重要な顧客接点の場であるコンタクトセンターは、AIの進歩でその重要性が増している。「問い合わせへの対応」から発展し、顧客の声(VOC)が集まる場という特徴を生かしてマーケティングや戦略立案の土台を築くための存在として期待されている。
そんな発展目覚ましいコンタクトセンター業界の“最前線”が垣間見えるイベントが2024年7月24日に都内で開催された。その名も「コンタクトセンター マッシュアップ ボックス 2024」だ。本記事では、熱気あふれる会場の様子をお伝えする。
イベントを主催したのは、クラウド型CTI「CT-e1/SaaS」を提供するコムデザイン。「コンタクトセンターのイノベーション、リアルに集結。」をテーマに掲げ、コンタクトセンターに関わるAIソリューションやCRM、回線サービスなどを提供する26社がブースを出展した。各分野の先駆者を講師として招いたセミナー「パイオニア・ブリーフィング」も併せて開かれ、会場である東京・平河町の砂防会館別館には多くの業界関係者が訪れた。ハイブリッド開催となったパイオニア・ブリーフィングは500人弱が視聴した。
ここからは、ブースが集まった「ディスカバリー・ラウンジ」の様子をお伝えする。まずはLINE WORKSのブースだ。ビジネス版「LINE」として導入社数が増加している「LINE WORKS」を提供する同社は、AI製品の開発にも注力している。その一つがボイスbotの「LINE WORKS AiCall」だ。
LINE WORKS AiCallは音声認識や音声合成、会話制御などのソリューションを組み合わせた電話対応AIサービスで、大企業を中心に導入が進んでいる。
質問者がボタンをプッシュして問い合わせ先などを選択する「プッシュ型IVR」(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)の場合、つながるまで時間を要したりオペレーターにつながっても改めて用件を聞かれたりすることが多い。しかし本製品は、質問者の発話をAIが分析してオペレーターにつなげる「音声IVR」のため問い合わせてきた人の待ち時間を削減し、AIが回答できる用件であればオペレーターの対応も不要になる。
LINE WORKSの村上正人氏(Communication solution営業部 部長)は、導入メリットについて以下のように話す。
「コンタクトセンターを自動化すれば、簡単な問い合わせにはAIが対応することでオペレーターは人でなければ対応できない複雑な問い合わせに注力できます。会話内容はデジタルデータとして収集でき、CRMなどと連携すればマーケティング戦略に活用可能です」
音声認識を活用したサービスを提供する企業は他にも多く出展していた。そのうちの一社が、25年にわたり音声認識を研究・開発してきたアドバンスト・メディアだ。
同社のブースでは、独自の音声認識エンジン「AmiVoice」を搭載した「AmiVoice Communication Suite」を実際の画面を見ながら体験できた。コンタクトセンターの座席表に即した管理画面の仕様など、“これでもか”というぐらいコンタクトセンター業務に特化した製品だ。
特筆すべきは、社会問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応だ。通話内容から読み取った感情を可視化することで、「何度も謝っている」「怒られている」オペレーターを管理者がリアルタイムで確認できる。
緊急度が高い場合は管理画面に赤く表示され、管理者は該当するオペレーターに直接メッセージを送信できる。各通話記録はリアルタイムでテキスト化されるので、経緯を把握した状態でスムーズな電話交代が可能だ。
各社が定めるNGワードも自由に設定できる。NGワードを発した回数や話すスピード、発話のタイミング、クッションワードの使用を判別し、オペレーターのスキルを相対的に評価する「通話品質評価」という機能もある。これまで、「対応件数が多い」といった抽象的な評価が多かったコンタクトセンターでも、客観的な指標に基づいて評価できるようになるだろう。
カスハラ対策には、シーエーシーの「Beluga Box SaaS」も有効だ。シーエーシーの下地貴明氏(新規事業開発本部 Empath事業統括)は「音声感情解析AIにより、カスハラからオペレーターを守ることが一番の目的です」と力を込める。
Beluga Box SaaSは、音声感情解析AI「Empath」(エンパス)を活用して通話を解析するソリューションだ。オペレーターと質問者の発話を解析して「楽しい」「落ち着く」「怒り」「悲しみ」の4つの感情にリアルタイムで分類する。
「声の抑揚などから、オペレーターの内面の状態も把握できます。管理者が数値の変化を把握することでうまくフォローアップでき、離職率の低減も期待できます」(下地氏)
Beluga Box SaaSは、オペレーターの自動評価機能も搭載している。基準となる音声データをアップロードすることで、その音声と「どれだけ違いがあるか」を減点方式で採点する。データを基に個々の従業員を指導すれば、「どれだけ上達したのか」といった習熟度も測れるだろう。ヘルプデスク業務、アウトバウンド業務では発話の仕方が異なるが、評価項目をカスタマイズすることで各業務内容に応じた適切な評価を下すことが可能だ。
コンタクトセンター全体の高度化ソリューションを提供するNTTコミュニケーションズのブースでは、IP電話の新プランやAIチャットbot、CX分析ツールなどを展示していた。特に注目すべきは、オペレーターを支援するAIチャットbot「COTOHA Chat & FAQ ドキュメント回答プラン」だ。AIチャットbotが、ドキュメントから適切な箇所を抽出して回答してくれる。
FAQは不要で、AIチャットbotに尋ねればすぐに答えが返ってくるためオペレーターの業務支援につながる。フリーダイヤルやナビダイヤルのSMSオプションと連携すれば、質問者はオペレーターを介さずに知りたい情報を確認できる。
各ブースで説明を受ける参加者の熱量や出展企業の勢いなど、一日を通して盛り上がっている様子が印象的だった。ボイスbotや音声認識、AIによるオペレーター支援といったコンタクトセンターに直接関わる業務を担う製品はもちろん、本記事では紹介できなかったもののCRMや電話回線業者の姿もあった。まさに、コンセプトである「コンタクトセンターのイノベーション、リアルに集結。」を体現したイベントだ。
コンタクトセンター業務の改善や効率化を図るためには、これらの導入を検討したい。しかし、機器を設置したりシステム改修したりするのは企業にとって大きな負担になる。会話データを取得できても、各ソリューションとうまく連携できなければ活用できない。
そうした課題を解決するのが、コムデザインのクラウド型CTI「CT-e1/SaaS」だ。CT-e1/SaaSは、“混ぜ合わせる”を意味する「マッシュアップ」をキーワードに展開している。CT-e1/SaaSをプラットフォームに、本イベントに出展した各製品を連携させることでAI時代に適したコンタクトセンターの構築を目指せる。
コムデザインの寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)は、コンタクトセンターの未来について以下のように語る。
「コンタクトセンターに寄せられる会話内容は、ビジネスにおいて有益な情報資産になるといわれてきました。しかし、文字起こしの手間などもあって、ないがしろにされてきた部分があります。それがAIの発達によって簡単に音声データの記録や文字起こし、要約などができるようになりました。今後はよりマーケティング施策などで活用されることでしょう。
業界全体を俯瞰(ふかん)すると、AIベンダーなどの新規参入者が増えてコンタクトセンターは変革期にあると言えます。コムデザインのCT-e1/SaaSは、各企業が描く理想を実現するためのプラットフォームです。各製品とのマッシュアップを提案し、クライアントが描く理想のコンタクトセンター構築のお手伝いができればと思います」
全ての仕事でデジタル化は当たり前になり、それをどう活用してビジネスを成功させるかがカギとなっている。AIの進歩によって変革期を迎えたコンタクトセンター業界。これから次々と生まれる新しいソリューションをうまくマッシュアップしながら、勝ち筋を見つける必要がある。
コンタクトセンター マッシュアップ ボックス 2024は、そんな業界の最新動向に触れられる非常に内容の濃いイベントだった。コンタクトセンターの動向にこれからも目が離せない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:都築電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年9月20日