Amazonに行けば何でもそろう――いまや日常生活に欠かせなくなったオンラインストア「Amazon.co.jp」を展開するAmazonは、法人や個人事業主向けのECサービス「Amazonビジネス」も手掛けている。品ぞろえの豊富さやUIなどは個人向けのAmazon.co.jpを踏襲しながらも、法人が利用する事務用品などの「間接材」の購買に特化させたサービスだ。翌日配送に対応したプランなどがある点も個人向けAmazonと同じだ。
注文する商品の推奨や制限を設定可能な購買コントロールで購買業務を効率化したり、購買データを分析してコスト削減につなげたりできる。初期費用はゼロ円。2015年に米国でサービスを開始し、世界で600万以上の法人が利用するまでに成長した。日本でも東証プライム上場企業の70%以上、国立大学の約90%が登録しているという。
Amazonビジネスがここまで躍進した背景にはどのようなビジネス戦略があるのか。日本独自の商習慣にどう対応してきたのか。米国のAmazon本社でAmazonビジネス事業のバイスプレジデントを務めるトッド・ハイメス氏と、アマゾンジャパンでAmazonビジネス事業本部長を務める石橋憲人氏を取材した。
ハイメス氏は勤続25年を誇る。同氏はAmazonが書籍やCD、VHSテープを中心に販売していた時期に入社した。Amazonの中でも大ベテランと言える人物だ。
「Amazonは1995年7月にガレージで生まれました。書籍のネット販売からスタートして、インターネットの普及に合わせるように品ぞろえを増やしていきました。個人だけではなく法人のニーズも大きいと判断して、2015年にAmazonビジネスを始めました」
それから約9年がすぎた2024年現在、米国や日本、インドなど10カ国でサービスを展開している。法人顧客は世界で600万に上り、売上高が350億ドルを超えるまでに成長した。日本でAmazonビジネスが始まったのは2017年。石橋氏は当時の様子を次のように振り返る。
「欧米では購入時に料金を支払う方式が一般的ですが、日本企業の多くは請求書による月末締め、翌月払いの商習慣を採用しています。このような日本独自のルールに対応しなければ、日本でお客さまの支持を得られないことは明白でした。Amazonビジネスを日本でローンチする前に、アマゾンジャパンから強い要望を出して、請求書払いに対応できるシステムを開発してもらいました」
月末払いだけではなく、5日、10日、15日、20日といった締め日にも柔軟に対応できる。ハイメス氏は「請求書払いはグローバルで最も選ばれる支払い方法になりました」と話す。世界各国の企業が利用するAmazonビジネスの機能が日本発というのは興味深い。
日本企業特有の要望に応えた最近のケースも紹介してくれた。2023年10月に始まった「インボイス制度」への対応だ。石橋氏は「当時インボイス関連の書類を一度に15件までしかダウンロードできず、お客さまから改善を求める声をいただいていました」と明かす。直ちにアップデートすべくAmazon本社に掛け合ったそうだ。
「機能開発には優先順位がありますが、必要性を訴えて緊急対応してもらいました。現在は2000件のインボイス関連書類を一括ダウンロードできます」(石橋氏)
はんこ文化も日本独自の商習慣だ。押印したものではないが、印影を印刷した請求書を発行できる。請求書の宛名を同一企業でも部門ごとに切り替えて発行することもできるという。
顧客のニーズに耳を傾けて、ローカルな要望でも迅速な対応を怠らないAmazonビジネスの真摯(しんし)な姿勢がうかがえる。
Amazonビジネスを利用することでどのようなメリットがあるのか。ハイメス氏は企業の間接材購買を「計画購買」(マネージドスペンド)と「非計画購買」(テールスペンド)に分けて考えるといいと説明する。コピー用紙やトイレットペーパーなど定期的に必要なものを購入するのが計画購買で、突発的に必要なものを購入するのが非計画購買だ。
「非計画購買には少額、小ロット、多品目といった特性があり、企業が全体像を把握しにくいという欠点があります。これは無駄の発生や生産性の低下につながる業務課題です。Amazonビジネスは、非計画購買すらも見える化して、購買フローを合理化する機能を提供することで課題解決を後押しします」(ハイメス氏)
購買フローの合理化とはどういうことか。従業員は安く買える購入元を選定して立て替え精算をし、上長は承認や予算管理を行う。そして月末が近づいたら経理部門が仕訳や会計処理に奔走する――個人がAmazon.co.jpで商品を“ポチる”のとは違い、業務における非計画購買は現場、上長、経理それぞれの段階で事務処理が発生している。
購入元をAmazonビジネスに一本化して、コンプライアンス的に購入できない商品を制限するなどのルールを適用しておけば、従業員はポチるだけで終わる。Amazonビジネスに承認フローが組み込まれているので、別の稟議(りんぎ)システムを開く必要もない。請求書は自動的に仕訳されるので、経理担当者はCSVファイルを会計システムに入れれば月末処理がサクッと終わる。
「日本企業は、間接材購買フローを見える化することで購買業務を大きく改善できる余地があります。可視化することでそこに眠っている『コスト削減』という鉱脈を掘り当てられます。Amazonビジネスはその見える化をほぼノーコストで可能にします」(石橋氏)
間接費の削減を成功させた例として、石橋氏は三菱重工業の事例を紹介する。同社は間接材の購買に年間3000億円を費やしていた。製品の原料になる直接材は細かく管理していたが、間接材の計画購買/非計画購買は部門ごとに行っていたので透明性に欠けており、管理が手薄になってしまった。Amazonビジネスを国内60社、海外のグループ20社に導入したところ、ダッシュボードで「いつ、どこで、誰が、何を、いくらで買ったのか」を把握できるようになり、コスト削減などの改善のめどが立ったという。
Amazonビジネスを導入する決め手の一つが数億種類に上る豊富な品ぞろえだ。だが「何でもかんでも買える」という状態では、従業員に適切な商品を選ばせるという負担が発生しかねない。
業務用のノートPCを購入するときは、価格の比較だけではなくメモリやストレージの容量なども考慮して選ぶ必要がある。
「例えば数百種類のノートPCの中から表示する商品を絞るとき、Amazonビジネスでは『購買コントロール』という機能を活用できます。『会社が推奨するスペックのPCを表示して従業員に選んでもらう』『特定の機種しか表示しない』など、企業の購買ルールを適用できます」(ハイメス氏)
購買を統制できる便利な機能だが、Amazonビジネスの最大の特徴である「豊富な品ぞろえ」を生かせないのではないか。この疑問に、ハイメス氏は次のように答える。
「Amazon内でも『絞り込めるようにすべき』『多くの選択肢を示すべき』という熱い議論がありました。購買コントロールは、確かにAmazonの「豊富な品ぞろえ」という特徴を消してしまうかもしれません。しかし法人利用という観点で必要な機能だと判断しました。絞り込み方はお客さまの用途に合わせて管理できます」
顧客の声を取り入れながら進化してきたAmazonビジネスがいま注力しているのが、企業の社会的責任だ。企業で環境に配慮した製品を買う「グリーン調達」を支持する動きが強まっている。
「日本でも『クライメイト・プレッジ・フレンドリー』というプログラムを導入しました。信頼性の高い40以上の第三者認証機関と協力して、サステナビリティ認証を受けた商品を見つけやすくなるプログラムです。認証機関の評価基準に基づくサステナブルな特徴を1つ以上備えた商品が対象になっています。例えば『環境負荷のリスクを軽減するプロセスを通じて製造されている』『身体にとってより安全な素材を使用している』『サプライチェーンにおける労働者の健康に配慮している』などが含まれます」(石橋氏)
インタビューの後、ハイメス氏はAmazonビジネスが主催したイベント「Amazon Business Exchange 2024」に登壇して、アマゾンジャパンで社長を務めるジャスパー・チャン氏と対談。日本企業に向けてメッセージを発した。
「購買部門は縁の下の力持ちではありません。企業内でもっと存在意義を高めるべきだと思っています。今後はAmazonのAI技術などを投入することで、さらなる生産性向上とコスト削減のお手伝いができることをお約束すると同時に、Amazonビジネスがお客さまの成長戦略の一翼を担えると確信しています」
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