2022年に登場した「ChatGPT」を皮切りに生成AIが大きなブームとなった。毎日のように関連ニュースが飛び交い、多くのビジネスパーソンが注目している。その変化は速く、各社から新しいAIモデルが次々と登場している。さらに2025年は、人手を介することなく自律的にタスクを実行する「AIエージェント」も広がると予想されている。
生成AIがビジネスに浸透していく中で、成果を挙げる企業と活用が進まない企業のギャップが大きくなっている。一部の先進的な事例を除いては、「AIで何ができるのか」「実際の業務がどう変わるのか」を把握しかねている企業が多い。
こうした現状をブレークスルーできるサービスの一つが、M-SOLUTIONSが提供する「Smart at AI for kintone Powered by GPT」(以下、Smart at AI)だ。サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」でGPTなどの生成AIモデルを利用できるプラグインで、kintoneに保存されているデータをプロンプトに挿入し、GPTなどの出力結果をkintoneの任意の場所に保存できる。エンタープライズ向けの有料プランと無料プランを用意しており、2023年10月のリリース後、すでに600を超える企業がSmart at AIを活用している。
kintoneと生成AIを掛け合わせることで、ビジネスをどのように変えられるのだろうか。生成AIと日本企業を巡る現状やビジネスで生成AIを活用するヒントについて、M-SOLUTIONS社長 植草学氏とサイボウズ社長 青野慶久氏が語り合った。
――日本企業の生成AIの活用状況について、どう見ていますか。
植草氏: 以前は、AIを活用しなければいけないという危機感からまずは試験導入してみる、触ってみるという企業が多かったのですが、最近はどの業務にどう使うのかを調査して、ROIを回収できると確信したら導入するというステージに変わってきました。
青野氏: 積極的に取り組んでいる企業は、AIの導入が一気に進んでいます。一方、AI導入やDXの前にデジタイゼーションから始めなければならない企業もたくさんあると感じています。
――kintoneを利用している企業からはAI活用に関する相談が増えているそうですね。
青野氏: 「AI×kintone」の活用法を多くのパートナー企業が実現してくれています。
デジタイゼーションでは、AI-OCRを使って書類やFAXを読み込ませています。上流工程のところは、壁打ちのような感じでユーザーがうまく言語化できていない業務課題を伝えると、それを整理して要件定義に使えるレベルにして出力するものもあります。生成AIがコンサルタントのようになっているんですよね。パートナー企業が提供するサービスにもAIが組み込まれていて、ユーザーが入力するフォームを自動生成していますね。
――Smart at AIもAI×kintoneの先駆者ですね。Smart at AIのリリースから1年がたちましたが、進化したポイントを教えてください。
植草氏: 有料プランは、「Azure OpenAI Service」に加えて「OpenAI」や「Anthropic」「Gemini」など複数のAIモデルを利用できるようになりました。先ほどお話したAIエージェント機能もリリースしています。kintone内のデータを活用してプロンプトを設定することで、日次、週次、月次でバッチ処理をしてレコードを自動的に作成します。
kintoneアプリ内のデータからRAG(検索拡張生成)を構築して参照し、テキスト生成ができるようにもなりました。ハルシネーションの防止やより関連性の高い情報を参照した問い合わせ対応などにつながります。
「kintoneアプリ全体からデータを参照してほしい」というユーザーの声からアップデートを実施。FAQアプリを参照して問い合わせに対する回答案を生成したり、社内規約管理アプリなどから情報を検索したりできる(提供:M-SOLUTIONS)添付ファイル機能も強化しました。画像だけでなく、PDFや動画、音声ファイルなどを読み込めるようにしました。画像は複数枚アップできるので、製品のパッケージチェックや2つの画像の比較、分析なども可能です。PDF文書の要約や翻訳もできるので、使える幅が広がりましたね。
――導入企業も増えていますね。
植草氏: 東北コピー販売さまは、Smart at AIを新人教育に使っています。従来は先輩がOJTで取引先に送るメールの文章を教えていましたが、Smart at AIを使えば十分なレベルのビジネスメールが書けます。よほど心配なときだけ先輩に確認してもらうような形になったので、教育業務の負担を大きく削減できています。
金融機関では、住信SBIネット銀行さまにSmart at AIを導入していただきました。業務部門の事務などに利用されています。UAT(User Acceptance Test)と呼ばれる受け入れテストで使うシナリオの作成にもSmart at AIを利用されています。膨大な数のQ&Aがあるのでそれに対応したシナリオを作る必要がありますが、Smart at AIを活用した結果、作業負担を大幅に軽減できたと評価していただきました。
コード解析アプリにSmart at AIを組み込み、VBAやSQLのコードを読み込ませるだけで内容を日本語で説明できるようにもしています。このおかげで数時間かかっていたシステム仕様書の作成時間を1分に時短できたそうです。
生成AIはセキュリティ対策やガバナンス面が不安だという意見も聞きますが、使い方次第です。もちろん入力した情報をAIの学習に利用されたり、偏った内容を出力するAIを使ったりするリスクはあります。Smart at AIは、生成AIのAPIを利用していますが、その際に入力データを学習させないというオプトアウト申請をしています。ログはユーザーのkintoneにしか残りません。売り上げなどの機密データを入れても大丈夫です。住信SBIネット銀行のように、金融機関に利用していただけるセキュリティレベルを満たしているので、安心してお使いいただけます。
――M-SOLUTIONSとサイボウズはどのようにSmart at AIをはじめとしたAI×kintoneの活用をしていますか。
植草氏: M-SOLUTIONSは、Smart at AIを使って商談結果を営業担当者にフィードバックをしています。商談後、別のサービスを使って録画から文字起こしをして、テキストをkintoneに入れたらAIが分析し、商談の良かった点や改善点、確度などのコメントを生成します。その結果を営業担当者にプッシュ型で送信しています。チャットサービスと連携してチャットに送ることも可能です。これまでも同じことはできましたが、kintoneにわざわざ見に行く必要がなく、AIエージェントが自動で送ってきてくれるというのはとても快適です。
青野氏: サイボウズでは、カスタマーサポート部門が生成AIを一番活用しています。数万社の顧客から、毎日たくさんのお問い合わせのメールが届きます。AIがメール内容を基に過去の事例と照らし合わせて「こんな感じの回答でどうですか」と提案してくれるのです。後は人間がチェックして送るだけなので、生産性向上につながっています。対応品質も向上しており、ここ半年で生成AIの回答が熟練のレベルになってきています。
サイボウズには「みんな取締役」という制度があります。シンプルに言うと、みんなで役員にダメ出しをしようという企画ですが、これが毎回荒れるんです(笑)。厳しい意見が匿名で寄せられるのですが、中には感情的な投稿もあります。具体的な不満や要望が分からないと改善のしようがありません。
そこで2025年から、ダメ出しの仕組みに生成AIを導入しました。3つの生成AIツールを組み合わせており、当社では「三兄弟」と呼んでいます。1つ目の生成AIが意見を投稿する社員のモヤモヤした感情や考えを整理して、2つ目の生成AIが投稿者の現実と理想のギャップを整理して課題をまとめてくれます。そして3つ目は、表現を柔らかくした上で課題解決の提案とともに役員にフィードバックを送ってくれます。役員は傷つくこともなくなりますし、課題改善にもつながりやすくなります。
――今後、AI×kintoneやSmart at AIをどのように発展させていきますか。
青野氏: Smart at AIとkintoneを組み合わせて、AIの大衆化ができるといいなと思っています。ユーザーが意識しなくてもAIを使えるように、待っているだけでAIの恩恵が受けられるようなところまで機能を拡充したいですね。M-SOLUTIONSさんにもそうした点を期待しています。
植草氏: 恐らく、頑張ってkintoneや他のシステムからデータを集めてきて、Excelで集計してそれをPowerPointに貼り付けて……と工数をかけているユーザーもいると思います。その工数を削減できるように、AIがデータを自動で収集してHTMLや画像などビジュアライズされたものを出力できるようにしたいです。
将来的には、kintoneにデータを入れなければいけないという状況も変わると思っています。後1〜2年で、データはkintoneに自動で入ってきて、そこに問い掛けをすれば何でも答えてくれるようなプラットフォームになると考えています。5年もすれば、魔法の水晶玉のように、会社のことは何でも聞けるようになっているかもしれません。そこを目指して、私たちもSmart at AIを進化させていければと思っています。
――これからkintoneで生成AIを活用しようとしている企業にメッセージをお願いします。
植草氏: kintoneのメリットは数値を扱えるだけでなく、データをテキストでも保持できるところです。AIで活用しやすいデータになっているのです。Smart at AIを使って、kintoneに蓄積されている扱いやすいデータを生かしていただき、AI活用に踏み出してもらいたいと思っています。
青野氏: AIにチャレンジするベストタイミングを見極めるのは難しいかもしれません。しかし、そこを含めて楽しんでトライしてほしいと思います。少なくともかけたコスト以上のリターンは取れると考えています。
――ありがとうございました。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年5月2日