まだデジタル化に悩んでいるの? 多くの企業が陥りがちな“手段の目的化”から脱却するノウハウを専門家に聞く

» 2024年03月19日 10時00分 公開
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 デジタル改革(DX)が叫ばれて久しいが、その推進に課題を感じている企業も多いはず。背景には、システム開発のベンダー依存やIT人材不足、企業ニーズとSaaSの機能ギャップがある。ツール導入やIT人材育成ばかりに気を取られ、本来の目的である業務効率化に到達できていない場合もあるだろう。

 企業が陥りやすいこれらの課題を解決する施策や考え方はあるのだろうか。業務設計プラットフォームサービス「BYARD」を展開するBYARDのCEOで、業務設計士、税理士でもある武内俊介氏と、コムデザインの寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)に話を聞いた。

――日本の大企業の多くが「システム開発のベンダー依存」に陥っているといわれています。その理由と、それによる課題は何でしょうか。

武内俊介氏 金融の企画部門、会計事務所、ベンチャーの管理部門を経て独立。業務の再構築とITツールの導入支援を複数社に提供した後、BYARDを創業して業務設計プラットフォーム「BYARD」を開発・提供している

武内氏: ベンダー依存の話は、各種クラウドサービスが登場する前のオンプレミスの時代から続いています。日本企業と米国との大きな違いは、社内にIT人材がいないことです。さまざまな調査結果でも示されていて、日本企業に在籍するIT人材は米国の半分とも10分の1ともいわれています。

 その結果、ベンダー側の意見が強くなり、重要な社内会議にもベンダーが参加しないと話を進められなくなりました。そのためユーザーは、開発コストやシステム品質も含めてベンダーの言うことを聞くしかない状態になってしまいます。

 一方、世の中の変化が激しくなる中で、この体制に不都合が出始めたわけです。

 ユーザーやベンダーが悪いわけではなく世の中の変化のスピードに追い付けなくなったのです。技術革新の速さから、本来は10年使えるはずだったシステムも数年で陳腐化するようになりました。ユーザー側がその状況を課題に感じてもベンダーをなかなか切り替えられず、ベンダー側もこのビジネスモデルから脱却できないため、新しい事業に踏み出せない。その結果、SaaSベンダーに市場を奪われてしまう――と、誰も幸せにならない状態が繰り返されてしまうのです。

コムデザイン 寺尾望氏(セールス&マーケティンググループ)

寺尾氏: オンプレミスが主流だった時代はシステム構築にハードウェアの要件も加わりますのでミスは許されず、信頼できる企業に機器の調達から構築まで依頼することが当然と考えられてきました。そのためシステムベンダーは、“家を建てる”くらいのスケールで仕事をしていました。

 クラウドの時代ともいわれる今は、家を建てるよりも“マンションを売る”ことが主流になっていると思います。今までとビジネスモデルが異なり、システムベンダーに求められる役割も徐々に変化しているのです。

ローコード/ノーコード開発ツールは使いどころ次第

――急速な環境変化やIT人材不足に対応するため、ローコード/ノーコード開発ツールにも注目が集まっています。どのようなメリットがあるのでしょうか。

武内氏: ローコード/ノーコード開発ツールのメリットは、専門知識がなくても現場担当者が作業できる点ですよね。「ちょっとした日報アプリを作りたい」とか、画面のレイアウトや「ここにボタンが欲しい」とかいったツールの操作性を、現場で変更できるわけです。

 一方、「勝手にシステムを変えていいのか」という議論もあります。業務の深い部分に関わるシステムや高いセキュリティレベルが求められる環境では、ローコード/ノーコード開発ツールの活用は難しいはずです。

 肝心なのは使いどころです。ローコード/ノーコード開発は、部屋にカーテンを付けるときに内装業者を呼ばず、自分で取り付けるような作業です。対応できる分野とできない分野がまだまだあると思います。

――ローコード/ノーコード開発ツールのメリットとして「簡単に操作できる」「人に依存しない」といったことも挙げられていますよね?

武内氏: 確かにそのようなキャッチフレーズをよく耳にします。しかしテクノロジーの基礎知識は必要です。知識がないと「あれ、どうすんだっけ」と思う場面が必ず出てきます。Excelのマクロ機能などと同じで、知識やスキルが全くなくて良いわけではありません。

 そうなると結末は同じで、そのシステムを作った人が在籍している間はいいのですが、異動したり退職したりした瞬間に“誰も触れないもの”になってしまいます。

――ベンダー依存もローコード/ノーコード開発ツールの活用も、IT人材不足が背景にあると思います。労働力人口が減少する中で即戦力となる人材の獲得は難しいと思いますが、企業としてどう対処すべきでしょうか。

武内氏: 日本の雇用慣行や労働条件を考えると、企業がIT人材を積極的に採用することは難しいと考えています。日本は、米国のように求められる知識や業務内容に応じて給与に差をつけたり転職のたびに給与を上げたりするのが文化的になじまない部分があります。そのため、最近ではフリーランスのITエンジニアも増えていますよね。

 そう考えると、ベンダー側のサービスが進化する必要があると考えています。海外に目を向けると、SaaSの提供はサービスの一部と捉え、企業課題の解決やビジネスの拡張を目指す施策をパッケージで提案する流れにシフトしています。ユーザーが求めているのはシステム導入でもIT人材の獲得でもなく、「業務課題の解決」だと気付き始めたのです。

「CXaaS」という第三の選択肢

寺尾氏: 武内さんがお話しした内容は、まさに「CXaaS(Customer eXperience as a Service):シーザース」※1という、ソフトウェアを利用する顧客体験をサービスとして提供する考え方に近いと思います。

※1:サブスクリプション型の定額の利用料でソフトウェアを提供し、その運用について専門エンジニアが技術的なパートナーとして継続的に支援するサービスモデル。

 SaaSのビジネスモデルは、ソフトウェアという道具を手軽に提供する仕組みです。ただし、ユーザーは道具を与えられたとしても目的を達成できるとは限りません。道具をうまく使って活用するにはさまざまな課題があって、「業務に最適化されていない」「最適化するためのIT人材がいない」「外注するにもコストがかかる」といった議論に終始してしまうこともしばしばです。

 IT人材不足を打開するために、自社で育成する動きもあります。もちろん大事なことですが、従業員にプログラミングなど汎用的なITの知識を学ばせることが業務効率化や生産性向上につながるのかと言えば疑問です。各業務で身に付けた知識こそが各企業や従業員が持つ重要な価値ですが、その業務知識と覚えたばかりの汎用的なIT知識を結び付けて応用することは、かなり難度の高い仕事です。

 IT活用はこれまで、コストをかけて業務に最適化したシステムを構築するか、パッケージ型のシステムに業務を合わせるかの2択でした。SaaSによる手軽なソフトウェア提供と同時に業務への最適化を受け入れるCXaaSの考え方は、多くの企業にとってメリットのある「第三の選択肢」になるはずです。

 CXaaSでは、ベンダーがソフトウェアを提供するだけではなくユーザーの要望を聞いてエンジニアが継続して技術的な支援を行います。企業はむやみにIT人材を増やすことやデジタルへの投資に走るよりも、まず「デジタルの力を使って自社の強みを伸ばすための理想形」を考えるべきだと思います。その理想形にとって“必要なソフトウェアと人材は何か”という答えを価値とするのがCXaaSだと考えています。

武内氏: CXaaSの考え方は非常にいい観点だと思います。かつては、セオドア・レビット博士の「人はドリルではなくて穴が欲しいのだ」というドリルの穴理論や、クレイトン・クリステンセン教授が提唱するジョブ理論でも、解決したい課題こそが重要だといわれてきました。

 捉え方のレイヤーを上げると、「システムが欲しかったのか」「システム開発する人材を抱えることがゴールだったのか」と違和感に気付くはずです。「生産性を上げたり労働環境を改善したりするためにどうすべきか」と正しくゴールを定めることで、おのずとその方向に動いていくはずです。その議論を通して、どの手段を選ぶかは各企業の判断です。

 CXaaS提供側の課題を挙げるなら、「専門性の出し方」が大事になります。全ての領域において「何でもやります」だと、技術要件を満たす担当者を確保できません。特定領域のプロとしてCXaaSを提供することで、レベルの高いニーズにも対応できるでしょう。

 CXaaSはトータルソリューションをサービスとして、バリューを売るわけです。エリヤフ・ゴールドラット博士が書いたビジネス小説『ザ・ゴール』の3作目、『チェンジ・ザ・ルール』(ダイヤモンド社)※2でも似たような話がありましたよね。

※2:コンピュータソフトウェア企業を舞台に、他社がまねできない競争優位を確立するまでを描くビジネス小説。

 顧客から依頼された通りにシステムを構築すればベンダーとしてもうけは出ます。ただ、「顧客の全ての要求に応えられるのか?」「顧客の利益につながらなかったら?」と考えると、開発費用をもらう代わりにコンサルティングも含めたトータルパッケージで対価を受け取った方が、双方のメリットが出るはずです。

 サブスクリプション型であることも利点ですよね。ベンダー側も安定的に人材を確保できるし、ユーザーも見積もりや納品という概念を持たずにスピーディーに対応してもらえる。お互いにメリットがある体制が構築できれば非常にいいですね。

――最後にデジタル化の課題を感じている読者に、アドバイスやメッセージをお願いします。

武内氏: 「デジタル活用がすごい」という時代はとっくに過ぎています。インフラと同じく使うのが当たり前で、それを基にどう競争に勝つかが重要です。

 繰り返しになりますが、システムを導入することがゴールではなく、各企業が長く続けてきたビジネスの強みをどうデジタルに対応させるかを追求すべきです。その中でデジタル化や内製化が足かせになるのであれば、足りない部分を支援してくれる外部パートナーを探すのも一つの手です。「デジタル化が……」という議論はそろそろ止めにしてもいいのではないでしょうか。

寺尾氏: 社内システムを使う中で、小さな不便を感じることがあると思います。その状況を当たり前と思わずに、「なぜできないのか」と突き詰めると、業務をプラスに動かすヒントが見えるはずです。

 できない理由が人やお金に関わる場合は、CXaaSの概念が解決策になるでしょう。コールセンター分野ではコムデザインがCXaaSの考え方をベースにお手伝いできます。さまざまな分野でCXaaSが広まってほしいと思います。

――ありがとうございました!

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