リビング+:レビュー 2003/11/11 03:05:00 更新

レビュー:ソニー「PCVA-HVP20」
バイオだけじゃもったいない? 実用的なポータブルビデオプレーヤー

ソニーから“バイオ”周辺機器として「PCVA-HVP20」が登場した。20GバイトのHDDを内蔵し、MPEG2の再生が可能なポータブルビデオプレーヤーだ。しかし今回は、こういった製品にありがちな目新しさより、実用性を重視した製品である点に注目したい。

 「PCVA-HVP20」は、バイオ専用の周辺機器として登場したポータブルビデオプレーヤーだ。テレビ録画機能を持つバイオの「GigaPocket」と連動し、録画したビデオを手軽に持ち出して場所をとわず再生できる。

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前面下部の「VAIO」ロゴがバイオ専用の周辺機器であることを主張する

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ACアダプタはPC向けと比較するとコンパクトだが、携帯用とまではいえないサイズ。各種ケーブルやストラップのほか、ソフトケースも付属する

 20GバイトのHDDを内蔵し、追加投資なしで長時間のビデオを記録できる。PCとの接続はUSB2.0で、録画時のビットレートにもよるが再生時間の数分の1程度の時間で、録画した番組をPCから転送可能だ。もちろん、USB1.1で接続することもできるが、この場合は転送速度が大幅に制限される。

 また、単純にポータブルHDDとして、さまざまなデータを保存して持ち運ぶことも可能だ。USBストレージクラスに対応しており、Windows XP/2000/Meではドライバレスで認識される。接続ケーブルも汎用性のあるmini USB仕様なので、たとえば自宅と勤務先にそれぞれ接続ケーブルを用意しておくと便利かもしれない。ただし、HDDとして認識されるのは、ACアダプタを接続し、電源をOFFにした状態に限定されるので、その場合にはACアダプタも追加購入する必要がある。

 価格は5万円前後(オープン価格)を予定しているが、トータルでみれば決して高くはないだろう。専用機やPDAなどでのモバイルビデオ再生も注目を集めつつあるが、多くの製品が記録媒体としてシリコンメディアを採用しているため、実用的に使おうとすると(たくさんの動画ファイルを持ち歩く場合)数万円単位の追加投資が必要になる。SDカードやメモリースティックは512Mバイトでも3万円前後、1Gバイトの製品となればゆうに5万円を超えるのだ。

 サイズとしては概ねPDAと同等だが、厚みは最厚部で28ミリと結構厚い。片手で保持すること自体は容易だし、300グラムという重量も「重い」という感じは受けない。しかし、手の小さな女性などはちょっと持て余す大きさという感じもするし、長時間立ったまま視聴スタイルを保持するのは辛そうだ。こういった点では、シリコンメディアを使うシャープの「日本語MT-AV1」、松下電器産業の「SV-AV35」といったモバイルビデオプレーヤーに比べて見劣りする。

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電源スイッチは左側面。左手で保持する場合親指で容易に操作できる

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右側面にはAC入力、miniUSBコネクタ、AV出力が並び、下部にストラップホルダがある

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ヘッドフォンジャックは本体上部にある。側面から見ると上部のほうが薄くなっているようなデザインだが、実際には厚みはさほど変わらない

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標準的なPalmサイズの「IBM WorkPad C3」、筆者のザウルス「SL-C760」と比較。こうやって見るとそれほど大きいわけではないことがわかる。Lバッテリーが標準のSL-C760とは厚みもそれほど変わらない

 機能はかなり割り切ったもの。従来のポータブルビデオプレーヤーが、静止画や動画の撮影機能、シリコンオーディオプレーヤー機能などを兼ねることが多いのに対し、PCVA-HVP20は動画再生機能のみだ。

 バッテリー動作時間はカタログスペックで4時間となり、たとえば往復の通勤に1時間ずつ、昼休みに1時間使ってもまだ余裕がある。MT-AV1が1時間(拡張バッテリーケース併用で2時間)、SV-AV35が2.5時間程度ということを考えれば、実用性は高いといえるだろう。

 ディスプレイも3.5インチと大きい。テロップはもちろん、映画でもテレビ放送される場合は字幕が大きめなので、本製品のディスプレイなら十分視認できる。番組のオープニングやエンディングのスタッフロールなどはちょっと読みにくいが、こちらも文字認識が不可能というレベルではない。

 ディスプレイがテレビ的な絵作りである点も嬉しい。PDAなどのディスプレイは、確かにシャープだが色使いが今ひとつクールなのに対し、PCVA-HVP20は“色のり”がリッチで、よりテレビ感覚。また、バックライトも非常に明るく、日中の屋外でも視認性は十分だ。この点は、動画再生に機能を絞り込んだ専用機の大きなメリットといえる。

MPEG2/1対応+HDDで手軽さを最優先

 既存のポータブルビデオプレーヤーは、その多くがMPEG4もしくはMPEG4に準じた独自フォーマットを使っている。しかし、本製品はMPEG2/1のみだ。同程度の画質で比較するとファイルサイズが大きくなりがちだが、この点は20GバイトのHDDで十分カバーできるという考え方だろう。実際、4MbpsのMPEG2でも10時間近くの動画を保存できるのだから、無理に高圧縮なMPEG4を採用する必要はないともいえる。

 現時点でMPEG2/1をサポートするメリットは大きい。同社の「バイオ」シリーズを含め、PCでのテレビ録画は事実上MPEG2が標準だから、ファイル転送するだけで再生できる。実際には付属の「ビデオ転送マネージャー」に動画ファイルをドロップする形になるのだが、MPEG2/1で録画されたファイルは拡張子が変更され、同時に管理用のファイルがいくつか作成されるだけ。4Mbpsで約1時間録画された2Gバイトの動画ファイルを転送してみたところ、実測で14分程だった。

 バイオの「GigaPocket」では、予約情報(ビデオカプセル)をドロップしておけば、録画後の転送まで予約できる。動画ファイルの転送は、毎日決まった時間に自動実行させることも可能。本機をPCに接続しておき、転送の自動実行時間を早朝に設定しておけば、朝出かける前には予約録画した番組も転送されているという寸法だ。

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これが「ビデオ転送マネージャー」。GigaPocketのプラグインなどではなく、単独で動作するアプリケーションだ。転送可能な動画ファイルをドロップし、ファイル転送ボタンを押すとPCから本製品への転送が実行される。

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接続時の自動転送、日々決まった時間の転送、Windows起動時の自動起動なども設定できる

 再生可能な動画フォーマットはMPEG2/1のみだが、「ビデオ転送マネージャー」ではAVI、WMVフォーマットのファイルを自動的にMPEG2にエンコードしながら転送する機能も備えている。AVIフォーマットは「DV形式のみ」としているが、実際にはDivx5.1でエンコードされたファイルも転送することができた(もちろん保証範囲外)。Windows Media Playerで再生可能なファイルなら、結構いけそうだ。

 もっとも、MPEG2/1以外のファイルの転送はお世辞にも高速とはいえない。ソフトウェアでリアルタイムエンコードしているのだから当然なのだが、Pentium4/1.8GHzのPCでは25分のAVIファイル(Divx5.1でエンコード)の転送に40分程かかった。また、どんなファイルでも一律720×480ピクセル、4MbpsのMPEG2でエンコードしてしまうので、ファイルサイズも大きめになる。MPEGエンコード環境を持っている人なら、事前にMPEG2/1にエンコードしてしまった方が良いだろう。本製品のディスプレイで楽しむぶんには、MPEG1のビデオCDフォーマット(352×240ドット、約1.1Mbps)程度でも十分だからだ。

 MPEG2フォーマットのサポート範囲は広そうだ。MPEG2では、720×480/704×480(D1)、352×480(HalfD1)、352×240(CIF)、480×480(SuperビデオCD)の再生を確認できた。ハードウェアデコーダーを搭載しているので、民生機やPCのハードウェアMPEG2エンコーダーがサポートする解像度は概ね問題なく再生できるようだ。なお、筆者が利用した動画ファイルは主にカノープス「MTV-1000」で録画したもの(バイオじゃなくてすみません)。

 さらに、筆者がDVDビデオ化したDVDメディアのVOBファイルも、そのままドロップするだけで転送可能だった。音声コーデックがドルビーデジタルAC3でも問題なく再生可できる。したがって、既にDVDビデオとしてライブラリ化している動画の再生も簡単。DVDビデオのVOBファイルは1Gバイト単位で分割されているため、単純にファイルコピーで任意の部分だけを取り出すことは難しいが、一部のビデオ編集ソフトなどを利用すればチャプター単位で高速に切り出すことも可能だ。

 ただし、VOBファイルの場合は再生時のアスペクト比が反映されなかった。例えば16:9などで収録されたDVDビデオでは、横が圧縮された映像になる。最初から“サポート外”の使い方なので、仕方ない部分だ。

 なお、PC用のテレビチューナーカードではサポート例の多い640×480(VGA)、320×240ドットは転送不可能となった。また筆者がDivxでエンコードしたワイド画面仕様の640×360ドットのファイルを、そのまま同じ解像度でMPEG2にエンコードしたファイルも、やはり転送不可能であった。サポート範囲が広いとはいえ、基本的には民生機レベルでサポートしている解像度に限定されるということだろう。

ポータブルビデオプレーヤーとしての優秀な使い勝手

 操作系はシンプル。そもそも動画再生だけに機能を絞っているだけに操作は簡単で、不満もない。基本的には、再生リストから動画ファイルを選択、再生開始、さらに早送り/巻き戻し再生までスティック操作だけで行える。再生中にいきなり電源を切っても大丈夫だ。

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前面下部に操作系は集中しており、中央部のスティックで多くの操作が可能。機能がシンプルなだけに操作系もシンプルだ

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タイトルリストは8行ずつと一覧性も十分。スクロールではなくページ単位で切り替わる。並び順にはタイトル名以外に日付順なども可能だ

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再生中でも設定作業が可能。設定作業が終わると再生が再開される。周囲の明るさに応じてバックライトの調整を行う場合になどには便利だ

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音声は2カ国語番組などに対応するため片チャンネルでの再生なども可能だ

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内蔵HDDの空き容量なども確認できる

 早送り、早戻し再生もサポートしており、最初の10秒間は10倍速、それ以降は30倍速で再生される。再生状態からの移行には数秒のタイムラグがあるが、気になるレベルではない。早送り、早戻し中の再生画面もスムーズかつ実用的で、このあたりも可変速再生を苦手とするMPEG4ではなく、MPEG2/1を選択したメリットといえるだろう。

 ただ、CMなどを飛ばそうとすると、ちょうど30倍速に移行した直後に本編に戻ったりする。30倍速へ移行するタイミングが、再生時間としては100秒後なので、120秒間のCMだとけっこう重なってしまうのだ。30倍速へ移行するタイミングを任意に設定できると、さらに使い勝手が向上すると思える。

 便利なのは「続きから再生」という機能だ。動画ファイルごとに以前の停止位置を記憶しており、続きからすぐ再生できる。再生中に電源を切ると、次の電源投入時には「続きから再生」がすぐ選択できるようになっており、ちょっとした合間に少しずつ楽しむといった使い方でも不便を感じない。

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タイトルリストからタイトルを選択した場合、再生中に電源を切り、再び電源を投入した場合にはこの画面になる。タイトルごとに以前再生を中断した場所を記憶しており、続きから再生できる

 再生時の画質については、先にも一部触れたが、ディスプレイの絶対解像度が低いこともあってかビットレートによる画質差はあまり感じない。もちろん、高ビットレートなMPEG2は破綻が少ないが、基本的にはビデオCDレベルでもさほどジャギーは目立たず、ブロックノイズもほとんど見て取ることはできない。少なくとも、本機単体で再生するためにMPEG2の高ビットレートで録画する意味はあまりなさそうだ。

 付属のケーブルを利用するとビデオ出力も可能だが、こちらの画質は“今ひとつ”。37インチクラスのワイドテレビに接続してみたが、標準設定のままでは派手な色使いという印象で、色の滲みやブロックノイズも目立った。デコーダーが元々ポータブル向けなのかもしれないし、アナログ回路に無理があるのかもしれないが、ビデオ出力に関しては「過度な期待は禁物」という印象だった。

使えるポータブルビデオプレーヤー

 本製品を一言でいうなら「やっと出てきた使えるポータブルビデオプレーヤー」という所だろう。シリコンメディアを使った製品のように、手軽にポケットに突っ込んで携帯できるサイズではないし、多機能でもない。しかし、代わりに極めて高い実用性を実現している。追加投資が不要(別途記録メディアが不要)という点を考慮すれば、5万前後という価格はリーズナブルといえるだろう。

 反面、クレードルが付属しない点はちょっといただけない。通勤時間だけなら4時間という再生時間でも十分だろうが、日々の充電は欠かせない。となれば、クレードルの存在意義は非常に大きいはずだ。次モデルでは、是非対応を望みたい。

 またバイオ専用の周辺機器として販売されるのも少々もったいない。PCとの接続自体はUSBストレージクラスであり、まず相性問題は発生しない。今回筆者宅の2台のノートPC(いずれもエプソンダイレクト製)、3台の自作PCと接続してみたが、当然のように問題なく利用できた。また「ビデオ転送マネージャー」も問題なく動作した。

 バイオの魅力をより高めるという意味や、サポートなどの事情は理解できるが、魅力的な製品だけに一般的なPCペリフェラルとして販売されることを望みたい。どのみち、世の中の全てのPCでの動作を保証して販売されているPCペリフェラルなど存在しないのだから。

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▼製品情報

[坪山博貴,ITmedia]



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