーバにするというのは、中に入れるんだろうか? それとも冷蔵庫自体を、ということかな? でも、ホームサーバの騒音もかき消されてしまうのは利点かも。

「ITエクササイズ」を妙に引きずってしまったせいか、なにかどたばたして尻すぼみになってしまったが、実はこれ以外にも「家庭内コントロール」の話題を中心に、まだまだ多数の意見をいただいている。今回紹介しきれなかった分はまた次回にでも。

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[浅井研二,ITmedia]



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