リビング+:ニュース 2003/07/18 05:19:00 更新


802.11a/gが100Mbps超に〜米airgoのアプローチ

シリコンバレーのベンチャー企業、米airgo NetworksはIEEE 802.11a/gを108Mbpsまで高速化し、さらにカバーエリアも大幅に拡大する無線LANチップセットを開発した。年内にも正式に発表する見通し。

 IEEE 802.11a/gといえば最大54Mbps。しかしシリコンバレーのベンチャー企業が、これを108Mbpsまで高速化し、さらにカバーエリアも大幅に拡大する無線LANチップセットを開発した。来日した米airgo NetworksマーケティングディレクターのCarl Temme氏によると、同社は年内にも正式発表を行い、無線機器メーカーから順次対応製品が出荷される見込みだという。

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米airgo NetworksマーケティングディレクターのCarl Temme氏

 高速無線LANの需要が拡大するなか、他の無線LANチップベンダーも、一般に「フレームバースティング」と呼ばれる独自の高速化技術を相次いで発表しているが、それらは主に通信時の手順を省くことで高速化を図ったものだ。また無線LANの2チャンネルを同時に使って最大108Mbpsを実現する技術もあるが、残念ながら日本には“1回の通信に使用する帯域幅は18MHz以下”という規制があるために使えない(記事参照)。

 一方、airgoの技術は、従来通りの1チャンネルで100Mbpsを超える転送速度を実現するという。サンプルチップはIEEE 802.11a/b/gに対応しているが、OFDMを使う802.11a/gのスループットは最大で108Mbps。また高速化に伴い、1台のアクセスポイントでカバーできる範囲も拡大するという。例えば、802.11aで比較すると「米Atherosの第1世代チップの約2倍にあたるエリアをカバーできる」という。

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アクセスポイントからの距離と伝送速度。後述のデモンストレーション会場で同社が行った検証結果だ(クリックで拡大)

 通常のIEEE 802.11a/b/gとの互換性も確保し、他社製品のクライアントが混在する環境でも1つのアクセスポイントで通信可能だ。逆にairgoクライアントで通常のアクセスポイントに接続すれば、“レガシーモード”で動作する。

マルチパスを有効利用?

 airgoは2000年12月に設立されたばかりのベンチャー企業だ。しかし、創立メンバーには802.11の開発に携わった技術者や、無線を高速化する技術として注目を集めているMIMO(Multiple Input Multiple Output)の発案者などが含まれている。MIMOは、複数のアンテナをアレイ状に並べ、電波環境の変化に合わせてリアルタイムに指向性を変更できるようにする技術だ。

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miniPCIの試作ボード。チップセットは2チップ構成

 そして、airgoの無線LANチップもMIMO技術を応用したものだという。本来、障害物などに反射して届く“マルチパス”は、自らの電波に干渉してスループットを落とす原因となるが、airgoはこの反射波も有効活用する。「無線LANのパフォーマンスは、通常なら干渉やマルチパスといった要因で弱まってしまう。しかしAirGoの技術は、マルチパスをメリットに変える」(Temme氏)。

 例えば、同社が製作したPCカードタイプの試作品には、2.4GHz帯と5GHz帯用のアンテナが各3つずつ搭載されていた。そしてベースバンドチップには、3本のアンテナから入ってくる信号を同時に処理するためのカスタムDSPが統合されている。「これまでも同様の処理をこなす製品は存在したが、大規模なシステムに限られていた」。

 同社の場合、カスタムDSPと高効率のアルゴリズムにより、PCカードやmini PCIに搭載できるまでシステム(チップ)を小型化することに成功。これにより、家庭やオフィスで利用する一般的な無線LAN製品にMIMO技術を適用できることになった。

家中にHDTV配信が可能に?

 デモンストレーションは、一般住宅を模した2階建てのスタジオで行われた。建物は軽量鉄骨造り。1階のリビングルームにアクセスポイントとサーバ代わりのPCを設置し、2台のノートPCにそれぞれAtherosとairgoの無線LANカードを挿入してスループット(UDP)を比較する。これを宅内の各所に移動して行った。

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デモ会場の見取り図

 まずは、アクセスポイントに近く、遮る物もないリビングルーム内。いずれも5GHz帯のIEEE 802.11aだが、Athrosチップの23〜24Mbpsに対して、airgoは73Mbpsを記録した。

 リビングルームと繋がってはいるが、間に壁があるキッチンに移動したところ、Atherosは22〜24Mbpsとあまり変わらず、airgoは少し落ちたものの、それでも55Mbps前後の数字をたたき出した。

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キッチンで検証中

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キッチンでの検証結果。左がairgo

 もっとも条件の悪い例として、2階の和室でも実験を行った。入り口のドアを閉めると、Atherosチップのほうは接続できなくなってしまったが、airgoはまだ25Mbps程度を維持している。

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和室での検証結果

 「1台のアクセスポイントがあれば、家中にHDTV画質の動画を配信できるだろう。2.4GHz帯の802.11gを使えば、伝送距離や壁の透過性はさらに向上するはずだ」。

ターゲットはPC製品、そしてAV機器

 HDTVを例に挙げたように、同社が狙う市場はPC向けの無線LAN製品だけではない。家庭用のAV機器でもワイヤレス化の流れが見え始めているが、airgoは今後急速に拡大する見込みの同市場に向け、スループットとカバーエリアの広さを武器に攻勢をかける構えだ。

 ただ、HDTV配信のような動画伝送では遅延が許されない。そこで同社はIEEE 802.11eのドラフト仕様をサポートし、無線LANチップセットにQoSを盛り込んだ。

 気になるのは製品価格だが、通常のデュアルバンド無線LAN製品よりも多少割高に設定される見込みだ。それでもTemme氏は、「プライスパフォーマンスは、既存の無線LAN製品の中で最も高い。AirGo製品は、プライスパフォーマンスの新しいスタンダードになるだろう」と胸を張った。

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▼米AirGo Networks

[芹澤隆徳,ITmedia]



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