リビング+:特集 2003/10/17 23:59:00 更新

特集:最新ヘルスケア商品事情
第3回:体脂肪計ではありません、体組成計です〜オムロンヘルスケア「カラダスキャン」

テレビに健康番組があふれ、情報が増加するとともに、体重計に求められる機能も変わってきた。最近では「体組成計」と呼ばれ、「体脂肪率」から「基礎代謝」「BMI」そして「筋肉率」など、さまざまな指標をユーザーに提示してくれる。しかし、これらの数値は一体どのように算出されるのだろうか?

 体脂肪計が世の中に登場したのは10年ほど前。計測器メーカーのタニタとオムロンがほぼ同時に製品をリリースした。ダイエットといえば体重計を片手にがんばるのが当たり前だった当時、「体重」ではなく、「脂肪を減らしましょう」という提案が、斬新かつ画期的だったことは間違いない。現在、年間300万台といわれるヘルスメーター市場において、体脂肪計は半数の約150万台を占めるにまで成長したのだ。

 そして2003年、かつての体重計は、身体を構成する個々の要素まで計測し、ダイエットに役立てる機械へと進化している。これが“体組成計”と呼ばれるもので、オムロンヘルスケアの「カラダスキャン」シリーズ、タニタの「インナースキャン」シリーズなどがある。メーカーによって多少の違いはあるものの、その多くは筋肉量や基礎代謝量を測る機能が付加された。

“減らす”ダイエットから“増やす”ダイエットへ

 オムロンヘルスケア商品事業統括部肥満ソリューション課グループリーダーの小川浩司主事は、「ダイエットで、なぜリバウンドが起こるかといえば、ダイエットで筋肉量が落ちるからです。仮に、それまで一日2000キロカロリー摂取していた人が1500キロカロリーまで落としたら、身体がそれに合わせてしまうのに気が付かない」。

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オムロンヘルスケア商品事業統括部肥満ソリューション課グループリーダーの小川浩司主事

 筋肉が落ちれば、それだけ基礎代謝量が減る。基礎代謝量とは、心臓の鼓動や呼吸、体温維持など生命を維持するために必要な最低限のエネルギーのことで、基礎代謝が全代謝の中で占める割合は7割におよぶ。中でも、筋肉が消費する部分は約22%ともっとも大きい。

 筋肉が落ちたところで食事の量を戻せば、余ったカロリーが脂肪に変わるのは必然だ。「筋肉は、脂肪の数倍という代謝を行います。ダイエットを考えるなら、食事を減らす前に筋肉を増やすことが大事でしょう」。

 最近では、テレビの健康番組などが取り上げたこともあり、「“減らす”ダイエットから“増やす”ダイエットへ、認知が広がっている」という。筋肉量の測定は、より健康的なダイエットを心がけるうえで重要であると心得よ。体脂肪計が体組成計へと変化した背景には、そんな追い風があったことも見逃せない。

体組成計の仕組み

 カラダスキャンシリーズには、3つのラインアップがあり、エントリーモデルの「HBF-352」は「体重」「体脂肪率」「基礎代謝」「内臓脂肪レベル」「BMI判定」(ボディ・マス・インデックス:体格指数)を測定可能だ。ミッドレンジモデルの「HBF-353」は、これらにくわえ、基礎代謝から独自に計算する「体年齢」を導き出す。そして上位モデルの「HBF354」は、体年齢のほか「筋肉率」も計算してくれる。だが、そもそもこれらの数値はどのように計測できるのだろうか。

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写真は「HBF-353」。ハンドル部を持ってケーブルを引き出し、足を本体に乗せて立った状態で計測する

 現在の体脂肪計で一般的に使われているのは、「生体インピーダンス法」だ。ITな読者にはお馴染みの電気抵抗である。つまり、人間の身体に微弱な電流を流し、電気の流れにくさを測定。水分を多く含む筋肉(約70%が水分)は電気を通しやすく、脂肪は通しにくいという特性を利用し、体脂肪の量を導き出す。抵抗が小さければ体脂肪率が低く、大きければ脂肪が多いと判断されるわけだ。

 カラダスキャンシリーズでは、液晶ディスプレイの付いたハンドル部分を両手で持ち、本体に足を乗せて計測する。ハンドル部は伸縮するコードで本体とつながっているため、身体を伸ばした状態で計測できる。

 「カラダスキャンのメリットは、両手両足の先から電気を流すため、体全体を測定できること。例えば両手だけで計測する機械もありますが、それでは下半身が反映されず、下半身デブなのに体脂肪率は低いといった結果が出ます。逆に両足だけで計測する場合は、胸やお腹の脂肪や筋肉が反映できない」。

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液晶ディスプレイは上下に分かれており、メモリ内のデータと比較できる。写真は現在の筋肉率を上に、90日前の数値を下に表示したところ

 体脂肪や筋肉量が計測できれば、統計データから標準的な基礎代謝量が割り出せる。このあたりの指標は、各メーカーが独自に計測・分析したもので、企業機密に属する部分だという。「厚生労働省の指標もありますが、これは単純に日本人の平均値を割り出したもので、個人レベルでみればバラツキがあります。各種のデータから、これを実際の体組成に近づける部分が重要になる」。

 また、BMIは体重(キログラム)を身長の二乗(単位はメートル)で割ったものであるため、体重測定の結果と、事前に入力した身長から導き出せる。日本肥満学会の基準によると、このBMIが18.5未満は「低体重」(痩せている)、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上だと「肥満」に分類されるという。なお、理想的なBMIは22であり、統計データから「もっとも死亡率が低い」のだそうだ。

 もう一つ、カラダスキャンのユニークな機能が「体年齢」。基礎代謝などのデータから、やはり統計から割り出した数字に照らし合わせて算出するものだ。

 ちなみに、記者が実際に計測させてもらったところ、実年齢と変わらない数字になった。記事的には「おいしくない」展開だが、思わずほっと胸をなで下ろしたものだ(おいしい記事はこちら)。

携帯電話と連携も?

 体重計から始まり、いまや体組成計にまで進化したヘルスメーター。では、次に追加される機能は何だろうか。小川氏は「さまざまな指標が並ぶ中で、その意味を理解できる“わかりやすさ”が必要になる」として、ユーザビリティの向上を挙げた。「将来的には、測定結果を用いてユーザーをナビゲートする機能も考えられるでしょう」。

 カラダスキャンシリーズには、同社の体重計としては初めて、上位2モデルにメモリが内蔵され、最大90日間×2人分の測定結果を保持できるようになった。しかし、比較のために表示できるのは、7日前、30日前、90日前の3パターンのみ。現在の処理チップや液晶画面では、グラフ化などリッチな表現は不可能だ。

 体重計や体脂肪計の価格帯を考慮すると、今のところカラー液晶や高速なCPUは望めない。ならばパソコンなどIT機器との連携も視野に入るだろう。事実、タニタでは体脂肪計や血圧計などをワイヤレスでPCに接続し、生活習慣病などの予防に役立てるオンラインサービス「ヘルスプラネット」を展開している。ただし、価格は6万4800円と、ちょっと高価(もちろんPCやインターネット接続料金は別)。少なくとも、ダイエットしたい女子高生が購入できる値段ではないだろう。

 「課題は、外部との通信手段を実装するためのコスト。それが解決できれば、例えばPCや携帯電話の画面を利用したグラフィカルな表示やオンラインサービスも視野に入ってくるでしょう」。とくに携帯電話は、ヘルスメーターのある場所まで簡単に持ち運べる手軽さもあり、魅力的なデバイスだという。

 携帯電話片手に浴室に入り、体脂肪をチェック。ダイエットに成功したら、グラフ化した測定結果を友達にメールして自慢しあう……そんな未来が近づいているのかもしれない。

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関連リンク
▼オムロン ヘルスケア
▼ニュースリリース(オムロン ヘルスケア)
▼タニタ
▼ヘルスプラネット(タニタ)

[芹澤隆徳,ITmedia]



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