リビング+:特集 2003/08/28 22:07:00 更新

特集:リネージュにおける社会心理学的考察
ネット上で、人は完全な別人格になれない――池田教授 (1/2)

東京大学の池田教授が報告した内容は、読者にも多くの議論を呼んだ。同氏に対し、さまざまな疑問を直接ぶつけてみた。

 ネットゲームユーザーの実態に学術的にアプローチする特集「リネージュにおける社会心理学的考察」、最終回はこの研究を発表した、東京大学大学院の人文社会系研究科、池田謙一教授にインタビューを行う。

 同氏は、過去にもオンラインコミュニケーションの研究を進めてきた。古くはニフティのフォーラムから調査を行ってきたほか、山梨のインターネット普及研究なども行っている(特集第1回に出てきた山梨のユーザーデータは、これを活用したもの)。ほかに、ネットオークションの分析などを手がけた経験もあるという。

 リネージュの研究は第2回でも触れたように、延世大学のワン教授と行ったもの。今後もデータを集め、日韓比較を進めたい考えだ。

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東京大学の池田教授(同大学の研究室にて撮影)

ZDNet それでは、さっそくですが「ネットゲームユーザーは社交的で、オタクではない」(記事参照)と主張された点をうかがいます。読者からも、さまざまな反響がありました。中でも目についた意見は、“ユーザー本来の人格と、ゲーム世界での人格は異なるのではないか”というものです。

 心理学では、社会での仮面的な人格を「ペルソナ」と呼びますが、ネットユーザーがゲーム内で示した社交的性格も、一種のペルソナと呼べるのではないでしょうか? そして、仮面をはずした現実世界では、いわゆる“社会的ひきこもり”の状態である可能性はないのでしょうか?

池田氏 確かに、ユーザーがゲーム世界で仮面をかぶり、現実と全く別人格を演ずることはあるでしょう。実際、韓国ではゲーム内の恋愛経験が多いようですが(特集第2回参照)、これなどはネカマ(ネット上で性別を偽る男性のこと)が介在しているのだろうと考えています。つまり、特定のユーザーは「異なる性別を演じている」わけです。

 米国では、オンラインコミュニケーションに対し、そうした観点からアプローチした研究も多いようです。私も、(仮面人格を演ずるユーザーが)数としてはあるだろうと思います。

 しかし、現実と仮想空間での“切り替え”を行うのは、やはり難しいでしょう。彼らは毎日3時間、それを半年続けるというペースでゲームをやっています。それだけやっていて、“地”が出ないはずがない。必ず、馬脚をあらわすというか、本性が出てくるものです。たとえば、あるネットコミュニティで粗暴なユーザーは、どこにいっても一貫して、乱暴なもの言いをしているようです。

 日本人は、もともとロールプレイ(特定の役割を演ずる)があまり上手ではない。仮に、それを演じきれるというなら、その人は俳優になれるでしょう。人は、ネット上では別人格になる――と考えすぎると、オンラインコミュニケーションの本質を見失います。

ZDNet しかし、そうはいってもネット上の“自分”は、脚色しやすいものです。現実世界では、容姿や、知性、特定のスポーツの修錬度などによって、人物の評価が定まるケースが多いでしょう。しかし、リネージュに関していえば、まず容姿は自由に選択できます。長くプレイすれば、ゲーム世界に関する知識も増えますし、またキャラクターの肉体的強度も向上します。

 そうなると、現実には自己実現できないでいる自分と、ネット上の人格とが、乖離してくるケースもあると思いますが?

池田氏 確かに、ネット上では自分が多少コンプレックスに思っていることも、隠すことができます。

 心理学には「スティグマ」(もと、ギリシャ語で『犯罪者に押す烙印』の意味)という言葉がありますが、これは、身体における障害など、社会の中で弱みとなるような特徴のことです。しかし、ネット上ではスティグマが現れない、ということは確実にあります。

 しかし、ネット上では今まで隠していた自分を、出せるようになる傾向もあります。たとえば、自分がゲイであるとか、レズビアンであるとかいった告白は、ネット上での方が行いやすいようです。

 結果として、それによって本人が現実社会に適応していくのに役立つこともあるのです。

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[杉浦正武,ITmedia]



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