リビング+:特集 2003/10/15 20:09:00 更新

特集:最新ヘルスケア商品事情
第1回:空間を変える便座〜INAX「Satis」

部屋の中にも置ける全自動トイレ、気持ちよくダイエットできる風呂、そして“カラダ年齢”まで算出してくれる体重計……今回の特集は、ちょっと趣向を変えて最新のヘルスケア商品を取り上げてみたい。最新の理論と技術に裏打ちされたこれらの製品には、パソコンや携帯電話とはちょっと違う“ハイテク”が詰まっているのだ。

部屋の中にも置ける全自動トイレ、気持ちよくダイエットできる風呂、そして“カラダ年齢”まで算出してくれる体重計……今回の特集は、ちょっと趣向を変えて最新のヘルスケア商品を取り上げてみたい。最新の理論と技術に裏打ちされたこれらの製品には、パソコンや携帯電話とはちょっと違う“ハイテク”が詰まっているのだ。
第1回空間を変える便座〜INAX「Satis」
第2回半身浴よりも進んだ“発汗浴”って何だ〜TOTO「furopia」
第3回体脂肪計ではありません “体組成計”です〜オムロン「カラダスキャン」

 一般的には馴染みは薄いが、便座の世界でヒット商品の目安とされているのが、“発売から4年以内に10万台”という数字だ。しかし、INAXのタンクレストイレ「satis」は、2001年の発売以来、これを1年10カ月で達成したという。高層ビルの建築ラッシュに時期が重なったこと、住宅ローン減税やリフォームブームなど時流に乗ったこともあり、同社としては“異例のヒット”と呼べる商品に成長したのだ。たとえば、最近話題の「六本木ヒルズ」では、居住エリアのほとんどにsatisが設置されているという。

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INAXのタンクレストイレ「satis」シリーズ

 しかし、家庭向け便座の中ではハイエンド商品に位置するsatisは、価格も21万円からと“それなり”に高く、単に需要が増えただけで売れる類の商品ではない。satisがヒットした背景には、単に高機能というだけではなく、“デザイン”をキーワードにした緻密なブランディングがあった。

 その仕掛け人が、INAX設備事業部トイレ空間商品部の高野秀士氏だ。「デザインディレクター」の肩書きを持つ高野氏は、企画時からsatisにかかわり、デザイナーの立場からプロジェクト全体を見渡してきた。

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INAX設備事業部トイレ空間商品部デザインディレクターの高野秀士氏

トイレの歴史は水圧との闘い

 高野氏によると、「satis」の由来は「satisfaction」(満足)という。トイレに求められるものをすべて満足させることを目指し、機能性とデザインの両面から一歩進んだアプローチを見せている。その最大の特徴はシンプルなタンクレス型の外観だが、そもそも、どのようにしてタンクをなくすことができたのだろうか。

 「トイレの進化の歴史は“水圧との闘い”だ。古い水洗トイレを見ればわかるが、当初は人間の頭よりも高い場所にタンクを置き、重力を利用して水の勢いを得ていた。それがだんだん低くなり、今は便座よりも少し高い位置にあるのが普通だ」(高野氏)。

 社会インフラの発展とともに、水道管の水圧も上がり、水の勢いを得る装置としてのタンクは必要なくなった。しかし、地域やトイレの場所など設置条件はさまざまで、今度は水圧を“一定に保つ”ための仕組みが必要になったという。現在、一般家庭のトイレにロータンク(低い位置にあるタンク)が使われているのはこのためだ。

 タンクレストイレが登場したのは、“ダイレクトバルブ”と呼ばれる、水道管の水圧を抑制しながら一定の水圧で直接給水するためのバルブが実用化されたため。ただ、satisが登場した2001年当時、市場には既にタンクレストイレがあった。競合のTOTOが、一足先に製品化していたのだ。

 しかし、高野氏によると当時の製品は「大きく、高価」であり、広く世の中に出回ることはなかったという。「タンクがなくなったとはいえ、用を足すというトイレの機能は変わらない。では、何がユーザーベネフィットになるかといえば、“省スペース化”だろう。それなのに、便座自体が大きくては意味がない」。逆に、タンクレストイレを普通のサイズで作り、「従来とさほど変わらない値段」で発売したことがsatisの勝因といえそうだ。

 タンクレス化は、実際にはどの程度の省スペース化を実現するのだろうか。satisの仕様をみると、奥行きは約65センチと従来製品よりも15センチほど短いことがわかる。数字を見るとあまり変わらないようにも思えるが、「畳1畳分といわれる日本のトイレにおいて、便座に腰掛けたとき、前方の空間が90センチの場合と100センチ超では随分違う」らしい。逆に、当初からsatisを導入することを決めていれば、トイレのサイズを小さく設計こともできるわけで、「設計の自由度を高めた点が、建築業界に支持された理由でもある」という。

需要の高かった脱臭機能

 Satisといえば、シャープが開発した「プラズマクラスターイオン」を搭載したことでも知られる。「多機能化するトイレにあって、利用者の要望が多かったのが“脱臭”機能。そこで関連技術をリサーチしていたとき、一番インパクトがあったのが、シャープのプラズマクラスターイオンだった」(同氏)。プラズマクラスターは、プラズマ(放電現象)を利用して生成したイオンの周りに複数の水分子を凝集させる技術だ。水分子が集まった状態がクラスター(葡萄の房)に似ていることから、この名称が付いた。

 通常、イオン発生器などで作り出したイオンは、空気中で非常に不安定になりがちだが、水分子を凝集させたイオンは安定し、部屋の隅々まで広がるのがメリット。そして、臭いの元となる空気中の浮遊菌(カビ)などを分解・除去してくれるのだ。シャープが実施した実験結果では、空気中の浮遊カビ菌を実に99.5%除去したという。また最近では、プラズマクラスターイオンがウイルスを不活性化するといった研究成果も発表され、再び注目を集めた(詳細は昨年9月の記事を参照)。

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プラズマクラスターイオン発生器が内蔵されている部分。もともと温風装置が組み込まれている場所を流用したため、プラズマクラスターイオンと温風装置は排他となる

 このほかにも、satisには贅沢と思えるほど多くの機能が付いている。人が近づけば赤外線センサーが反応して便座が開き、青い「ほのかライト」が点灯。用を足したあとは自動的に水が流れる。しかも、人が座っていた時間で“大”か“小”かを判断し、水量まで調整してくれるのだ。参考までに数字を挙げておくと、流れる水の量は、小の場合が約6リットル、大の場合は約8リットル。着座センサーは座っている時間を1分間で区切り、それより短ければ“小”、長ければ“大”と判断するという。

 もちろん、トイレにそんな機能は必要ないという人も多いだろう。実際、日本の高機能便座を報じた米国のニュースでは、「トイレにハイテクはいらない」と酷評されたこともある。

 だが、介護用途を想定すると、自ずと認識は変わるはずだ。高野氏によると、高齢者や要介護者が夜中のトイレで事故に遭う原因の多くが、寝室との温度差だという。暖かいベッドから出て寒い廊下に出るとき、急激な温度の変化が体に負担を与え、血圧や血流量が上下してしまう。そこで、INAXのカタログには、寝室の中、あるいは隣接したスペースにsatisを設置する施工事例を紹介している。

 「人が近づくと開き、明かりが灯る便座があれば、ベッドから降りただけですぐに場所が分かるだろう。また、プラズマクラスターイオンユニットの脱臭機能は、6畳間をカバーする能力がある」。

 寝室の中に便座を置くという発想はなかなか大胆だが、トイレに関するバリアフリーの考え方としては確かに有効だろう。需要は未知数ながら、少なくともsatisがそうした用途に対応する機能とデザインを持っていることは確かだ。

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赤外線センサーは便座に向かって左側奥にある。

デザインディレクターのお仕事

 意外なことに、「INAXが便座にブランド名を付けたのはsatisが初めてだ」という。また、外観やカタログの表紙にINAXロゴが入らない商品も初。これまでの同社製品なら、一番目に付きやすい場所に「INAX」のロゴマークが入っているのが常だが、satisの場合は便座の蓋部分に「satis」バッジが付いているだけ。これは、“satis”というブランドを全面に押し出し、統一したイメージでユーザーに訴求するための手法だという。

 同様の考え方はオプションにも及んでいる。とくにsatisでは新色を採用したうえ、タンクがないために別途手洗い用の洗面器などを設ける必要があり、オプションは豊富だ。手洗い器はもちろん、室内に調和するタオル掛けやペーパーホルダーまで、すべて「統一感のあるトーン」で提供されており、カタログに記載されたオプションを選ぶだけで、トイレという空間全体をコーディネートできる。リハウスならぬ“リトイレ”だ。

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リモコンの例。このほか、トイレットぺーパーホルダーのカバー部分にリモコンを装着したタイプもある

 そのカタログの作りもひと味違う。トイレの専有面積ごとに具体的な施工例を挙げ、写真や図面を多用した提案型のカタログで、内容はまるで新築マンションのカタログか雑誌のよう。さらに、28人のデザイナーがsatisを使って作り出した空間を実例として紹介する“施工作品事例集”も用意した。もちろん、これらもすべて高野氏がプロデュースしたものだ。“デザイン”ディレクターが陣頭に立つ理由が理解できる。

 「デザインは“メディア”だ。製品にしろ、カタログにしろ、見た人に何かを語りかけるものを用意しなければならない。一方、社内的にも営業のセールストークを含め、イメージの統一〜社内的には意志の疎通〜が可能になる。これは、競合他社との差別化という点において非常に重要な意味を持つだろう」。

 決して安くはないsatisが好調な販売を維持している背景には、購入者がカタログなどを通じて、施工業者にイメージを伝えやすくなったことが挙げられるという。これが「指名買い」が増えた理由だ。一方、施工業者としても豊富なオプションによって工事箇所が増えれば収入も増えるわけで、satisは業者の「お勧め商品」になる。こうして、需要を喚起するサイクルが出来上がった。

便座は建築のエレメント

 だが、高野氏が現在のsatisに“満足”しているかといえば、必ずしもそうではないようだ。「satisによって、INAXは“デザインがいい会社”という認識を得た。機能的には行き着いた感があるため、今後は空間の要素を増やすとともに、便座そのもののデザインをブラッシュアップしたい」。シンプルなデザインのsatisだが、「側面からみると、まだ線が多い」というのが課題という。たしかに、側面にはメカニカルな印象を受ける直線が残されている。

 ただし、高野氏は「便座はオブジェとは違う」ともいう。基本的に直線で構成されている部屋の中では、曲線的な便座はもともと目立ちやすい要素を持っている。だが、当たり前のことながら、部屋の中でトイレが存在感を誇示してはならない。

 空間に調和し、自らを主張しないデザイン。なかなか想像しにくいが、高野氏の「便座は、極めて実用的な“建築のエレメント”」という言葉が、その方向性を示しているようだ。

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▼INAX
▼商品情報(INAX)
▼シャープ

[芹澤隆徳,ITmedia]



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