リビング+:ニュース 2003/06/26 23:59:00 更新


“24Mbps”の広告表示はこのままでいいのか?

「下り最大○○Mbps」をうたっていても、大半のユーザーは実際にそれだけの速度が出ない――。そんなADSLに寄せられた疑問の声に、各業界が反応し始めた。

 このところ、“下り最大20Mbps超”をうたうサービスが相次いで発表され、注目を集めている。しかし、むやみに高速化をアピールするADSL事業者の手法には、一部で疑問の声も上がっているようだ。“最大○○Mbps”という華やかなPRの影で、消費者の誤認を招く表示を防止しようとする動きも、並行して進んでいる。

 公正取引委員会は、6月25日の報道発表で「ADSL接続サービスの取引に係る広告表示に関して、苦情が多く寄せられるようになってきている」とコメントした。知ってのとおり、ADSLはベストエフォートの通信サービスだ。しかも、各ユーザー宅がNTT収容局からどれだけ離れているかによっても、実現できる通信速度は大きく異なる(記事参照)。このため、サービスを利用して思ったほど通信速度が出ず、とまどうユーザーも複数いるようだ。

 この状況を受けて、公正取引委員会はADSL接続サービスの広告表示について、実態調査を実施した。誤認を招くおそれがあると認められた表示を“問題となる事例”として追加するなど、留意事項の改定を行っている。

 同様の問題は、総務省でも取りざたされている。同省では、今年1月から「電気通信消費者支援連絡会」を開催している。これは、消費者が安心して電気通信サービスを利用できるよう、電気通信事業者団体と消費者団体の代表者が、継続的に意見交換を行う場となる。

 今年5月には第2回目の会合が行われたが、そこで議題となったのは、1つが「サービスの相談員の問題」(総務省)。そしてもう1つが、くだんの“最大○○Mbps”表示の問題だったという。

 「たとえば最大12Mbpsといっても、それだけの速度が出ないユーザーもいる。その点の周知活動が足りないのではないか、ということ」(総務省)。同連絡会では、この問題をより深く議論するためのワーキンググループを発足。6月18日には、第1回目の会合を開き、検討を進めている。今後はユーザーの混乱を避けるため、なんらかの自主的な基準を設ける予定だという。

 こうした流れの中で、いち早く“最大○○Mbps”表示を取りやめるISPも現れた。ニフティは、現在の「ADSL12M」「ADSL1M」といったコース名の表示に代えて、「ADSLライトコース」「ADSLスタンダードコース」といった名称を採用する方針を固めている(記事参照)。

 同社広報は、各省庁で議論が始まる以前から、ユーザーからクレームとまではいかないまでも、速度表示の真偽を問い合わせる声はあったと話す。「海外では、ユーザー宅の実測値にもとづいて課金する……という料金体系もあると聞いている。これを採用するかはともかく、社内で議論を続けていた」(ニフティ)。

具体的な事例は?

 それでは、具体的にはどのような表示が、消費者の誤認をまねくおそれがあると位置付けられるのだろうか。

 前出の公正取引委員会では、2002年12月から2003年4月にかけて、PC雑誌や折り込みチラシ、ホームページ上などで展開されている、ADSLサービス広告表示の実態を調査している。そこで見られた、誤認を招きかねない表示とは、たとえば以下のようなものだ。

  • 新聞折り込みチラシで、「最大12Mbpsの高速通信で快適インターネットライフを満喫!!」と表示した上、ダイヤルアップ接続の通信速度を「人が歩く速度」に例えると、ADSLは約210倍のスピードで「飛行機」であると比喩している
  • 自社ホームページで「インターネットは断然ADSL 1.5Mbpsから12Mbpsの高速インターネット環境が実現」とうたっている

 いずれも、通信設備の状況やほかの回線との干渉などによっては、通信速度が低下する場合がある旨、明記されていない。ホームページの事例では、別のページで説明がなされていたが、同一ページの近接した箇所で行う必要があるという。

 なお、同委員会ではほかにも、ADSL料金などの表示に関して、分かりにくい表示があると指摘している。具体的には、契約・解約料金や別途加算される料金などが小さく表示されていたり、キャンペーン割引価格が、期間終了後に適用される予定のないような高額との差額であるように示して、実際より著しく有利であるように表示したりしているという。

事業者の自浄能力に期待

 公正取引委員会は調査の結果、同様の表示を行っている事業者が「多数見受けられた」とコメントしている。

 対応としては、事業者のサービス特性に相応した表示ルールを策定することが重要だとして、社団法人日本インターネットプロバイダー協会に対し、会員事業者への改善指導、および規約策定を含めた表示適正化への取り組みを要請している。

 同委員会は、「引き続き監視を行うとともに、景品表示法の規定に違反する事実が認められれば、厳正に対処する」とも。しかし、既に見たようにADSL業界で対応しようとする取り組みも始まりつつある。事業者には、さらに消費者に分かりやすい表示を心がけるよう、期待したい。

関連記事
▼ADSLの“最大速度”表示やめます〜ニフティ

関連リンク
▼公正取引委員会
▼総務省

[杉浦正武,ITmedia]



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!