リビング+:特集 2003/03/12 23:59:00 更新

特集:そろそろ気になる? “ワイヤレス液晶TV”
家電か? PCか? 「エアボード」進化の系譜

放送と通信の融合を実現したパーソナルITテレビ「エアボード」。発表当時、Webや画像も閲覧できるワイヤレス液晶TVは、“器用貧乏”と捉えられがちだった。しかし、3世代を経たエアボードは、AV機器としても着実に進化してきたようだ

 「LocationFree」が、ソニーの登録商標であることをご存じだろうか。ワイヤレス伝送によってケーブルの制約から解き放たれ、「場所を選ばずにTVを視聴できる」ワイヤレス液晶TV。ソニーの「エアボード」が、その先駆者であった証拠といえるだろう。

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エアボードの外部入力は2系統。赤外線経由でAV機器を操作できる「AVマウス端子」が用意されており、ディスプレイから再生/停止やチャンネル切り替えなどの操作ができる

 「パーソナルITテレビ」を謳い、エアボードの初代機が登場したのは、3年前の2000年12月。しかし、商品化の“きっかけ”は、さらに約2年を遡る1998年頃にあった。

 エアボードの初代機から開発に携わってきたソニーマーケティング、ネットワークプロダクツマーケティング部(当時はソニー)の下倉健太郎氏によると、「きっかけは、約5年前に開発されたデジタルワイヤレス技術だった」という。その技術を使い、“PCのような情報端末よりも簡単な形でネットワークに繋がるデバイス”という新たな商品企画が持ち上がる。

 「最初は、電話機にディスプレイを付けたような製品が企画された。今、考えればNTTの“Lモード”のようなデバイスかもしれない。しかしその後、もっとディスプレイは大きくてもいいのではないか、と」(下倉氏)。

 こうした経緯を聞けば、エアボードのコンセプトが、AVよりもITの部分から発生したものだということがよくわかる。TVチューナー内蔵のベースステーションで動画をリアルタイムにMEPG-2変換してワイヤレス伝送する、あるいはリモコンの信号をベースステーション経由で外部入力デバイスに伝達するといった、ワイヤレス液晶TVのスタイルは、エアボードが確立したといえるが、当初からAVを指向していたわけではなかったようだ。

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エアボードのベースステーションはPCの無線LANアクセスポイントとしても利用できる。ただ、映像伝送に関してはTCP/IP通信ではない。東芝やカシオと同様、IEEE 802.11bをベースにした独自の無線技術だ。インターネット接続と映像伝送は「個別に動いているといっていい」(下倉氏)

TVには不利な条件

 初代機の発表当時“Webや画像も閲覧できる液晶TV”は、ソニーブランドの先進的なイメージもあって多くのマスコミが注目した。ただ、PC系の専門媒体だけは、少し冷めた目で見ていたように思う。1990年代に失敗した「インターネットTV」の再来か。AVとITの器用貧乏か……。

 これらは憶測ではあるものの、一面の事実は捉えていた。実は技術的に見ても、AVとITが共存するエアボードは不利な条件を抱えていたからだ。まず、第1回で触れたように、TVとPCでは、液晶TVに求められる性能が違う。静止画がメインのPCと、動画を扱うTV。解像度が求められるPCに対して、明るさと応答速度が重視されるTV。まして、エアボードは液晶の表面にタッチパネルを装着している。

 下倉氏は、「タッチパネルが付くと、液晶の明るさは約20%減少する。タッチパネルに相殺されるが故に、スペック的に不利な面があったのは事実だ」と振り返る。「実際、初代機に対しては“コントラストが悪い”といった感想もユーザーから寄せられたこともある」とも。

 初代機の「IDT-LF1」は、現在よりも解像度の低い(=明るさは確保しやすい)VGAパネルを採用していたが、やはりタッチパネルの採用は響いた。2代目の「IDT-LF2」からはSVGA(800×600ピクセル)の12.1インチ液晶パネルに切り替え、1月25日に発売したばかりの最新型「IDT-LF3」にも継承されている。解像度のアップは、WebブラウズなどIT面の要求によって付加されたものだが、TV視聴という点ではどうなのか。

 ソニーは明るさなどの数値を公表していないが、下倉氏によると「LF2、LF3では、AV面の強化を強化してきた。液晶の明るさは、LF1のときに比べると約2.5倍。タッチパネルを外すと、眩しいほど明るい」と話している。

 また、LF3では3次元コムフィルターの採用によるノイズ低減、そして映像のワイヤレス送信出力を「LF2の約4倍」に向上させるなど、画質重視の改良が加えられた。伝送距離は従来と同じ見通し30mだが、良好な映像を受信できる範囲がこれまでよりも広くなったはずだ(詳細な評価はレビュー編に譲る)。「映像のクオリティは上げてきたし、これからも上げていくだろう」(同氏)。

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ソニーマーケティング、ネットワークプロダクツマーケティング部の下倉健太郎氏

 画質面を強化したエアボードは、ほかにもTV専用のカードリモコン(これまでは画面上のリモコン画面で操作していた)や、画面上をタッチして左右にスライドさせるだけでTVのチャンネルが切り替わる「チャンネルスライド機能」など、液晶TVとしての基本機能を充実させている。

ITは“付加価値”に

 LF3の発表時、ソニーは「ワイヤレス液晶TVとして販売する」と明言した。拡大しつつあるワイヤレス液晶TVの市場にあって、「パーソナルITテレビ」から「ワイヤレス液晶テレビ」へと軸足を移そうとしているかのように見える。

 とはいえ、ワイヤレス液晶TVのなかで、WebブラウザやPCと共用できる無線アクセスポイント機能などを持つのはエアステーションだけ。その独自性をソニーは、「付加価値」として訴求する構えだという。

 最新型のIDT-LF3では、画像データを液晶画面で閲覧する「アルバム機能」でメモリースティック以外のメモリカードに対応(別途USB接続のメモリーカードリーダーが必要)したほか、「CyberShot」の「マルチ連写機能」で撮影した連続画像の再生をサポートするなど、地味ながらいくつかの機能強化が図られている。

 Webブラウザも進化した。「すべてのサイトを閲覧できるわけではない」が、初代機に比べると、Flashのサポート、JavaScriptへの対応など、追加されてきた機能は多い。当初から盛り込まれていたSSLも含め、通販サイトなどコンシューマーが興味を持ちそうなサイトはほとんど問題なく利用できるようになった。

 とくに、2代目のLF2からは、エアボードとPCで共用できるプリンタサーバ機能をベースステーションに盛り込み、PCを介さずにデジカメ写真を印刷できるようになった点が大きい(LF3では、エプソン、キヤノン、ヒューレット・パッカードなどのプリンタを20種類以上サポートしている)。せっかくパソコンを購入しても、インターネットと写真の整理にしか使っていない人も多いはず。絞り込んだ機能と家電ライクな操作感を持つエアボードは、PC初心者にこそ適したデバイスといえそうだ。

メインユーザーはオジさん?

 こうしたソニーの販売戦略は、IDT-LF2のユーザーアンケートをもとに集計したデータを見るとよく理解できる。これによると、エアボード購入者のうち、86.5%が男性。しかも、年齢別では30歳から40歳代後半が大半を占めるという。

 「とくに昨年のサッカーW杯のときはSky PerfecTV!のチューナーと一緒に販売量が伸びたようだ」(同氏)。リビングルームから追い出され、書斎や寝室で試合を観戦しているお父さんたちの姿が目に浮かぶようだ。

 「もちろん、結果的にお金を出すのがお父さんであって、使うのは家族というパターンも多いでしょう。お母さんがキッチンで料理をしながらレシピを見る。あるいは“お風呂ジャケット”(オプション)をつけて、入浴中にTVを見る。そんな新しいライフスタイルが広がってきた」。

 同時に、PCユーザーの比率も予想以上に増えているようだ。購入者目的の中では、「セカンドPCとして」という項目が実に33%を占めている。「実際にはヘビーユーザーも多い。PCは別に持っているが、電源を入れればすぐにWebブラウザが立ち上がる手軽さが受け入れられている」

 AV機器としての性能を追いながら、IT機能で他社製品との差別化を図るエアボード。ワイヤレス液晶TVに注目が集まる今だからこそ、改めて注目したい製品といえそうだ。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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