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2003/11/10 23:59:00 更新 |
バッファロー、“ワンタッチの無線LAN”でネット家電に参入
PCやネット家電を無線LANで接続したいが、セキュリティの設定は面倒だ。バッファローが発表した「AirStation One-Touch Secure System」(A.O.S.S)は、無線LANのセキュリティをワンタッチで自動設定してくれる
バッファローは11月10日、「AirStation One-Touch Secure System」(A.O.S.S)と呼ばれる無線LANの新技術を発表した。A.O.S.Sは、無線LANのセキュリティをワンタッチで自動設定できる仕組み。自社のルータ製品などに標準搭載するほか、ブロードコムの無線LANチップ「BMC4317」と合わせてほかの周辺機器ベンダーや家電メーカーへも供給し、「ネット家電のデファクトスタンダードを目指す」(同社の牧誠社長)。
バッファローの牧誠社長
通常、無線LANでWEP暗号を利用するためには、キーボードでWEPキーを入力する必要があるが、キーボードのない家電製品でこれを設定するのは難しい。「ホームネットワークの主流が無線LANになるという点において、メーカー各社の意見は一致している。しかし、PCに詳しくないユーザーも利用するネット家電では、セキュリティ設定の困難さとサポートの難しさにより、ジレンマが生じている」(バッファロー、ブロードバンドソリューションズ事業部長の西岡孝行氏)。
このジレンマを解消しようと、メーカー各社は独自のアプローチを展開している。たとえばソニーの無線ルータ「CarrierGate」は、ルータと子機を最初に有線LANで繋ぎ、子機側に設定をコピーする機能を搭載した。また、松下電器産業でもWEPやESS-IDの設定をボタン1つで子機にダウンロードできるルータ「ホームネットワークステーション」をラインアップしている。
しかし、当然これらの機能には互換性がない(PCで設定すれば接続は可能)。現在はまだ問題になっていないものの、ネット家電が普及し、無線LANが内蔵された機器が宅内に複数あるようになったとき、対応が難しくはずだ。家電メーカーが独自技術を他社に供与する可能性は低く、またユーザーが同じメーカーの家電やPCだけをそろえるとも考えにくい。
A.O.S.Sの機能
A.O.S.Sの特徴は、設定の容易さと汎用性を併せ持つ点だ。ワイヤレスの状態で設定を合わせることができるほか、後からワイヤレス機器を追加しても自動設定が可能になる。
設定時には、まずAirStationとネット家電(もしくは家電のイーサネットポートに接続された無線アダプタ)のボタンを押す。するとアクセスポイント側は、一定の時間だけ「特殊な暗号化モード」に入り、一番近くにあるネット家電やアダプタを自動検出するが、このときAPは故意に無線出力を最低レベルまで落とす。意図しないクライアントをネットワークに加える危険性を避ける仕組みだ。
設定時のインタフェース
A.O.S.Sの仕組み(クリックで拡大)。64/128ビットのWEPはもちろん、TKIPやAESなど最新技術もサポート
クライアントを確認すると、暗号鍵をやり取りし、APとクライアントのセキュリティレベルを合わせた形で設定を行う。たとえば、ルータ側は128ビットWEPを使えるが、アダプタ側は64ビットWEPしかサポートしていない場合は、自動的に64ビットに合わせて設定が行われる。WEPキーは独自のアルゴリズムで生成され、個々のアクセスポイントは完全にユニークなキーとなる。「ユーザーは暗号キーを意識する必要はない。ボタンを押すだけで、30秒以内で暗号化と接続設定が可能になる」(同社)。
さらにクライアントを追加した場合にも、全クライアントの暗号化レベルを調べ、すべてのクライアントが利用できる規格を使って自動設定を行う。その際、新たに加えられたクライアントはもちろん、ほかの機器も自動的に設定が更新されるという。
設定手順
一方、PCからAirStationの管理画面に入れば、各クライアントのMACアドレスや暗号化キーの文字列を確認できるため、ノートPCに内蔵された無線LANカードなど、A.O.S.S非対応のクライアントを追加したい場合でも同じ設定が行える。もちろん、MACアドレス制限などほかのセキュリティ機能を併用することも可能だ。
ネット家電のビジネススキーム
バッファローはまず、自社の既存製品のA.O.S.S対応を進める。2003年12月上旬をめどにIEEE 802.11g対応のブロードバンドルータ「WHR2-G54」、メディアコンバータ「WLI-TX1-G54」の2機種に向けて新しいファームウェアをリリース。これを手始めに、2004年2月までに計6機種がA.O.S.Sをサポートする予定だ。なお、既存製品でA.O.S.Sの設定を行う場合は、従来のリセットボタンが設定ボタンとなる。
既存製品の対応ロードマップ
次に、ブロードコムの超小型無線LANチップ「BMC4317」を採用した無線LANモジュールとA.O.S.S対応のファームウェアをセットにした「A.O.S.S開発キット」をリリース。家電メーカーやPC周辺機器メーカーに提供する一方、各種のCPUやOSへの対応を進める。「将来的には、Centrino対応のファームウェアなども提供したい」。これにより、家電メーカーは、ワイヤレス対応のネット家電を短期間で開発できるという。
「BMC4317」のコンパクトフラッシュ向けサンプルボード。BMC4317は小型・低消費電力のIEEE 802.11b無線LANチップ。ブロードコム製Bluetoothチップと連携して干渉を抑える仕組みもあるが、バッファローはむしろ「Bluetoothのマーケットを食うもの」と位置付けている。「Bluetoothのメリットは、ホームネットワークなどグループ化された無線機器に新しい機器を持ち込むときの利便性。A.O.S.Sにより、無線LANは同じ機能を持つことになる」
もう一つ、家電メーカーにとって大きなメリットとなるのが、ネットワーク関連のサポート業務をバッファローに依託できることだ。同社は、ネットワーク関連のサポート業務を請け負うアウトソーシングサービス「BSAマルチメーカーサポートアライアンス」(SA)を拡張し、2004年第2四半期から、家電ネットワーク関連のサポート業務を提供する計画。これには、電話サポート、訪問設定サポート、訪問アフターケアなどが含まれる。
事業計画スケジュール
バッファローの牧社長は、「地上デジタル放送が年末に開始されると、すべてのデジタルテレビにイーサネットポートが付く。これは、ネット家電の市場が形成される“起爆材”となる」と指摘。このタイミングを逃さず、無線LANの簡単設定と相互接続性を保証することで、ネット家電のワイヤレス化が促進されると話している。もちろん、同社はチップの販売とサポートの両面で事業を拡大できるという筋書きだ。
「A.O.S.Sの発表は、バッファローがネット家電に参入することを意味している。ワイヤレスソリューションの水平展開により、われわれは、“デファクトスタンダード”を目指す」(牧氏)。
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[芹澤隆徳,ITmedia]