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2003/11/21 23:30:00 更新 |
抵抗勢力を押し切った 〜携帯定額1x WINのいばらの道
KDDIの提供する、話題のデータ通信サービス「CDMA 1x WIN」。最大2.4Mbpsの高速通信もさることながら、携帯電話サービスで定額制を打ち出したことも、大きな注目を集めている。実現あたっては、同社内でもさまざまな議論があったようだ。
KDDIの提供する、話題のデータ通信サービス「CDMA 1x WIN」。最大2.4Mbpsという高速通信もさることながら、携帯電話サービスで定額制を打ち出した(記事参照)ことも、大きな注目を集めている。実現にあたっては、同社内でもさまざまな議論があったようだ。
11月21日のEC研究会には、KDDIのau事業本部、1xEV-DO推進室長の重野卓氏が登場。11月28日のサービス開始を直前に控え、サービス開発の経緯などを話した。
KDDIの重野氏。「1x WINは、ケータイ版ADSLだ」
KDDIはこれまで、CDMA 1xインフラ上で、「ムービーメール」や「着うた」といったサービスを提供してきた。中でも着うたは、2003年8月には2000万ダウンロードを達成するなど、「KDDIとしても予測できなかった」(重野氏)ほどのヒットとなった。
ある程度好調な業績を上げていることから、社内では「このまま1xインフラでサービスを提供し続ければいいのでは」との声もあったようだ。「だいたい、2.4Mbpsもの通信速度で、何をやるんだ、と言われた」(同氏)。
しかし、重野氏は1xEV-DOの必要性を強く感じていた。といっても、その高速通信が理由ではない。「ユーザーが求めるのは、まずは低価格な料金だろうという確信があった。(現状の)1xでは、料金面で限界がある。今後のサービスのリッチ化に伴い、一番料金を下げられるインフラは何なんだ、と考えると、やはりEV-DOだった」。
重野氏は、パケット料金の改定――ひいてはEV-DO導入につなげるため、ユーザーがいかに現状の料金体系に満足していないか探ったと話す。「会社で(企画を)通すため、いちいちリサーチもした」。たとえば、毎月パケット通信料に4000円以上を費やしているユーザーは、約1000万人以上だと推計した。
非音声系サービスで、毎月3000円〜3500円以上を払っている“ハイミドルユーザー”1200人を対象に、調査も行った。この結果、「満足」「どちらかといえば満足」と答えたユーザーが28.8%だったのに対し、「不満」「どちらかといえば不満」と答えたユーザーは、71.2%に上った。
さらに、ネット接続機能付き携帯ユーザー、1500人を対象に、「パケット料金が月額定額制になる」としたらどう思うか、とのアンケートを実施。47%のユーザーから、「非常に/どちらかといえば魅力的」との回答を引き出した。こうして、社内の方針を1xEV-DO導入へと傾けた。
「定額制の導入は、キャリアにとってものすごく怖いこと。(導入決定には)1年かかった」。
なお、新インフラではEZチャンネルのように、夜中に3Mバイトのファイルをプッシュ配信するサービスもある(記事参照)。重野氏は、仮に1xのインフラで3Mのファイルが勝手に送られてきたら、「ユーザーはたまったものではないだろう」と笑った。
カード型で定額制は「無理だろう」
かくして、同社はパケット料金の月額定額制に踏み切り、業界に衝撃を与えた。しかし、カード型端末に目を向けると、こちらは準定額制を採用するに留めている。ユーザーとすれば、カード型でも定額制が実現されないのか、気になるところだ。
重野氏は、カード型端末での全くの定額制は「無理だろう」と率直に話す。
「普通のユーザーが、普通に使う分には、問題がない。しかし、(カード型端末で)定額制導入となれば、“普通じゃない”人がいっぱい出てくる。それこそ、24時間アクセスしてきて『この人は、一体どうなっているのか?』と思うような、我々の想像を越える人が出てくる」。
重野氏はまた、ADSLのように固定の回線を利用するサービスでは、ユーザーと局舎間が1対1でつながるため、帯域の占有も比較的認めやすいと指摘する。
「しかし、携帯電話のような無線アクセスサービスでは、ユーザー同士が帯域をシェアしている」。こうした理由から、定額制の実現は難しいとした。
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[杉浦正武,ITmedia]