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2003/08/28 22:07:00 更新 |
特集:リネージュにおける社会心理学的考察
ネット上で、人は完全な別人格になれない――池田教授 (2/2)
ZDNet 研究手法について、少しうかがいます。今回の調査では、アンケート形式でデータ(標本)を集めたと聞いていますが、その標本の抽出方法を教えてください。
私も大学時代、心理学を専攻していましたが、心理学の研究ではしばしば、推測統計学を用いてデータを分析します。この手法は、極めて厳密に運用しなければ再現性がなく、客観的根拠に乏しいものになってしまうと思うのですが?
池田氏 まず、私の研究室では推測統計学をかなり“うるさく”使っています。学部生レベルの卒業論文でも、知人にアンケートをとるようなデータ集計は認めていません。一般人のデータが必要なら、たとえば杉並区に公的に調査依頼を出すなどして、ランダムサンプリング(=無作為抽出)を実践しています。
しかし、ネットではランダムサンプリングが難しい。特にインターネットユーザーの“母集団”は決めにくいというのが実情です。
リネージュの調査では、「アンケートに答えてくれたユーザー1500人に、WebMoneyをプレゼントする」という主旨の告知を、リネージュのサイト掲示板などで行いました。この結果、1362人の有効回答を得ています。
ただ、この募集は早いもの勝ちだったため、比較的ヘビーユーザーが目ざとく見つけて、応募してしまった可能性はあります。ランダムサンプリングとは、言えません。もっとも、韓国でも同様の条件で募集を行っているため、“日韓の比較”を行う上では問題ないものと考えています。
ZDNet 最後になりますが、もう1つ読者の指摘を代弁します。ネットゲームユーザーの中には、中毒症状を起こしたように長時間プレイする人間がいるという事例も、複数報告されています(「86時間連続ネットゲームで死亡?」参照)。
こうしたユーザーは、現実からの逃避行動として、ゲームを選択しているように見えます。ネットゲームユーザーが必ずしも社交的でない、という1つの証拠になりませんか?
池田氏 もちろん、そういったユーザーの存在を、私は否定しません。ただし、ユーザーの大半がそのような行動をとるわけでもないでしょう。
リネージュでは、1日2〜3時間プレイするユーザーもいれば、10時間、ときに24時間プレイするユーザーもいます。しかし、24時間プレイする人間というのは集団の中の“外れ値”です。どのグループにもあるものですが、全体像とは関係ありません。
昨今のネットゲームをめぐる報道でいえることですが、たまに異常なネットゲームユーザーを発見すると、すぐに「ネットゲーム全体が危険だ」という議論になってしまう。これは、よくないと思います。
私は、「やってみればいいじゃないか」と思っています。(全員が中毒に陥るのではなく)いずれ飽きてくるユーザーもいるでしょう。少なくとも、出会い系サイトに群がる人々に比べれば、彼らの危険度は低い。
ネットゲームの世界は、オープンな社会です。もっと、社会的な側面にも関心持ってほしいですね。
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[杉浦正武,ITmedia]