リビング+:特集 2003/06/19 23:59:00 更新

特集:ITでこころ・からだ健康に
バリアフリーとしてのIT技術

障害を持つ人たちにとって、IT技術、インターネットはどのように関わっているのだろうか? 今回はそれを知るため、NPO 日本バリアフリー協会の代表を務める貝谷嘉洋氏の自宅を訪問した。

 障害を持つ人たちにとって、IT技術、インターネットはどのように関わっているのだろうか? 「特集:ITでこころ・からだ健康に」、第4回目の今日は、それを知るためにNPO 日本バリアフリー協会の代表を務める貝谷嘉洋氏の自宅を訪問した。

 日本バリアフリー協会は、社会の障害者へのイメージを明るいものに変えるべく、各種活動を行う団体。たとえば「ゴールドコンサート」と名付けた音楽コンサートでは、障害をもつミュージシャンに実力を競い合うチャンスを与え、“障害を持っていても活躍できる”ことをアピールしている。

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日本バリアフリー協会の貝谷氏。自宅にて。コードレスのヘッドセット(後述)を装着して、仕事風景を再現してくれた

 同協会の代表理事、貝谷嘉洋氏は全身の筋力が低下する難病、筋ジストロフィーのために、十四歳から車いすと全面介助の生活をしている。1993年に関西学院大学を卒業後、米カリフォルニア大学バークリー校の大学院に留学。障害者政策を学んで、現在は「月刊ニューメディア」で連載を持つなど、多面的な活動を行っている。

さまざまな機器を利用

 貝谷氏の自宅では、さまざまな機器が存在する。それらが、肢体不自由である貝谷氏の生活をサポートしているわけだ。

 たとえば同氏は、「立位姿勢を保てる車椅子」やジョイスティックカー(下写真参照)などを扱い、アクティブに活動している。宅内にも工夫が見られ、寝室と風呂場の間にはレールが敷かれていた。この乗り物にぶらさがる形で、風呂場に移動するわけだ。

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駐車場にはジョイスティックカーが。障害者でも手軽な操作で、乗用車を運転できる

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家屋の天井にはレールが。これに器具を接続し、ぶらさがって移動する

「電話もPCも1つにしたい」

 もちろん、インターネットも同氏の生活を便利にするものだ。しかし、具体的にどう活用するか、という点を中心に話を聞こうとしたところ、貝谷氏の口から意外な言葉が返ってきた。

 「特に、普通の方と変わらないんじゃないですか? 確かにインターネットは調べものをするのに便利ですが、それは皆さんもそうでしょう?」

 「コンピュータはもちろん大切ですし、(それで生活が便利になったという)美談もいろいろとあります。ですが、われわれにとって、ネットは人と会うための手段なんです。障害の種類にもよるでしょうが、インターネットができたから障害者が楽になっただろうというのは、ちょっと短絡的過ぎるかもしれません」。

 それよりも、重要な家電製品として、同氏はあるものを挙げる。

 「私にとっては、電話が一番大事なんです。最後は、電話なんです。この使い勝手を飛躍させてほしいんと思うんですよ」。

 「本当は、すべてが一つの箱に入っていればいいと思うんですよ。携帯電話も、PCも、メールもアドレス帳も。電話とPCの相性も、未だに悪いような気がしますね。物理的にも分かれているし……」。そういう意味では、最近話題になっているIP電話が、“PCと電話端末を統合する”技術として切り札になるのではと、期待を寄せた。

電話をかける場合は……

 電話のユーザービリティ向上を求める貝谷氏は、最近よく利用している「おもちゃ」として、米国製のコードレスマイク+ヘッドフォンを見せてくれた。

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 同氏は手が不自由なため、受話器を持ち上げて耳にあてながら、もう一方の手で番号をダイヤルする――という一連の動作が、思うように行えない。しかし、このヘッドフォンを使えば、より容易に電話をかけることが可能になる。

 まず、ヘッドフォンを装着させてもらった上で、PCを起動する。無線のステーション端末とPCはUSB接続してあるため、PCの画面上からソフトウェアキーボードを入力すれば、電話をかけられる。貝谷氏はPCの画面を見ながら、手元にあるコードレスのマウスを操作して、最小限の動きで電話をかけることができる。

 「本当は、(マウスを操作しなくても)Outlookに入っている名前を発音すれば、音声認識で番号入力できるようになっているようですが……、私はOutlookが嫌いなので(笑)」

 同氏が音声認識機能を使わないのには、もう1つの理由がある。ヘッドセット端末で音声認識をオンにするには、耳あてについているボタンを押す必要がある。しかし貝谷氏の場合、そこまで手を上げることが極めて困難なのだ。

 一見すると便利そうに見える機器でも、ユーザービリティに最新の注意を払わなければ、障害者の役に立たないことがある。この点は、メーカーが十分な配慮をする必要があるだろう。

 「この機械も、使えるか使えないかはギリギリのところですね」。

 同氏はほかに、メールも日常で活用している。しかし貝谷氏の場合、キーボード入力にも相当の手間がかかる。「結局、内容を口頭で言って、介護の方に入力してもらうということも多いんです」。

 自分で入力する時はWindowsのソフトウェアキーボードである。特に障害者向けに設計されたものではないが、「ずいぶん慣れました」という。

求めているものは最新技術ではない

 同氏の生活環境には、ほかにも工夫がある。例えば寝室では、寝ながらインターネットを楽しむために機器を配置している。

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 まず、病院用のターンテーブルにアームが設置され、その先にはナナオのディスプレイがある。これにより、寝た状態で仰向けでブラウジングを楽しんでいるのだ。

 「これなしではやってられないという感じです。ホントに便利です。普通の人にとってもおすすめですよ。これだけインターネットが普及すれば、ブラウザなんて、どういう状態でも見られるべきじゃないですか。これはすごい快適ですよ」

 貝谷氏は、障害者にとってIT技術の「画期的な進化」は必要ないと話す。

 「それよりもっと、使い易くしてほしいということです。求めているものは、最新の技術ではないんですよ。ローテクなんです。先ほどのヘッドセットにしても、電話とUSBをつなぐなんていうのは、5年前に実現できているはずです。私が運転しているジョイスティックカーも、20年前の技術です。ちょっと応用してくれれば、使う人も増えるし、安くなるはずです。『どうして技術をもっとうまく利用してくれないのか』と思うことが多いんです。」

 貝谷氏は、世間の人々の意識を変えたいと話す。「ちょっと意識を持って、技術を障害者向けに応用してもらうだけで、助かるんです。技術が障害者側に回ってこないと、もちろんわれわれも苦労するわけですが、社会にとっても介護の手間や、ストレスの要因になるでしょう。お互いにとって、不幸なんです。そこを合理的に考えればいいと思って活動しています。普及すればコストも下がりますしね」。

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関連リンク
▼日本バリアフリー協会
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[姉歯康,ITmedia]



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