敏腕マーケターが「コールセンターは3回目の転換期」と語るワケ VOC活用の極意を聞く

» 2024年03月06日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
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 人々のライフスタイルが多様化しニーズも細分化している現代、マーケティング戦略の要になるのが、お客さまの声「VOC(Voice Of Customer)」をどう集め分析するかだ。

 VOCの集約地となる場所がコールセンターだ。しかしコールセンター対応は属人的になりやすく、情報を分析するにもさまざまな制約がある。「これらの課題解決の一助になるのがAIの活用です」と話すのは、マーケティングの専門家であるマーケティングサイエンスラボ 所長の本間充氏だ。

 コールセンター領域の課題を解決し、VOCを全社で活用するためには何をすればよいのだろうか。本記事では、本間氏と、AI技術を活用して「コールセンターDX」を提唱するコムデザインの寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)の話から、企業が考えるべきマーケティングとコールセンターの関係性について考えていきたい。

――マーケティング領域における最近の課題を教えてください。

本間充氏 1992年大手消費財メーカーに入社し、デジタル・マーケティングをけん引。以後、コンサルタントとしてマーケティングのデジタル化を支援してきた。2020年、マーケティングサイエンスラボを設立し所長に就任した。

本間氏: マーケティング戦略として、お客さまそれぞれのニーズに対応する場面が増えてきました。その理由は、年齢や性別、B2Bであれば企業規模などのグループ分けが有効ではなくなってきたためです。

 以前は「一般的な50代男性の平均年収はこれくらいで、家族構成は……」という標準的なグループ分けができましたが、今はそれが難しくなってきました。

 収入と支出の比例関係がなくなってきたことも原因の一つです。普段の生活ではあまりお金を使わないが推し活ではとことん使うという人も多いはずです。マーケターは、自分のライフスタイルやイメージが“標準的ではない”という前提に立ち、今まで以上にデータを丁寧に観察する必要性が出てきたのです。

――顧客理解を深めるにはどのようにデータを分析すればよいのでしょうか。

本間氏: 仮説を持ってデータを見ることです。データ分析の目的はお客さまが「なぜその製品を買ったのか」を理解するためのはずです。クレームが寄せられることもありますが、「この問い合わせの背景は何か」を推測しましょう。問い合わせるお客さまは「自身が商品に関与したいと思っている」とも捉えられるからです。

――「お客さま自身が商品に関与したいと思っている」とはどういう意味でしょうか。

本間氏: 私たちは物事を「好き>どちらでもない>嫌い」という線引きで捉えがちですが、本当の優先順位は「好き>嫌い>どちらでもない」です。「どちらでもない」はそもそも関心がなく行動を変えにくい人と判断できますが、「嫌い」はその理由を読み解いて「好き」にできれば、商品のファンになる可能性があります。

 例えば、「パッケージ記載の説明を読み飛ばしてしまい大変なことになった。読むべき内容は分かりやすく書いてほしい」という意見があったとします。オペレーターは、「製品の本質には関係のない問い合わせ」と判断するかもしれませんが、お客さまはそこで不都合を感じたわけです。

 マーケターが、このような声から「パッケージに記載しても読まない人が多い。ではどうすべきか」と分析し、次の製品開発に生かせればビジネスチャンスにつながります。マーケターにとってコールセンターに寄せられる声は、新しい施策に気付けるヒントでもあるのです。

コムデザイン 寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)

寺尾氏: 本間さんの話はすごく本質的な内容だと思います。一方、コールセンターで働くオペレーターに話を聞くと、問い合わせ内容を記録するように指示されるが会社はその記録をマーケティング的にうまく活用しておらず、細やかな気付きの記録を求められても無駄な仕事に感じることもあると言います。

 なぜデータが使われないのか調べてみると、マーケティングデータとして活用しにくい形のまま管理されていたのです。マーケターが使うかどうか分からない情報を記録する作業をよりも「いかにスムーズにお客さまとのやりとりを終われるか」といったコールセンターにとってより現実的な業務に終始してしまいますよね。

コールセンター×AIが導く新しいマーケティング戦略

――では、マーケターが活用しやすいデータに変えるにはどうすればよいのでしょうか。

本間氏: 2つの方法があります。一つは「機能に対する問い合わせ」や「接客に対するご意見」など、カテゴリーごとに振り分けて数値で定量化する方法です。

 今までは、事前に設定したカテゴリーに当てはまらないものは「その他」に振り分けていましたが、最近はAIを活用することでデータ取得後にカテゴリーの変更が可能になりました。テキストだけでなく音声データも数値化できますし、新しいカテゴリーの提案もしてくれます。

 もう一つが、「新しい予兆」が見えたときに細かく記録する定性的なものです。お客さまの声から「最近この内容が増えてきているな」という変化に気付くことが大切で、この作業でもAIの活用が期待できます。

 膨大な問い合わせを人が要約する作業は負担が大きく、ネガティブなコメントに参ってしまう可能性もありますよね。AIを使えば、膨大な量でも容易に要約できます。

寺尾氏: AIの活用はオペレーターの負担軽減にもつながりますよね。今までは、オペレーターが抱えるストレスを定量的なデータとして把握できませんでした。AIを活用すれば「お客さまにどれくらい怒られた」「オペレーターの声がどう変化しているか」などの感情解析も可能です。テキストマイニングを活用して、会話内容の分析も容易になります。

VOCで「顧客の新しい予兆」にいち早く気付く

――マーケターは、コールセンターに寄せられていた「新しい予兆」にこれまで気付いていなかったということでしょうか。

本間氏: 気付いていなかったかというより、マーケターが「気付けなかった」のだと思います。「柔軟剤」を例に説明します。私が以前勤めていた消費財メーカーは、製品カテゴリーの名称をずっと変えていませんでした。しかしある競合企業が、芳香剤の機能を柔軟剤の価値と位置付けて売り出したのです。

 その理由を探ると、お客さまが柔軟剤に求める価値が「衣類の肌触りが良くなる」から「香りが長持ちすること」に変わっていたのです。

 柔軟剤という名称が変わらないと、その名称にとらわれてニーズが変化していることに気付きにくいものです。マーケターは、商品の価値として衣類の柔らかさや吸水性を打ち出しますが、実際にお客さまから寄せられる声は「タオルが水を吸い込まない」よりも香りに対するものが多くなっていたのです。

 製品の定義付けをする仕事が、企業側からお客さま側に変化しているのです。それはB2B向け商材でも同様です。

寺尾氏: ただ、多くのマーケターがVOCは大事だと分かっていて、コールセンターにあるデータにヒントがありそうだとは思っていたはずです。生成AIの登場により、VOCを定量データとして扱えるようになったのは「コールセンターの情報は扱いにくい」という固定観念を破壊するきっかけになるはずです。

 基本的にCTIシステムの導入はコールセンターの担当者が検討すると思います。ただ、マーケティングデータとして横断的に活用するためにはマーケティング部門も連携してコールセンターの重要性や生成AIの活用を提唱すべきです。

コールセンターが迎えた「3回目の転換期」

本間氏: コールセンターを取り巻く環境は大きく変化しています。会社として、自社のコールセンターはどんな部署で、集めたデータは誰がアクセスすべきかといった議論を始めるタイミングに来ています。

 コールセンターはこれまでに2回大きな転換期がありました。1回目は、フリーダイヤルが登場した1980年代です。「フリーダイヤルにするってことは、お客さまの悩みをうちがお金を払って聞くのか?」といった話もあったと思います。ただ、お客さまの声は重要だという判断をしたからこそフリーダイヤルを選択した会社が多いはずです。

 2回目の転換期は、米マイクロソフトが「Microsoft Access」を発表した90年代です。コールセンターに寄せられた声をデータベースに蓄積する動きが出始めたと同時に「電話だけでいいのか。メールや他のアカウントを開設すべきでは」などと検討したはずです。

 過去2回の転換期は技術的な側面が強く、IT部門が主導で進めていました。ただ今回は違います。マーケターや事業計画立案者、経営層を巻き込んでコールセンターのデータをどう活用するか議論する必要があるのです。

寺尾氏: これまでのコールセンターは、CTIとCRMさえ導入しておけば十分だと考えられていました。それが最近では、会話データを文字化して要約したりお客さまからの質問にAIが回答したりと、会話自体を扱うアプローチも登場しています。

 一方でCTIは、お客さまとオペレーターをつなぐ“1本の線”のように設計され、会話データを外に出す仕組みがないサービスもあります。コムデザインが提供するクラウド型CTIの「CT-e1/SaaS」は、音楽用語で「混ぜ合わせる」を意味する「マッシュアップ」をキーワードに展開しており、会話データを活用するさまざまなソリューションと連携が可能です。

 CTIに求められることは、いかにストレスなく他のソリューションと連携できるかです。コムデザインはこれからも、幅広い選択肢を提供できるシステムとして開発を続けていきます。

――ありがとうございます。最後に読者へメッセージをお願いします。

本間氏: コールセンターに集まるお客さまの声は、会社にとって財産です。ただ、他部署の人はその価値に気付いていないことが多いはずです。そのことを社内で共有し、AIを活用したコールセンターのバージョンアップにつなげてほしいです。

寺尾氏: 海外では、コールセンターとマーケティング部門が連携して成果を挙げている事例があります。

 顧客と接点を持ち、最前線の情報をキャッチアップできる場所がコールセンターです。これからのコールセンターに求められることは、AI技術を活用しながら顧客と企業の架け橋として経営に深く関与したり他部署に情報を共有したりすることです。

 コムデザインは、仕組みを通してコールセンター業務の負担を軽減し、新しい価値を生み出すお手伝いができればと考えています。コールセンター業務やVOC活用に課題を抱えているのであれば、お気軽にご相談ください。

――ありがとうございました!

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提供:株式会社コムデザイン
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年3月25日

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