大日本印刷が「購買DX」実現 法人向けEC“Amazonビジネス”で調達コスト削減、工数10分の1へ 情熱の改革、その裏側に迫る

» 2023年08月31日 10時00分 公開
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 企業がDXを推進する上で求められる、デジタル化や業務プロセスの見直し、組織改革。これらは営業や製造現場といった事業部門だけでなく、総務や経理を含む管理部門にも求められている。しかし改革の成果が数字に表れにくいバックオフィス系の業務では、DXの取り組みが遅れたり、前例踏襲の体質が改革の行く手を阻んだりするケースも多い。

 それでも取り組みを止めるわけにはいかない。そこで改革の一つに「購買DX」を掲げたのが大日本印刷(DNP)だ。生産や業務に必要な部材や物品の購買プロセスを見直し、大幅なコストダウンを狙うべく、事務用品や消耗品などの間接材に目を付けた。購買1件あたりの工数を10分の1に短縮することを目指し、抜本的な購買DXを進めている。

 2023年4月から本格始動したプロジェクトは、すでに成果を挙げている。そこに一役買ったのが“法人向けAmazon”こと「Amazonビジネス」だ。DNPの購買DXが順調に進みだした背景を取材すると、企業が取り組む改革のポイントが見えてきた。

photo 購買DXを率いる、DNPの上尾哲也氏(購買本部 購買管理部 副部長)を取材した

変わる購買部門の役割とは?

 そもそも、DXや組織改革において購買にスポットライトが当たることは少ない。しかし企業や社会の価値観、ミッションが変化する中で、購買業務に求められるものも変わったとDNPの上尾哲也氏(購買本部 購買管理部 副部長)は話す。

 DNPの購買本部では、各事業部の製造拠点で使用する原材料や生産資材などの直接材から、オフィス用品などの間接材に至るまでほぼ全ての物品購入を担っている。従来ならQCD(品質・コスト・デリバリー)を満たした購買・調達をしていればよかったが、ここ数年でその使命が大きく変化したという。

 「特に直接材ではQCDを満たすことに加え、環境に配慮した製品の調達や、サプライチェーンにおける人権・コンプライアンス対応なども求められるようになりました。またコロナ禍の経験を踏まえて、価格以上に安定調達がメインミッションになっています」(上尾氏)

 DNPのように株式を公開している企業であれば、社会的責任も問われる。従来の財務情報に加えESG関連の取り組みなど、非財務情報の開示も求められる。そうなると、調達の最前線でサプライヤーと対峙(たいじ)する購買部門の役割がますます重要になる。

 「これまでは社内からの購買依頼をもって動き出す受動的な業務が中心でしたが、それは過去の話です。これからは依頼がある前の提案や、新たな素材を検討するなど購買部門でしかできない新しい価値の創出に努めます。購買DXの取り組みは、その一つです」(上尾氏)

10万円の直接材と100円の間接材 「購買プロセスは同じ」の違和感

 購買DXを進める理由の一つが、本業に集中することだった。DNPの購買本部の場合、本業とは企業活動を支える直接材の調達だが、購買のシステム面とプロセス面の両方で課題を抱えていたため本業に集中できていなかった。

 システム面の課題は、十数年前に自社開発した購買システムが当時の紙の伝票のデジタル化に主眼を置いていたため、現在の購買業務に適さなくなっている点だ。サプライヤーによっては発注にファクスを使わざるを得なく全体最適が難しかった。

 「業務プロセスにも課題がありました。数十〜数百万円する直接材と、数百円ほどの文房具など間接材について、同じ担当者が同じワークフローで、1日に数十〜数百件を処理していました。単価が安い間接材にも、本業である直接材の購入と同じ工数をかけていたのです。これはおかしいと思いました」(上尾氏)

 そこで考え抜いた結論は「社外から調達するものは全て購買本部が事務手続きをする」という固定観念を捨て去ることだったという。間接材は管理されたシステムの下で各従業員のセルフ購買にすれば、事務手続きは購買本部の手から離れる。それにより直接材の購買という本業にリソースを割け、従業員にとっても煩雑な購買プロセスをカットできるメリットが生まれる。

photo DNPが購買DXを推進するに至った背景。従来の購買システムでは、商品数の少なさなども課題だった(上尾氏の資料より)

「既存の購買が時代遅れだった」 DNP社内にあった“本当のニーズ”

 課題解決の方法として白羽の矢を立てたのがAmazonビジネスだった。端的にいえば“法人向けAmazon”というべきECサイトで、商品の検索や、選定から購入まで個人向けのAmazonとほぼ同じUI(ユーザーインタフェース)で操作できる。取扱商品の種類が豊富で、法人割引や対象商品の当日お急ぎ便が無料になる「Businessプライム会員プラン」(有料)などを備えたサービスだ。

 Amazonビジネスを使って従業員が業務に必要な間接材をその都度購入できる仕組みを構築すれば、購買部門の負荷を減らせる。結果的に、本来の業務や新たな価値の創造に集中できる。さらにこれまで個人がAmazonで買った分を立替精算していた手間もAmazonビジネスに1本化できるメリットがある。

photo Amazonビジネスは、個人向けのAmazonのUIを引き継いでいる(※検索結果画面は一例)

 購買本部がAmazonビジネスの全社導入を検討する中で、すでに複数のDNP事業部門がAmazonビジネスのアカウントを開設しており、かなりの金額を購入していることが明らかになった。これらは立替精算や請求書精算で処理しており、購買本部を経由しない購入だ。既存の購買の仕組みが利用者のニーズにマッチしていなかったと思い知らされたと上尾氏は振り返る。

 Amazonの認知度が高く、さらにAmazonビジネスが社内に浸透していたため従業員から正式導入への異論は出なかった。彼らからすれば使い勝手はそのままで、立替精算などの処理を省けるからだ。

 「経理部門からの賛同も得られました。立替精算などの処理はその都度実施しなければなりません。経理部門としてもキャッシュフローや業務コストの観点から、処理を減らせればうれしいわけです。Amazonビジネスなら請求書払いで月末締め翌月払いといった通常取引のフローで運用できます」(上尾氏)

※請求書払いの利用には審査が必要

上層部を説得 「絶対に導入する」という覚悟

 順調に進むと思えたAmazonビジネスの導入だが、上層部の理解を得るのに時間がかかった。購買の仕組みそのものを大きく変えることになり、その変更が会社全体に影響を及ぼすだけに慎重にならざるを得ないのだろう。

 そこで上尾氏は導入するメリットを数字で徹底的に証明した。従来の購買プロセスの工数を洗い出し、商品選びから社内承認、納品までの時間を測定すると、注文1件に最大44分かかっていた。金額が大きい直接材ならまだしも、数百円の間接材1個にも44分かけるのはもったいない。

 しかしAmazonビジネスであれば、専用サイトにアクセスして商品を選び上長の承認を得れば自動発注され、早ければ翌日には商品が届く。その差は歴然で、間接材の注文1件あたりの購買工数を大幅に減らせ、購買DXにより購買本部だけでなく利用者や経理部門などDNP全体の工数を10分の1以下にできると結論付けた。

 こうした数字を積み上げて根気よく説明した結果、上層部も上尾氏の情熱と導入メリットを認め、最後には応援に回った。

 「絶対に導入するという“退かない覚悟”を持って臨みました。購買業務はやることがいろいろあります。この基本的な取り組みを実現できなければ未来はないと考え、絶対に何が何でもやり遂げようという気持ちでした」と笑いながら回想する上尾氏だが、その目は真剣そのものだ。

スモールスタートから2カ月で全社展開

 上層部を味方に付けてからの動きは早かった。購買本部内で「間接材DX」のプロジェクトを立ち上げ、23年4月から一部の事業部門にAmazonビジネスを導入した。スモールスタートで課題を洗い出すのが目的だ。

 既存の購買システムからの乗り換えなので混乱も予想されたが、個人でAmazonを使っている従業員も多いためスムーズに進んだ。そして23年6月には全社導入に踏み切った。

 一部の従業員は従来の購買システムを使い続けていたが、使い方を説明する動画やマニュアルを作るなど現場の声を丹念に拾っていった。上尾氏は「絶対に全社的に効果あるから、折れるなよと」とプロジェクトメンバーに呼び掛け、導入1カ月後のアンケートでは従業員の7割強が満足と回答した。

「Businessプライム」が便利なワケ

 DNPでは、Amazonビジネス専用の会員制プログラム「Businessプライム」の「Unlimited」プランに加入している。年額27万円(税込)で、「当日お急ぎ便」などが無料で使えるプランだ。ユーザー数は無制限のため費用対効果も高い。購買の承認後に追加で送料がかかると会計処理が複雑になるため、送料が無料になるプランは有益だと上尾氏は話す。

 さらにBusinessプライムは、間接材DXにおける購買本部の懸念も解消した。Amazonビジネスのように従業員が直接商品を買うセルフ購買の場合、購買本部が基本的に介在しないプロセスだ。セルフ購買においても上長の承認が必要なものの、業務に関係ないものを買ったり私的流用したりすることができないようなシステムづくりが必要となる。「従業員は信用していますが、DNPの対象従業員は約3万人いますから、購買本部が最後の砦としてガバナンスを維持する仕組みが必要です」(上尾氏)

 その仕組みとして活用したのが、Businessプライムの機能「購買コントロール」だ。国連が定める商品分類コード「UNSPSCコード」を基に、例えば「ペット用品の購入はNG」など購入制限をかけられる。また「購買分析ダッシュボード」でデータ分析も可能で、同じ物品の購入状況などを見える化することでコストダウンの施策につなげられた。

photo Businessプライムについて

購買部門のDXが全社の改革につながる

 DNPでAmazonビジネスの導入を主導する上尾氏は、Amazonビジネスのカンファレンス「Amazon Business Exchange 2023」にも登壇。パネルディスカッション「『バックオフィスDX最前線』今から実現する業務改革の進め方」の中で、北海電気工事や三重大学の購買担当者とともに購買部門におけるDXの極意を熱く語った。

photo Amazon Business Exchange 2023に登壇した上尾氏

 「どこの企業でも、間接材の購入を本来の業務としている従業員はいないはずです。各自が本来の業務に集中できるような購買環境を用意することが、購買部門におけるDXの在り方であり、ひいては全社的な改革につながります。私たちは、それが“未来のあたりまえ”になる環境の構築を心掛けてDXを進めていきます」(上尾氏)

 DNPが実施した購買DXは、工数削減や人的リソースの適切な配分といった大きな成果を挙げた。それを支えたのが上尾氏の情熱と、Amazonビジネスだ。間接材のセルフ購買プロセスを取り入れたい、多様な商品を購入できる環境を整えたいと考えている企業は、Amazonビジネスの導入を検討してはいかがだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年9月20日