富士通が推進する全社DX 約12万人の組織改革と生産性の向上に選んだ“イノベーションを促進する”ツールとは「Canvas 24 リーダーシップサミット」レポート

PR/ITmedia
» 2025年07月15日 10時00分 公開
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 ビジネス環境が変化する中で企業が成長し続けるには、顧客に新しい価値を提供するイノベーションの創出が欠かせない。そのためには、新しいツールを導入したり働き方を大きく変えたりする必要がある。しかし、新しいツールや働き方を現場に浸透、定着させるにはどうすればいいかと頭を抱える経営層も多いはず。真の組織改革には経営陣のリーダーシップと丁寧なプロセス設計が求められる。

 国内外に約12万人の従業員を擁する富士通は、「フジトラ」(Fujitsu Transformationの略)というDXプロジェクトを立ち上げて組織改革に取り組んでいる。同社が組織改革を推進するツールの一つとして選んだのが、イノベーションワークスペース「Miro」だ。

 Miroはあらゆる規模のチームが共同作業できるさまざまな機能を持ち、世界中に9000万以上のユーザーがいる。直感的に操作できるシンプルなUIが特徴で、ホワイトボードに書き込んだり付箋を貼ったりする感覚でワークフロー全体をMiroの「ボード」で管理できる。参加する場所や会議形態を問わず、ボード上で意見交換も可能だ。

 本記事では、Miroが2024年10月31日に開催したイベント「Canvas 24 リーダーシップサミット」に登壇した富士通の小久保義之氏と轟木美穂氏の講演内容を紹介する。富士通が組織変革を実現するためにMiroを選んだ理由とは何か。同社の情報システムを管轄する小久保氏らによるツールの定着の取り組みをまとめた。

※組織名や肩書は発表当時のものです。

「フジトラ」で全方位にDXを推進

 デジタル化が加速して、業務効率化や生成AIを活用したシステムの導入がさまざまな業界で進んでいる。富士通は多様化する顧客ニーズに対応するために「IT企業からDX企業へ」というスローガンを掲げ、従来型のIT事業に加えて新しいデジタル事業を提供して顧客の事業変革を支援している。

 「DXやモダナイゼーションといった領域にビジネスをシフトさせるためには、自らのDXが重要」(小久保氏)との考えから始まったのがフジトラだ。製品やサービス、ビジネスモデル、業務プロセスや組織・企業文化を変革するプロジェクトとして2020年10月に開始した。

photo 富士通 小久保義之氏(デジタルシステムプラットフォーム本部 DX Officer)

 フジトラは「経営のリーダーシップ」「現場が主役/全員参加」「カルチャーの変革」という3つの軸を設定して、持続的に自己変革できる仕組みづくりと「経営」「事業」「IT/デジタル」の一体的な運営を目指している。プロジェクト開始から約4年が経過した現在は、約150の変革テーマが立ち上がっているという。

 富士通がフジトラと併せて進めているのが「Work Life Shift」(働き方の再定義)だ。テレワーク勤務制度を正式導入した他、本社移転を機にオフィスを再定義してサテライトオフィスの導入などを決めた。

 フジトラで従業員の働き方に対する意識を変え、Work Life Shiftで働く場所や環境を変革してきた同社。小久保は「これからは『ワークスタイルをどう変革できるか』が重要になる」と話す。

従業員の生産性40%向上を目指す

 富士通は2023年に発表した中長期経営計画で、1人当たりの生産性を3年間で40%向上させる(2022年度比)という目標を掲げている。1人当たりの営業利益を1.4倍にすると言い換えてもいい。従業員数を維持したまま、売り上げを増やしてコストを減らすためにワークスタイルを変革して従業員の仕事の質を高めることに注力している。

 その一環が「OneDigital」プロジェクトだ。Miroをはじめとするデジタルツールを全社で導入して、非定型業務の属人化や非効率の排除を目指している。

photo (出典:富士通講演資料)《クリックで拡大》

 富士通のMiroユーザーは約2万3000人。毎月のアクティブユーザーは8500人を超える(2024年9月時点)。富士通はMiroをどのように活用しているのか。轟木氏がMiroの導入、定着、今後想定する活用法を紹介した。

Miroの活用で一方通行の会議が双方向のコミュニケーションに

 轟木氏は、組織全体にMiroが浸透する過程として「個人利用」「チーム利用」「組織利用」の3段階があると紹介する。

個人利用:リモートワーク下でのコラボレーションが容易に

 同社の従業員がMiroを使い始めたきっかけは、コロナ禍によるリモートワークの導入だ。もともと富士通は「ホワイトボードがない環境は考えられない」(轟木氏)ほど、会議にホワイトボードを多用していた。アイデア出しや集中検討会を開く際は、ホワイトボードにアイデアを書いた付箋を貼りつけながら議論する会議形態が中心だった。

 ところがテレワークの導入でその会議形態が維持できなくなり、ビジュアルイメージの共有や作業の進行に影響が出ていた。各自がExcelを利用して共有事項の展開や共同編集機能を用いてアイデア出しをしていたものの、テキスト以外の表現が難しいこと、整形やサイズ調整に時間を要することが課題だったと振り返る。

photo (出典:富士通講演資料)《クリックで拡大》

 そんな中で注目が集まったのが、一部のチームが先行してデザイン設計やセミナーの企画、振り返りに利用していたMiroだ。画像やファイルを貼り付けて共有したりコメントを書き込んだりできるという使い勝手の良さが口コミで広まり、社内の利用者が徐々に増えていった。

チーム利用:一方通行の会議が「コラボレーション」に変化

 利用者が増えるにつれてMiroを使った会議が増加した。その結果「会議の質に注目する人が増えた」と轟木氏は話す。

 「Miroを導入した会議とそうでない会議の差を実感して、受け身の会議や会議中に内職をする人の存在に違和感を覚える人が増えました。『せっかく集まるなら活発に議論する場にしたい』との思いから、新しい会議スタイルを模索するチームや他チームとの会議で得たMiroの効果的な使い方を応用するチームが出てきました。

photo 富士通 轟木美穂氏(デジタルシステムプラットフォーム本部 マネージャー)

 使い始めて大きく変わったのはコミュニケーションの方法です。会議の参加者がプレゼンテーションツールを使って発表する場合、どうしても一方通行になりがちです。Miroを活用すれば全員の意見を同時に収集してリアクションやフィードバックを送り合うなど、双方向のやりとりが可能です。ボードで作業するため、誰かが議事録を書く必要もありません」

 続けて轟木氏はリアクションの重要性について語る。オンライン会議は対面に比べて参加者の表情が分かりにくく、メンバーは「相手がどう感じているのか」と考えて発言にちゅうちょする場面がある。逆に経営層やチームリーダーは、自分が気付かないうちに不安な思いを現場にさせている可能性もある。

 Miroを使えば発表中にスタンプ機能でリアクションを示し、コメントや付箋で感想や改善すべきポイントを指摘できる。

 「従来は少し不安を感じながら発言する場面がありましたが、Miroを導入したことで『あ、ここは良いと思っているのか』『これはちょっと違うのか』などと周りの反応を確認しながら発言できます。リアルタイムで質問できる点はもちろん、感情を容易に共有できる点は特に良いポイントだと感じています」

 Miroの有用性が口コミで広まって多くのチームが採用した状況を踏まえて、富士通は全社の共通ツールとしてMiroを正式に採用した。現在はアイデア出しやディスカッション、情報共有や報告会などの定型業務にもMiroを活用している。

photo デジタルシステムプラットフォーム本部が社内のIT施策をまとめたボード。施策の関係性を整理してカテゴリー別にまとめる場面などでMiroを活用している。関連情報や検討時のメモをボードに残せるため、検討から整理までボード一つで完結させられる(出典:富士通講演資料)《クリックで拡大》

 轟木氏が特にお薦めする機能が、メッセージを録画してボードに添付できる「Talktrack」だ。「タイミングが合わずコミュニケーションがなかなか取れない場合は、共有事項をTalktrackで録画してチームに展開しています。今回の発表資料は、ボードでまとめて話す内容をTalktrackで録音して小久保さんに共有しました。作業から結果の共有までMiroで完結させられる便利な機能です」

組織利用:全ての従業員がMiroを使いこなして生産性を高める

 先述した通り、現時点で従業員の約2万3000人がMiroを利用しているが、富士通が描くのは全従業員がMiroを使いこなす未来だ。

 「OneDigitalの目的は、全ての従業員がMiroを含めたデジタルツールを当たり前に使い、非定型業務の生産性向上を図ることです。そのために社内イベントでMiroを活用したり面白い使い方を共有したりして、Miroを使っていない、あるいは使いたくても使えない従業員にMiroに触れてもらう機会を提供しています」

 小久保氏は、デジタルツールの普及や定着で重要なのは「全ての従業員が腹落ちした状態でツールを使うこと」だと強調する。

 「組織をなりたい姿に進化させるには、従業員の不安や抵抗を解消して変化を受け入れるマインドセットを構築する『チェンジマネジメント』の考え方が重要です。ツールの導入や普及を担当する私たちデジタルシステムプラットフォーム本部が意識しているのは、チェンジマネジメントの資格認定プログラムを提供しているProsci(プロサイ)が提唱する『ADKARモデル』です。従業員が腹落ちしていない状態でMiroの活用を提唱しても、すぐに使わなくなってしまうでしょう」

※:「Awareness」(認知)、「Desire」(欲求)、「Knowledge」(知識)、「Ability」(能力)、「Reinforcement」(定着)の頭文字で、組織変革における5つのステップのこと。

データドリブンで働き方を改善

 Miroのさらなる活用に向けて同社が重視するのが会議だ。会議の準備や会議後の作業を「減らす」「辞める」「短縮する」という観点でMiroが大いに役立つと小久保氏は話す。

 「情報共有だけの会議はTalktrackで代替できます。生成AI機能『Miro AI』の活用や会議の進行そのものをMiroの『テンプレート』をベースにすることで効率化できるでしょう。Miroを使えば議事録の作成も不要です。Miroのさまざまな機能をフル活用すれば会議の時間や工数を大幅に短縮できるはずです。会議の効率化を図りつつ、『生産性の向上に貢献しているか』『従業員が効果を実感できているか』をデータで検証しながら働き方を改善しています」

 富士通の事例が示すように、Miroはイノベーションの創出や業務効率化を促進する心強い存在になるだろう。

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提供:ミロ・ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年8月3日