インフレ時代にAIを活用した価格最適化への挑戦 小売業でダイナミックプライシング戦略を成功させる鍵は?

PR/ITmedia
» 2025年03月06日 10時00分 公開
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 需給バランスに応じて価格を調整する「ダイナミックプライシング」は、宿泊業界や航空・鉄道業界では当たり前になった。近年では小売業界でも大きな注目を集め、海外の大手各社が取り組み始めているが、日本の小売業界で積極的に取り入れている企業はまだ少数だ。長く続いたデフレにより消費者が低価格を求める気持ちが強いことから、値上げのハードルが高い企業は多い。

 このような状況の中、社会情勢の変化に伴う燃料費や原材料費の高騰は加速する一方だ。仕入れ価格の上昇は企業の利益を圧迫し、従来の価格維持は困難を極める。ダイナミックプライシングは小売業界が直面する課題のブレイクスルーになるのか。小売業に適したダイナミックプライシングの在り方、その導入に向けた課題を整理し、経営戦略としての実現可能性を探る。

日本でダイナミックプライシングの普及が進みにくい2つの理由、どう解決する?

 日本の小売業でダイナミックプライシングのような価格変更を実践するハードルとして、富士通の村田寛和氏(Consumer Experience事業本部)は「人がやれる範囲の限界」「値上げへの心理的抵抗感」を挙げる。

村田氏 富士通の村田寛和氏

 マニュアルベースやルールベースでの価格変更は、計算と意思決定に大きな手間がかかる。そして、価格変更後の値札修正をはじめとした一連の業務も膨大に発生する。「業態によっては数万から数十万の商品点数に及びますが、その全てを価格設定担当者の知見に頼って最適価格を設定するのは極めて困難です」と村田氏は説明する。そのため、実際には一部の限られた商品のみに対して価格変更をするため、効果は限定的になってしまう。

 前述の通り、欧米と比較して日本の小売業では需給バランスに応じて大きく価格変更をするという文化がまだまだ定着していない。村田氏によると「値下げはともかく値段を上げると消費者の反発を買うのではないか」という不安は根強いようだ。客数が多少減っても利益を最大化できれば理論上は問題ないとしても、価格設定担当者がこのような大きな決断をするのは難しい。

 これらのハードルを乗り越えてダイナミックプライシングを推進するにはどうしたらいいのか。鍵となるのはAI技術だ。商品ごとの価格や売上額など過去の販売データをAIに分析させ、大量の商品に対して機会損失を最小限に抑えられた最適な価格を自動で算出できる。「売上額の最大化」「利益率の最大化」など、商品ごとの特性やビジネス目標に応じた価格戦略を柔軟に設定することも可能だ。

 AIベースのダイナミックプライシングは属人化の課題にも効果を発揮する。従来は「ベテランバイヤーの勘や経験則」に頼っていたところを、このようなシステムがあれば担当者の熟練度を問わず、最適価格を算出できるようになる。この取り組みは、AIを活用する新たなチャレンジであり、労働生産性や収益改善といったビジネスに大きく関わる。経営層がこれらの重要性を認識し、トップダウンでダイナミックプライシングの導入を推進することも一つの鍵だ。

AIによる自動価格算出を実現する「GK AIR Dynamic Pricing」

 富士通が提供する「GK AIR Dynamic Pricing」は、最適な価格の自動計算を可能にするAI技術を搭載している。開発元であるGK Softwareは富士通の連結会社で、欧州をはじめ世界66カ国に500社以上の導入実績を持つ、小売業特化のソフトウェア企業だ。

 GK AIR Dynamic Pricingは、GK Softwareが「Microsoft Azure」のクラウドインフラで運営するSaaSだ。クラウドサービスなので短期間かつスモールスタートで導入できて、価格最適化対象の商品を段階的に増やすこともできる。

 AIによる自動価格算出の強みは、計算の頻度と精度だ。人手での計算は、AIほど頻繁に繰り返すことができず、1回ごとの価格変動幅が大きくなる。村田氏は「業態にもよりますが、人の手による価格変更は、本来あるべき販売価格よりも心理的に低く設定しがちな印象です」と話す。AIによる自動価格算出は、1カ月単位や1週間単位で再計算を行う設定もでき、直近の販売傾向を考慮しながら、小売業に合わせたゆるやかな価格改定も実現可能だ。

図1 マニュアル・ルールベースの価格算出と、GK AIR Dynamic PricingによるAIベースの価格算出のイメージ(出典:富士通提供資料)《クリックで拡大》

 GK AIR Dynamic Pricingは他システムとの連携が容易であることもポイントだ。中でも電子棚札システムとの連携はメリットが大きい。AIが価格変更するたびに自動で電子棚札を一斉変更できるため、相乗効果を生み出すことができる。

 「コスト削減や業務効率化を期待して、経営層が電子棚札システムの導入を主導するケースがありますが、電子棚札システムだけではROI(投資利益率)を計算しにくいという意見をよく伺います。GK AIR Dynamic Pricingと組み合わせると、電子棚札システムの真価を発揮できるようになります」と村田氏は強調する。

 GK AIR Dynamic Pricingは、過去の販売実績データと、商品マスターデータ、その他外部データ(競合価格情報など)を取り込んだ上で、ユーザー企業固有の価格戦略を加味して価格を算出する流れとなる。

図2 GK AIR Dynamic Pricingのデータ連携イメージと処理の流れ(出典:富士通提供資料)《クリックで拡大》

 GK AIR Dynamic Pricingの計算処理時に指定できる「ユーザー企業固有の価格戦略」は、「売り上げ重視か、または利益重視か」の度合い、価格や利益率の上限と下限の制約条件など、マニュアルで設定できる項目も設けており実用的だ。また、値下げの最適化においても、競合価格のデータをGK AIR Dynamic Pricingに取り込んで価格算出することで、競合価格を意識した価格設定を行うことができる。

 GK AIR Dynamic Pricingが自動算出した価格はレビュー機能にて、管理画面の商品別一覧リストに「推奨価格」として表示される。価格設定担当者は商品ごとに「承認」「拒否」「検証」を選択もしくは一括反映させることで、最適価格の反映や上司の決裁を待つことも可能だ。「必要に応じて、AIが算出した価格ではなく、手動操作での価格変更も可能です。そのため、価格設定の業務アプリとしてもご活用いただけます」と村田氏は説明する。

富士通の幅広い技術と組み合わせ、スマートリテールを実現

 労働力に依存しない仕組みづくりを加速させている欧米では、GK AIR Dynamic Pricingが大いに注目されている。70万SKU(商品管理単位)もの商品を扱うEC専門ドラッグストアでは、GK AIR Dynamic Pricingを導入して約5%の売り上げ増を達成。実店舗とECサイトを併営するスポーツ用品店では、約75万SKUの商品を最適化した価格で販売し、利益率を約1.4ポイント改善した。「最初はスモールスタートで特定の商品から始め、効果を実感していただいてからは、対象商品の拡大やAIが算出した価格の自動反映を活用されており、GK Dynamic Pricingを最大限ご活用いただいています。収益の最大化、さらには従業員さまの価格検討・設定作業の大幅な改善を実現されております」と村田氏は言う。

 国内小売業では数社がGK AIR Dynamic PricingのPoC(概念実証)を始めている。「今はお客さまのデータを基に効果を試算する机上検証の段階ですが、間もなく店舗で実験的に運用し、効果を算出する予定です。GK AIR Dynamic Pricingは業務機能を備えた使いやすいソリューションですので、検証から稼働までスピーディーに進められます」と、富士通の松本良浩氏(Consumer Experience事業本部 エグゼディレクター)は説明する。価格設定をつかさどるGK AIR Dynamic PricingのAIモデル作成には、富士通のデータサイエンティストがサポートする。対象商品の絞り込みや各種パラメーターの設定などについて、ユーザー企業の戦略や業務内容をヒアリングしながら具体的に支援するという。導入時には必ず富士通のデータサイエンティストが担当に付くが「運用段階に入りましたら、ご自身で対象商品の変更、価格戦略の見直しも行えるなどご自身で設定の調整ができる明快な作りになっています。実際にデモをさせていただくとご納得いただけますが、それでも不安に感じられるお客さまにつきましても、ご要望に応じて導入後のサポートもご提供可能です」と村田氏は説明する。

 富士通はGK AIR Dynamic Pricingを自社技術と組み合わせ、スマートリテールを実現するトータルソリューションへと育て上げる意向だ。「ダイナミックプライシング価格で何個売れるかを需要予測システムに計算させ、その結果を物流システムにつないで配送計画を立案させる、といった統合的な価値を提供していきたいです」と松本氏は語る。

 「日本では労働力人口の不足、急速に進むインフレと仕入れ原価高騰、食品ロス削減などの社会課題が押し寄せています。企業の利益を最大化するために、そして従業員を守るためにも、消費者が納得できる形で、値下げの最適化と並行して値上げも視野に入れた価格調整の仕組みを取り入れることは重要課題です。展示イベントや日ごろのお客さまからのコメントなどを通して、欧米に次いで日本でもダイナミックプライシングの注目度は非常に高まっていると強く感じています。スモールスタートが可能なツールですので、いち早く試していただき、収益の向上やサステナビリティに貢献することを実感していただけたらと思います」と村田氏は意気込みを見せる。

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年6月18日

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