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2003/08/07 23:12:00 更新 |
やはり紛糾する「クアッドスペクトラム」
8月7日、TTCで第3回のスペクトル管理SWG会合が開かれた。この日はスペクトル管理標準、「JJ100.01」第2版のドラフトが作成されたが、クアッドスペクトラムの処遇に話題がおよぶと、議論が紛糾する一幕もあった。
8月7日、社団法人情報通信技術委員会(TTC)で第3回のスペクトル管理サブワーキンググループ会合が開かれた。この日はスペクトル管理標準、「JJ100.01」第2版のドラフトが作成されたが、クアッドスペクトラムの処遇に話題がおよぶと、議論が紛糾する一幕もあった。
クアッドスペクトラムとは、利用帯域幅の拡張によって、最大50Mbpsともいわれる通信速度を実現する伝送方式。7月15日の会合で、「NTT設備への収容制限なし、線路長制限なし」の、クラスBへ分類することが決まっていた(記事参照)。
しかし同方式は、帯域幅を拡張するがゆえに、一部でVDSLとの干渉が不安視されている(記事参照)。この日、STマイクロエレクトロニクスがクアッドスペクトラムとVDSLの干渉実験結果を提出したこともあって、ふたたびクアッドを承認すべきだったか、話がむし返された。
STマイクロエレクトロニクスによれば、「クアッドをフルパワーでサービス提供すると、VDSLに深刻なダメージを与える」(資料は後日公開の見込み)。運用にあたっては、PSDマスクで慎重に制限をかける必要があるという。
これに力を得て、前回クアッド承認に反対だった米Globespan Virataが自説を展開する。「新しい情報が入った今は、考えを改めてもいいのではないか」と、前回の承認そのものを覆そうとする姿勢を示した。
激しく反発したのは、イー・アクセスに代表されるクアッド推進派の事業者だ。一度議論を経て、承認されたものが、正式な手続きも踏まないままこれを取り消されるはずがないとした。
この問題について整理すると、既にクアッドスペクトラムが“承認済み”であることは、疑う余地のない事実。また、クアッドとVDSLとの漏話干渉を気にする……といっても、現状VDSLはマンション構内での敷設などに利用が限定されている。「NTT局舎から各家庭に回線を引くVDSLサービス」がまだ存在しない以上、干渉が発生することはない。
もっとも、Globespanなどは「“高帯域”のスペクトル管理では、より慎重に対処すべき」という論法で、これに対抗する。
ADSLは、従来26KHz〜1.1MHz帯を用いてデータ伝送を行ってきた。そのため、こうした帯域でのスペクトル管理は当然ながら、繰り返し事業者間で話し合いが持たれてきた。
しかしクアッドスペクトラムでは、3MHz〜4MHz帯といった、スペクトル管理の観点からいうと整備が進んでいない「未踏の帯域」も利用する。この帯域にクアッドが先着し、VDSLなど後続のサービスが制限を受けるようでは困る――と、いうわけだ。そしてこれは、一面の真実でもある。
この日の会合では、議長の池田佳和氏が議論を引き取って、承認を覆すなどの処置はとらないが、1.1MHz以上の帯域を利用する場合は慎重な対応をとることを確認し合った。しかしこの問題、まだまだ火種がくすぶっているといえそうだ。
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情報通信技術委員会
[杉浦正武,ITmedia]