
電話交換機の設置工事および保守を祖業とする老舗SIer(システムインテグレーター)の都築電気。時代のニーズに合わせて事業領域をデータ通信や情報システム開発などIT全般に拡大して、顧客の課題をITの力で解決し続けてきた。2023年に発表した中期経営計画「Transformation 2026」では10年後の目指す姿として、顧客の成長を先導するパートナー「Growth Navigator」を掲げている。
SaaSの普及やオンプレミスシステムからクラウドインフラへの移行など、企業におけるITのニーズは多様化してきた。Growth Navigatorを掲げる都築電気は、ニーズの変化に対応するためにどのようなステージを目指すのか。
都築電気のコミュニケーション領域を担うボイスクラウドビジネス統括部の小林勇介氏(統括部長 兼 クラウドコミュニケーションビジネス推進部長)と、都築電気の子会社でクラウド型CTI「CT-e1/SaaS」を提供するコムデザインの寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)に話を聞いた。
――クラウドの普及や生成AIの登場など、IT業界は目覚ましい変化を遂げています。SIビジネスに長年携わってきた都築電気はトレンドの変化をどう捉え、どのような点を意識して顧客と向き合っていますか。
小林氏: 大切にしていることは「お客さまの本質的な課題を捉える」という点です。お客さまがシステムを導入する目的は、その先にある課題の解決です。お客さまとのコミュニケーションを通じて潜在的な課題を引き出し、システム導入や運用のプロフェッショナルとして培ってきたノウハウを活用して効果的な解決策を提示できるように努力しています。
クラウドの普及でお客さまのニーズや意識の変化を感じています。オンプレミスでシステムを構築する場合は、まとまったコストと期間が必要です。次の更新まで5〜10年の間隔が空くため、お客さまも身構えて後悔しないように熟考してツールを導入します。一方、クラウドの場合は導入後でも機能の追加やスケールの拡大、縮小が容易です。クラウドを選択するお客さまはその柔軟性や拡張性に魅力を感じていると考えています。
オンプレミスかクラウドかにかかわらずニーズが多様化した今、SIerにはお客さまの潜在的な課題を引き出して把握して幅広い解決策を提示する力が求められています。私たちも、お客さまとの会話を通じて新しい気付きや学びがあります。思いも寄らないニーズや導入目的をお客さまから聞く機会も増えました。その気付きや学びを、お客さまへの新しい提案として還元できるように私たちも研さんし続けています。
小林氏: 多様なニーズに応えるには、営業担当者とエンジニアが立場や考え方を越えてベクトルを合わせて、お客さまのために共にプロジェクトに取りかかる必要があります。私たちボイスクラウドビジネス統括部は、都築電気の新たな取り組みとして営業と企画と技術のメンバーが一体となった製販一体型の体制を採っています。皆で方向性を擦り合わせた上で、お客さまの課題解決に向けて細かい部分を日々チューニングしながら動いているところです。
――そうした姿勢がGrowth Navigatorとしての在り方につながるのですね。
小林氏: その通りです。これまで都築電気はお客さまに寄り添い、お客さまの声を形にする「伴走型」のサービスを大切にしてきました。近年は多様な社会課題が顕在化してお客さまの事業環境は大きく変化しました。その変化に対応するために伴走型の支援を進化させたいと考えました。
Growth Navigatorとして存在感を発揮するため、都築電気は「新たな価値を創造する」「多様なお客さまとのつながりを生み出す」「成長を先導し続ける」という3つの活動軸を設けています。
――ボイスクラウドビジネス統括部は、Growth Navigatorを実現する試みの一つとしてコムデザインとの連携を強化して、同社が提唱する顧客体験の向上を目指す新しいサービスモデル「CXaaS」(シーザース)の概念を積極的に取り入れていますね。CXaaSの考え方について教えてください。
寺尾氏: CXaaSはCustomer eXperience as a Serviceの略で、サブスクリプション型の定額利用料でソフトウェアを提供して、技術的なパートナーのFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)が運用を支援するサービスモデルです。「こういう機能が欲しい」「こんなことがやりたい」といった要望を、お客さまのタイミングに合わせて支援します。
小林氏: SIerである都築電気は「安心安全を担保した堅牢(けんろう)なシステムをお客さまの希望通りに構築すること」にこだわっています。今でもその考えは揺るぎません。同時に、会社全体としてSaaSをはじめとしたプロダクト起点のビジネスにも注力する方針を示しています。
CXaaSの考え方は、SIerがこれまで実施してきた受託開発型のビジネスモデルのメリットを捉えており、プロダクト開発の観点で重要であると認識しています。CXaaSの考え方を意識した新しいプロダクト作りにもチャレンジしたいと考えています。
――コムデザインは2020年にツヅキグループに加入しました。グループに加わったメリットをどう感じていますか。
寺尾氏: ツヅキグループの一員になったことで、CXaaS型のサービスを提供する上で足りなかった現場回りのリソースを補完できた点はとても大きなメリットです。
コムデザインはCXaaSの考えに基づいてCT-e1/SaaSを提供しています。繰り返しになりますが、CXaaSはお客さまがソフトウェアを使用するために必要な設定や開発リソースを包括的にサポートするという考え方です。
CT-e1/SaaSはクラウド型のCTIシステムなので、お客さまからネットワークやPBXに関する相談を受けることがあります。SaaSベンダーである当社だけでは解決できない課題を、都築電気の力を借りてサポートできるようになりました。
コミュニケーションやコンタクトセンター領域で長い実績のある都築電気は、多くのお客さまと信頼関係を築いています。お客さまに提案するサービスの一つとしてCT-e1/SaaSを加えていただけたのはとてもありがたいことです。より多くのお客さまにCT-e1/SaaSやCXaaSの考え方を知ってもらえるきっかけになると思います。
――都築電気側はコムデザインとの連携をどのように捉えていますか。
小林氏: コムデザインは、クラウドが浸透する前の2008年からCT-e1/SaaSを提供しています。当時から先進的なサービスだと認識していました。その分野でシェアを獲得するためにさまざまな努力を重ね、CXaaSというビジネスモデルの創出にたどり着いたのだと思います。
ただ、共にビジネスを始めた当初は考え方や文化の違いから戸惑うこともありました。われわれはSIerなので、システム開発前のドキュメント整備には強いこだわりがあります。お客さまの要望をドキュメントに落として、システムにどのような動きをさせるかを正確に設計してお客さまに納入するウオーターフォール開発が当たり前だと思っていました。
コムデザインは「そうではなくて、アジャイルで機動的に進める方が効率的だ」という考えが根底にあると思います。協業した当初、コムデザインの担当者に「ドキュメントを提出して」と依頼したところ「出せません」と返されたことがありました。(笑)
――どちらの開発手法にも善しあしがありますよね。
寺尾氏: コムデザインに今まで足りなかった部分がまさにそこです。私たちは、アジャイル型の方がお客さまに早く提供でき、コストも軽減できるから良いと考えていました。しかしプロジェクトの規模や内容によってはドキュメントが重要になる場面もあります。都築電気と一緒になったことで、コムデザインだけでは対応できない規模のプロジェクトに携われるようになりました。
小林氏: それぞれの開発手法やお互いの強みを生かしてお客さまに幅広い価値を提供できるようになりましたね。
――都築電気は今後Growth Navigatorとして顧客にどのような価値を提供するのでしょうか。
小林氏: ボイスクラウドビジネス統括部は、全社としてGrowth Navigatorを目指す上で、この領域に携わるメンバーが常に意識したい現場レベルに落とし込んだメッセージとして「コエカチ」というビジネスコンセプトを設定しています。コエカチは「『声』をカタチに、カタチを『価値』に」というメッセージの略称です。都築電気の祖業である音声にまつわる業務をどう価値に変えるかにこだわっています。
例えば、コンタクトセンターはエンドユーザーの意見を直接聞ける重要な場所です。そこに集まるお客さまの声「VOC」(Voice Of Customer)には重要な価値がありますが、うまく生かせていない企業が多く存在します。VOCを形にして価値に変換したい。そしてお客さまに良いサービスを提供するために当社の従業員が考えていることを形にして価値に変換したい。そのような意味を込めています。コエカチを合言葉に、お客さまの声にまつわる潜在的な課題を解決します。
CXaaSの実装にも取り組んでいます。コムデザインのCT-e1/SaaSはもちろん、当社が提供するクラウドPBXサービスの「TCloud for Voice」にCXaaSを実装すると製品としてどのような発展性があるのかを今まさに検討しているところです。併せてCXaaSの実現に重要なFAEの育成も強化しています。
これまで取り組んできたSIerとしての価値提供と併せて、CXaaSの考え方を適用したプロダクト面の新しい選択肢を多くのお客さまに提示できる組織を目指します。
寺尾氏: 日本企業がグローバルに活躍するためにはDXの推進が急務です。しかしIT人材不足などもあってDX推進に課題を感じている企業は多いはずです。そのような課題を解決できるサービスモデルがCXaaSです。CXaaSという新しい選択肢を提供する企業が増えれば、さまざまな企業の課題解消につながるのではないかと考えています。
――ありがとうございました。
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