リビング+:ニュース 2003/06/30 23:58:00 更新


次世代コミュニケーションデバイス:鍋

鍋を囲めば、箸と一緒に会話も進む。家族のコミュニケーションには欠かせない“鍋”が次世代のコミュニケーションデバイスになる? NECパーソナルプロダクツの発足発表会でNECグループのデザイン部門が参考出展した近未来デバイスの数々を紹介しよう。

 NECパーソナルプロダクツの発足記者会見(別記事を参照)会場の一角に、NECグループの専門デザイン集団「NECデザイン」が提案する近未来のデバイス群が展示されていた。いずれも「3〜5年後の生活シーンを想定したコンセプトデザイン」(同社)のため製品化に直結するものではないが、こうしたコンセプトモデルから同社の考えるマンマシンインタフェースの未来を垣間見ることができる。

 まず紹介したいのが、“360度のビジュアルコミュニケーションデバイス”こと「nave」。そのまま読むと“ナベ”。見た目も鍋。モデルはもちろん鍋だ。

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蓋がなくて中央が盛り上がっているところをみると、モデルはしゃぶしゃぶ鍋か?

 naveの機能を簡単に言えば、TV電話端末だ。ただし、家族など複数の人数で使うことを想定している。水を張っているように見える部分はタッチパネル付きの液晶ディスプレイで、中央の盛り上がった部分が360度カメラ。つまり、naveを囲んで水面を覗き込めば、通話先のnaveに全員の顔が映るという寸法だ。

 従来のTV電話と違い、カメラっぽくないところもポイント。「カメラの前ではなぜか自然に振る舞うことができない人が多い。従来のビデオフォンは、表示デバイスや端末の形に制限を受けていたが、naveなら自然に周囲の雰囲気を伝えたり、多対多のビデオコミュニケーションが可能になるだろう」(同社)。

 例えば、リビングやダイニングにnaveを置く。親戚や田舎の両親とつなげば、お互いの家族全員が会話に参加できるだろう。キーボードは持たないが、タッチパネルを使ってメールなども可能になるという。

 ただし、製品名が「ナベ」ではちょっとカッコ悪いので、naveを「ネイブ」と読んでもらうといった案もあるらしい。個人的には、「ナベ」がいいと思うんですケド……。

記憶する“わっか”

 ブレスレット型映像記憶端末「wacca」(わっか)は、アクセサリー型のデジタルカメラだ。ストレートなネーミングがいかにもプロトタイプっぽいが、女性デザイナーが企画したというそのコンセプトは、スペック競争に行き詰まったデジタルカメラに1つの方向性を示している。

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ブレスレット型映像記憶端末「Wacca」。プレスレットの一部に小型カメラが内蔵されている

 waccaの利用シーンはあくまで日常。普段はブレスレットとして身につけておき、なにか残したい場面に出くわしたらwaccaの穴を通して風景を覗く。すると、内蔵の距離センサーが顔との距離に応じた画角で映像をキャプチャーしてくれる。丸いwaccaの内側をファインダー代わりにして、あたかもそのときの視野を切り取るかのごとく、映像を残すことができるという。

 撮影した画像が、waccaの透明な部分にサムネイルになって浮かび上がるという機能も面白い。「お気に入りのグッズを手に取ると、思い出の情景が心に浮かぶように、映像記憶とそのツールはより親密な関係になっていいのではないか?」(同社)。映像「記録」端末ではなく、「記憶」端末となっている理由もなんとなくうなずける。

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浮かび上がったサムネイル画像。鮮明さに欠けるが、「なんとなくわかる」ところに味があるのだ

 wakkaの製品化には技術的な障壁も多いだろうが、そのコンセプトを単に技術だけで語るのは無粋というものだ。ITは、常に人の感性を刺激する技術であってほしい。そんな同社の姿勢がうかがえる。

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充電器兼アクセサリー台

ペン立て型PC

 どこから見てもペン立てにしか見えないが、「P-ISM」(Pen-style Personal Networking Gadget Package)はパソコンだ。

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「P-ISM」

ペンの1本1本が、「バーチャキーボード」の投影デバイス、ディスプレイとしての小型プロジェクター、携帯電話、デジタルカメラ、CPUユニットといった機能を持ち、ペン立て全体で1つのコンピュータパッケージを構成する。ペン立てそのものは、充電機兼サーバとなる。

 ペン同士は近距離無線技術によって接続され、さらに携帯電話を通じてインターネットにもアクセスできる。もちろん、それぞれのペンを持ち出し、携帯電話やデジタルカメラを個々に利用することも可能だ。

 「情報端末の小型化が進むなかで、サイズの小型化はペンサイズがミニマムだと感じている。先進技術と人間の接点の1つを、ペンという形で表現してみた」(同社)。

PCと携帯電話がデュオ結成

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「duo-pc」と「duo-phone」。変形合体メカだ

 ただのノートPCと携帯電話に見えるが、ちょっと違う。どちらも2つの液晶画面を持ち、片方はタッチパネルも備えるデュアルディスプレイ端末だ。それぞれ、「duo-pc」「duo-phone」と呼ばれている。duoといえば、かつての「PowerBook Duo」のような合体メカを想像してしまうが、こちらはさらに上をいく。合体の上に変形までしてしまうのだ。

 duo-phoneの上部ディスプレイは、スピーカー部分を残して取り外し可能。外したディスプレイと本体はワイヤレス接続となり、TV電話のときにはディスプレイ&受話器に早変わりする。

 「携帯に向かって話しかける今のTV電話は不自然だ。ディスプレイと受話器という組み合わせのほうが自然で、利便性も向上するだろう」(同社)。

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duo-phoneの上部ディスプレイを外したところ

 また、下部の液晶ディスプレイはタッチパネルになっている。これには「動作モードによって表示するボタンを変えることができる」メリットがある。つまり、電話番号で発信するときは通常のテンキーだが、短縮ダイヤルのときには番号登録した友達の顔アイコンが表示されるといった具合。メールを書くとき、テンキー入力に慣れないオジさん向けに「QWERTYキーボード」や「カナキーボード」を表示することだってできるだろう。なかなか親切なコンセプトだ。

 一方のduo-pcは、利用シーンに合わせて3つの変形パターンを持っている。まず、通常のノートPCとして使う方法。タッチパネルディスプレイにソフトウェアキーボードの画面を表示する。

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ディスプレイにソフトウェアキーボードを表示

 2つめがタブレットPCとしての使い方。duo-pcのヒンジ部は360度開くため、逆に折り畳むことができる。片手で持ちながらタッチパネルディスプレイとペンで操作可能。

 3つめの変形は大がかりだ。ディスプレイ部を180度開き、後ろにサブウーファー兼用の光学ドライブを取り付ける。すると、2つのディスプレイが隙間なく並び、6:4(3:2ともいう)の薄型大画面液晶ディスプレイに早変わりする仕組み。キーボードとマウスがあれば、大画面ディスプレイの贅沢なデスクトップPCができあがる。

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合体中。黒い物体がサブウーファー兼用の光学ドライブだ

 ここで再び登場するのが、前述のduo-phoneだ。duo-phoneには、TV電話機能のほか、次世代バーコードに対応したフォトセンサが搭載されており、これを利用してduo-phoneをワイヤレスの光学読み取り式マウスとして使うことができる。

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携帯電話とは思えない見事な裏技

 なんというか、合体ロボットアニメ顔負けのギミックと連携プレイを見せてくれた「duo-pc」&「duo-phone」。ただ、組み合わせが前提となるだけに、もし製品化されたら販売ルートが選定に困りそう。

双眼鏡ではありません

 ここから先の4製品は、3月に開催された「CeBIT」でも展示されたものだ。既にご存じの読者も多いと思われるので、簡単な説明に止めよう(決して“取材不足”ではない)。

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GPS端末「GlassNavi」

 「GlassNavi」は、パーソナルなGPS端末だ。双眼鏡のように覗き込むと、前方の風景とナビゲーション画像が重なり、さまざまな情報をユーザーに提供してくれる。

 モックアップのため、実際に覗いてみることはできなかったが、イメージとしては「実像にワイヤーフレームの立体ナビゲーション画像がオーバーレイ表示され、ズームアップすることで詳細情報をブラウズできる」といった感じになるそうだ。道案内はもちろん、お店を見つけたらすかさずズームアップして、お勧めメニューの情報がゲットできる。

 さらにGlassNaviは、ソニー「グラストロン」のような、お手軽なホームシアターシステムとしても利用できるらしい。ビデオ信号を入力すれば、「52インチ相当の高精細画面」(同社)が目の前に現れる。なかなかに高付加価値なGPS端末となりそうだ。

ロールスクリーンのデスクトップPC

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ロールスクリーンディスプレイ搭載の「PRISM」

 「PRISM」はプライベートAVシアター&PC。ロールスクリーンディスプレイを搭載しているため、本体にディスプレイを巻き取り、コンパクトに収納できるのが特徴だ。「すべて収納した状態ならコンパクトなオーディオプレイヤーになり、ディスプレイを少し引き出せば曲名や簡単なメールのブラウズといった用途に利用できる」(同社)。

 問題は、「今のところ、ここまで小さく巻き取れるロールスクリーンディスプレイが存在しない」ことらしい。

マンガ的コミュニケーションツール

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マンガ的コミュニケーションデバイス「e palette」

 「e palette」は、マンガの世界のコミュニケーションスタイルを実現する携帯端末。透明なキーパッドの下にカラー液晶が内蔵されており、操作に従って表示を変化させる。例えば、内蔵カメラで撮影し、サーバにアップロードした画像を、マンガのようにデフォルメして遊ぶといったことができるという。

片手にこだわる携帯端末

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モバイルインターネットビューワ「FLIPPER」

 最後に紹介するのは、片手操作にこだわったモバイルインターネットビューワ「FLIPPER」だ。

 トラックボールは裏表の両面で利用可能。その周りにはジョグダイヤルを備え、画面のメニューとシンクロしてさまざまな操作を行える。画面表示は上下左右に反転するため、左利きの人はもちろん、縦長の画面で使いたいといったケースにも対応できるという。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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