リビング+:特集 2003/06/17 23:59:00 更新

特集:ITでこころ・からだ健康に
無線で祖父母に伝送する“おもいやり” 〜松下電工

高齢者の一人暮らしが増えるなか、子や孫は祖父母の健康が心配なもの。赤外線センサーと無線を組み合わせて、携帯電話から高齢者の健康を簡単に確認するサービスがあるという。

 日本は高齢化社会といわれるようになって、久しい。厚生労働省が実施する国民生活基礎調査によれば、いまや65歳以上のみの世帯数は、600万を越える。そのうち単独世帯(いわゆる独居老人)の数は、300万以上。子や孫にすれば、祖父母が元気で暮らしているか、心配するケースも多いだろう。こうした現場で、ITを活用することはできないだろうか。

 たとえば、長距離通話料が低廉になるIP電話で、頻繁に電話をかける、ということが考えられる。あるいは、祖父母の家庭にあるポットの利用頻度を、ネットでチェックできるサービスも、存在する。また、IPライブカメラを設置して、家庭の様子を遠隔中継するといった方法もある。

 しかし、電話のような直接的な手段は、毎日の義務として課せられると、双方に負担になる場合もある。ポットの利用状況にしても、夏場は必然的に使用頻度が減るため、十分なデータをとれない場合もある。ライブカメラの設置となると、プライバシーの問題から、視聴される側が設置を嫌がるケースをもあるだろう。

 今回紹介する、松下電工のサービス「みまもりネット」では、そうした方法とは別のアプローチから、祖父母の生活状況を知ることができるという。同社におじゃまして、実際のサービスを体験しながら話を聞いた。

赤外線センサーが生活データを集計

 みまもりネットは、高齢者の宅内に複数の無線機器を設置して、生活状況を把握することを目的とするサービスだ。無線機器は、センターサーバにパケットを送信する“親機”と、各部屋にとりつけられてセンサーの役割をする“子機”から構成される。

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 親機は、電源につなぐだけのシンプルなインタフェース。コンセント差し込み後、1〜2分ほどで利用可能状態になる
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 子機となるセンサーは、壁にフックなどで固定する。電池は専用のものを使用し、4年間は持つという。親機〜子機間は省電力無線でデータをやり取りする

 子機には前方90度、上下110度にわたって、体温があって動くものを感知する受動式赤外線センサーが付いており、これで見通し5メートル程度の範囲で、高齢者の活動を把握する。各部屋のセンサーのデータを親機で集計、サーバに送り、事前に登録してある子や孫のPCに転送される仕組み。これにより、「今日は1日中寝室から出ていない」などの異常にも早期に気付くことができる。

 集計データは、PCのほかに携帯電話でも確認できる。転送先は最大8アドレスまで登録できるため、たとえば親戚で複数世帯が祖父母を“見守る”ことも可能だ。携帯で表示される集計データは、下写真のように表示される。

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 携帯電話でメールを受信したところ。機種によっては文字制限から、2通に分かれて届く場合もある

 携帯画面で、縦に並ぶ「19、20、21」という数字は、それぞれ時間を指す。横にならぶ「LTLBL」などの文字列は、「リビング、トイレ、ベッドルーム」などの頭文字。つまり、この文字列から「19時台はリビングに長く滞在しており、トイレに1度いったほか、ベッドルームにも移動している」ことが見てとれる。

 メールは、1日1回、決まった時刻に届けられる。もっとも、ユーザー側からリクエストして、好きな時間にその時点での集計結果を受信することもできる。その場合、センターサーバから送られてきたメールにタイトルをつけず、ただ返信するだけでいい(一部機種では「あ」など任意のタイトルをつける必要がある)。センターサーバ側では、リクエスト相手が適正なアドレスかチェックした上で、即時にデータを返信する。

 なお、同端末にはほかに「連絡」ボタンも備えている。高齢者自ら、見守る側に連絡をとりたい際にボタンを押すと、登録アドレスに「連絡ボタンが押されました」と表示されたメールが届く。電話をかけることが困難な場合でも、ボタン1つで“高齢者が連絡をとりたがっている”ことが分かる仕組みだ。

独自の情報圧縮アルゴリズムを採用

 同社がみまもりネットのサービス提供を開始したのは、昨年12月から。初期費用として1万5000円、設置料として1万円が必要(自分で設置する場合は無料)で、ほかにセンサー2台を利用する場合で、月額利用料が3000円から。センサーを3台以上利用する場合、1台追加するごとに300円必要で、最大8台まで申し込める。

 同社の新事業推進部みまもりネットチーム課長、田中智幸氏は、集計データを伝送する際の文字列の構成に、工夫があると話す。

 「単純に、センサーの情報を圧縮しただけでは、滞在時間の長いリビングなどの情報ばかりが残ってしまい、LLL……という表示になってしまう」。

 たとえばトイレなどに設置されたセンサーの感知情報は、回数は少なくとも重要な情報として、親機側で判断しなければならない。このため、単に一律に情報を間引くのではなく、ある程度の優先順位をつけた上でデータを処理する必要が生じる。同社はこのため、独自の圧縮アルゴリズムを用意したという。

 「たとえば、玄関などの出入り口に設置されたセンサーの情報は、最優先で処理する。トイレや洗面所は“中程度”の重要性。逆にリビングや寝室のセンサー情報は、優先度が低いため、感知データは大幅に間引いていい」。センサー設置時に親機側で、“センサー1からの情報は、重要度高”のように設定する。これにより、小さい画面で効率的にデータを表示させることが可能になったという。

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 優先順位の設定は、親機の側で変更できる

ユーザーの声は

 同社広報部の藤田麻菜美さんは、実際にみまもりネットを利用するユーザーだという。祖母の宅内にセンサーを配置し、毎日午後1時半に携帯電話でデータを受信している。

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 左から、みまもりネットチーム課長の田中智幸氏、広報部の藤田麻菜美さん

 藤田さんは「毎日祖母の行動パターンを見るうち、ちょっとした違いにもすぐ気付くようになった」と話す。

 たとえば、メールが届いてまずチェックするのは深夜の行動だ。夜中に頻繁に置きだしてトイレに行ったり、ほかの部屋に移動したりしているようだと、眠りが浅いか、健康にやや問題があるのではと推測する。

 また、外出しているかどうかを見ることも重要。「外出した夜は、比較的熟睡するケースが多いことも読み取れて、おもしろい(笑)」。

 前出の田中氏も、実際に高齢者の家庭の間取りを把握している人間が見ると、単なる文字列から移動風景が想像できると話す。「それこそ、手にとるように分かる。高齢者は心配をかけまいと、つい相手に嘘をつくケースもあるが、こちらは正しく状況を判断できる」。

 藤田さんは、みまもりネットのシステムを導入することで、毎日1回、祖母のことを思いやるようになったことも重要な変化だと話す。

 「メールのデータをプリントアウトして、推移をたどったりする。そうしていると、あ、私今祖母のことを考えているんだなあ、と気付く(笑)」。ユーザーはデータを見ることで、後から電話をかける際に「2時間も居間にこもりきりで何やってたの」など、会話の糸口を見つけることも可能。無線でつながるものは、パケットだけではないようだ。

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[杉浦正武,ITmedia]



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