リビング+:特集 2003/03/10 23:59:00 更新

特集:そろそろ気になる? “ワイヤレス液晶TV”
「液晶“FACE”ワイヤレス」にみる東芝のコダワリ

液晶とワイヤレスの相性が良いことはノートPCが実証済みだが、TVもワイヤレスになると利用シーンがさらに広がるようだ。今回は、カシオの“お風呂テレビ”こと「XFER」(エクスファー)シリーズ、ソニーの“ITテレビ”「airboard」(エアボード)、東芝の「液晶“FACE”ワイヤレス」シリーズを取り上げ、各社の狙いと製品の実力を探る

 ここ1〜2年で急速に販売台数を伸ばした液晶TV。JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)によると、2002年度の出荷実績は10型以上の液晶TVだけで632,000台。2003年には1050,000台の出荷を予測しているという。倍とまではいかないものの、十分に勢いが伺える数字だ。

 薄型・コンパクトな液晶TVが日本の住宅事情に合ったことは容易に推測できるが、より象徴的なのは、その可搬性を活かした「ワイヤレスTV」という新ジャンルが登場したこと。無線LANと動画圧縮技術の進歩も手伝い、アンテナ端子やチューナーがない場所でもTVを視聴できるようになった。

 現在、ワイヤレス液晶TVを販売しているのは、東芝、カシオ、ソニーなど限られたメーカーだけだが、各社それぞれに新しい用途や利用シーンを提案した個性派ぞろいだ。しかも、全く異なるコンセプトにもとづいて開発されたにもかかわらず、「ライフスタイルを変える」という謳い文句だけは共通だから興味深い。

 今回は、カシオの“お風呂テレビ”こと「XFER」(エクスファー)シリーズ、ソニーの“ITテレビ”「airboard」(エアボード)、東芝の「液晶“FACE”ワイヤレス」シリーズを取り上げ、各社の狙いと製品の実力を探る。前半は開発担当者へのインタビュー、後半は製品レビューという構成になる予定だ。

Interview:東芝、液晶“FACE”ワイヤレス
Interview:カシオ、「XFER」(3月11日掲載)
Interview:ソニー、「airboard」(3月12日掲載)
Review:東芝、液晶“FACE”ワイヤレス(3月13日掲載)
Review:カシオ、「XFER」(3月14日掲載)
Review:ソニー、「airboard」(3月15日掲載)

東芝、“FACE”がワイヤレスになった理由

 昨年9月に発表されたワイヤレス液晶TV「液晶“FACE”ワイヤレス」シリーズは、液晶TVの分野で出遅れていた東芝にとって1つの転機となった。それまで15型の「15ZLC7」しか持たず、1桁のシェアに低迷していた同社だが、ワイヤレス液晶TVの投入後は一気に十数%にまで成長したのだ(月間の販売台数をもとに東芝が推計)。

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液晶“FACE”ワイヤレスは、ワイヤレスステーションが、映像や音声をMPEG-2圧縮して無線伝送する仕組み。ユーザーは液晶TVだけを抱えて移動し、電源コードをコンセントに差すだけで、TVやDVDを楽しむことができる。ラインアップは、20V型の「20LF10」(店頭予想価格23万円前後)と14V型の「14LF10」(同16万円前後)の2機種

 東芝、映像ネットワーク事業部映像国内担当商品企画担当主務の本村裕史氏は、液晶の登場によってTVが薄く、軽くなったのが、すべての始まりだと振り返る。ワイヤレス化のきっかけは、「液晶TVを購入したユーザーにアンケートをとってみると、購入理由の上位に“持ち運びやすそう”という項目が入っていた。しかし、本当に持ち運びやすいのかといえば、そうでもない」ということ。

 液晶TVは、従来のブラウン管に比べれば遥かに軽く、また場所をとらない。しかし、TVを受信するからには、アンテナ線に接続する必要があり、またビデオやDVDプレーヤーにもつながっているのが一般的。「実際は“線”に束縛されている。そこで、ユーザーの期待(=持ち運びやすそう)に対する明確な回答として、ワイヤレスの液晶TVを企画した」

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製品企画を担当した東芝、映像ネットワーク事業部の本村裕史主務

 実際に企画が動き出したのは約1年前。当時、すでにソニー「airboard」のほか、シャープなど複数のメーカーから液晶TV向けのワイヤレスユニットが発売されていた。ユニット型は、手持ちのTVを無線化する手軽な方法だが、東芝は検討のうえ、採用を止める。

 「ユニット用の電源コンセントを確保したり、赤外線リモコン用のケーブルをつないだり……。こうした煩雑さを避けたかった」。ユニットを設置した後も、TVの背面には各種のケーブルが露出し、スマートなはずの液晶TVのメリットをスポイルしてしまう。さらに、決定的だったのは、チャンネル操作だ。

 「アドオンユニットは、TVにとって外部入力機器の扱い。視聴時にはまず、TVのリモコンで“外部入力”に切り替え、その後でユニットのリモコンでチャンネルを指定する必要がある。当たり前のことだが、チャンネルボタン1発で切り替えることができないTVでは、フラストレーションがたまるでしょう?」。

液晶パネル、TV用とPC用の違い

 東芝は14/20インチの液晶TVにVGA(640×480ピクセル)を採用している。最近のノートPCをみれば分かるように、10〜12インチクラスの液晶ディスプレイでもXGA(1024×768ピクセル)が当たり前だが、「走査線が400本の地上波TVでは、解像度はVGAで十分。逆に、画素が大きい(解像度は低くなる)ほうが、明るさをかせげるというメリットがある」(本村氏)。

 本村氏は、PCとTVに使われる液晶パネルの違いは大きく3点あると指摘する。「基本的に“動くもの”を映し出すTVは、まず反応速度が早くなくてはならない。そして、写り込みが少ないこと。明るさを確保することだ」。

 FACEに使用されている液晶パネルは、応答速度が16ms、明るさは420cdある。一般的な液晶の応答速度が25ms程度であることを考えれば、これは「業界トップクラス」(同氏)。「Newブラックコート」と呼ばれるノングレア処理も施され、写り込みと黒浮きを防いだ。黒がはっきりと表示できることは、映像のダイナミックレンジ拡大にもつながるという(画質などの製品評価はレビュー編に譲る)。

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伝送距離は約30メートル(見通し)。今回取り上げた3社のワイヤレス液晶TVは、いずれも2.4GHz帯を使うIEEE 802.11bを伝送媒体としている。ただし、IEEE 802.11bを使うのは物理層まで。そのうえに独自の無線技術を載せ、MPEG-2 TSをリアルタイム伝送する(残念ながら、各社とも技術の詳細は非公開)。

 液晶TVを家電として扱う同社のこだわりは、ワイヤレス伝送時のビットレートにも見ることができる。

 東芝の場合、伝送するMPEG-2 TSのビットレートは3段階用意されている。通常は6Mbpsだが、電波状況が悪くなると、4.5Mbps-4Mbpsとビットレートを下げ、安定した動画を維持する仕組みだ。しかし、4Mbpsを確保できない場合は映像が一切映らなくなるという。

 

 「TVとして鑑賞に堪えるのは、MPEG-2なら4Mbpsまで。メーカーによってスタンスは異なると思うが、これが東芝の指標だ」

外部機器を選ばないリモコン

 液晶FACEワイヤレスには、もう1つ独自の機能がある。それが赤外線リモコンの“パススルー”機能だ。無線LANのうえで赤外線リモコンのコードを伝送し、ベースステーションの近くにあるAV機器を操作できるのは他社製品も同じ。ただし、ソニーやカシオでは対応機器が決まっているのに対して、東芝の場合は「受信した赤外線コードをそのまま伝送するため、機器を選ばない」というメリットがある。

 一般的に、赤外線リモコンのコードはメーカー/製品ジャンル(ビデオデッキ、TVなど)ごとに決まっており、世代が変わっても同一のものを利用する。このため、各社のコードを押さえておけば、少なくとも国内メーカー製品で対応に困ることはほとんどない。

 ただし、海外メーカー製品やCATVのセットトップボックスは話が別だ。CATVの場合、メーカーよりも事業者によってコードが決まるため、地域/サービスごとにリモコンコードが異なる。サードパーティ製リモコンの多くが、プリセットのほかに学習機能も備えているのは、こうした理由による。

 しかし、リモコンコードをそのまま伝送できれば、「CATVや海外製品はもちろん、極端な話だが、今後登場する“未知の製品”までもサポートすることができる」(本村氏)。

 その代わり、ユーザーは外部入力機器のリモコンを一緒に持ち運ぶ煩雑さが生じるが、これも計算の中にあるようだ。「学習リモコンは確かに便利だが、一方で機器固有の機能が制限されることもある。たとえば、DVDプレーヤーなら“DVDメニュー表示”ボタン、SkyPerfecTVのSTBならテンキーなど。これに対して、液晶FACEワイヤレスでは、そのデバイスのリモコンを持ち運びさえすればフル機能が使える」。

 

 それは、DVDプレーヤーやビデオデッキをTVと一緒に持ち歩くことと同じだという。

PCと連携しない家電

 DVDレコーダーの「RD-SX40」や「RD-X3」にも見られるように、東芝には、PCの技術を利用しながら、どこか家電として割り切った製品が多く見られる。事実、ノートPCや「TransCube」のようなホームサーバに無線LAN機能が付いていても、液晶TVと“連携”させることはない。RDシリーズにしても、イーサネットポートがあっても録画データをPCと直接やり取りすることはできない。

 PCユーザーから見れば、なにか物足りない印象も受けるのだが、機能を割り切ったうえで家電としての使い勝手を向上させていることが市場の評価につながっているのも事実だろう。一般コンシューマーとPCユーザー双方の支持を受けているのは、ほどよいバランス感覚でITを利用した家電を提供しているためだ。そして、同社のバランスの取り方には確信にも似た自信が見受けられる。

 「PCのような顔をさせてやれば、それでうまくいくものと、そうではないものがある。コンセプトは明確にして、PC中心のもの、家電中心のものを切り分けることが必要だ。そして、ユーザーが予想もしていなかった新しいライフスタイルの提案をする」(本村氏)。

 ともすれば、シーズ優先に陥りがちな新分野の製品にあって、マーケティングをもとにニーズを掘り起こす。液晶ワイヤレスTVを「どこかに材料はあったが、全く新しい製品」という本村氏の言葉は、新ジャンルに取り組む東芝の姿勢を示しているようだ。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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