
日本の会計基準を開発する企業会計基準委員会が2024年9月に公表した「リースに関する会計基準」(以下、新リース会計基準)の対応が本格化している。新リース会計基準の“ひな型”となったIFRS16号の対応で100社以上のシステム構築実績を誇り、新リース会計基準に適合させたSaaS型新リース会計ソリューション「ProPlus+」を提供するプロシップの巽俊介は、状況を次のように説明する。
「2025年度に入り、企業からの問い合わせが急増しています。新リース会計基準が強制適用されるのは2027年4月に始まる会計年度ですが、システム対応には半年から1年を要すると見込まれます。強制適用開始までのスケジュールを考慮して、多くの企業が2026年度からのシステム対応を見据えて予算の確保やソリューションの選択に力を入れています」
そんな中で、検討する必要がある新たな課題が浮上しているという。それが2025年度の税制改正大綱と国税庁が2025年6月に公表した「改正法人税基本通達」によって詳細が明らかになった、「新リース会計基準と法人税のオペレーティングリース取引の不一致」だ。
新リース会計基準では、借り手側のオペレーティングリース取引が廃止されて全てのリース取引で資産と負債を計上することになる。これに対して税法上のリース取引は大きな変更がなく、これまで通り「売買処理」と「賃貸借処理」の2つの区分が維持される。新リース会計基準が求めるオペレーティングリース取引の使用権資産計上との不一致が生じることになるため、法人税申告書での調整が必要になる場合がある。
不一致を端的に見て取れるのが、「新リース会計基準における費用計上額と法人税法における損金計上額」だ。現行のリース会計基準ではオフバランスとなっているオフィス賃貸借契約(賃料月額50万円、5年契約の60回払い)を例に、その内容を見てみよう。
現行のリース会計基準は、賃料を支払うたびに「支払家賃」として費用計上する。この場合、月々の費用は50万円となる。税務上の損金もこれと同じため、申告調整は必要ない。
新基準では、契約締結時に賃料総額の現在価値を「リース負債」として計上し、同時に「使用権資産」として資産も計上する。その後、月々の支払いに応じて「支払利息」と「償却費」を費用として計上する。この例では、会計上の費用は支払利息の12万円と減価償却費の42万を合わせた54万円となる。
問題はここからだ。会計上は費用が54万円なのに対し、税務上は従来通り50万円しか損金として認められない。この4万円の差額を調整する必要が生じる。
さらに、会計上の費用は定額ではない。税務上は月々定額の50万円だが、会計上はリース債務残高が大きい契約の前半ほど費用が大きく、後半になるにつれて費用が小さくなる傾向がある。
この不一致を解消するために、税務担当者は複雑な調整作業を行わなければならない。国税庁は今回の改正通達を通じて、この会計と税務の数字のズレを法人税申告書の別表で調整するようにと、具体例を示している。
「調整は機械的に行えるため特別な知識は不要です。ただ、新リース会計と法人税法という2つのルールによる処理を並行しなければなりません。リースの数が多いほど手間は増します。改正通達の発表以降、リース管理に『Microsoft Excel』(以下、Excel)の使用を検討していた企業を中心に、ProPlus+の導入に関する問い合わせが増えています」
巽氏によると、今回の通達においてこの他にも法人税法に幾つか変更が加えられているという。その一つが「残価保証額の処理」だ。
現状の法人税法は、所有権の移転が伴わないファイナンスリースについて、資産総額から残価保証額を除いた額の減価償却処理を行う。一方で今回の税制改正により2027年4月以降に契約した同様の契約は残価保証額を控除せず、備忘価格1円まで償却ができるようになる。そのため、1円ではあるが計上可能な損金計上額は変更後の方が増える。
もう一つ、経理担当者の負担になると考えられているのが「消費税の扱い」だ。賃貸借処理のリースに関する消費税の扱いは今までと変更はない。
そのため消費税の処理は、税務上のリース資産(ファイナンスリース)は売買処理として一括控除、賃貸借処理(オペレーティングリース)は分割控除となる。適切な消費税処理に向けて両リースに関する従来の管理を維持し続けなければならない。
「今後は、会計面だけでなく税務面も考慮した対応策の検討が欠かせません。会計と税務が乖離(かいり)した時点で、自動計算する仕組みを入れないと業務が回らなくなる可能性があります」
新リース会計基準の強制適用後も、Excelで対応しようと考えている経理担当者も多いはずだ。しかし、1つの契約に対して会計と税務の2つの計算を走らせて差額を調整するのは非常に困難であり、非現実的だ。
新リース会計基準と税法の不一致という難題を解決する“現実解”が、煩雑な処理で大きな力を発揮するITツールの適切な選択だ。すでに述べた通り、プロシップのProPlus+は日本企業のIFRS16号の適用に向けて、満たすべき機能要件の対応のみならずこれまでの税制変更に対応してきた実績を誇る。
すでに活用を見込める機能が幾つも用意されている。まずは、複数基準に対応するための「複数帳簿対応」だ。
1つの契約情報から最大6つの帳簿を計算処理できる。日本基準、連結基準、税務基準といった異なる計算ロジックをシステムが自動で処理してくれる。帳簿ごとにリース料や割引率、リース期間なども保持可能だ。これによって、会計と税務の不一致による複雑な計算や申告調整の負担を大幅に軽減できる。
リース取引の種類を自動的に判定する「自動判定」機能も実装している。
新リース会計基準と税務基準は、それぞれ異なるロジックでリース取引の分類が規定されている。新リース会計基準においては「使用権リース」「少額資産リース」「短期リース」、税務基準では「所有権移転ファイナンスリース」「所有権移転外ファイナンスリース」「オペレーティングリース」「レンタル」だ。
税務基準は、リース料総額が現金購入価格の90%以上、あるいは契約期間が耐用年数の75%以上の契約を「ファイナンスリース」と判定する。判定には一定以上の知識と手間が求められるため、人手頼りでは判断ミスの発生は防げない。
ProPlus+の自動判定プロセスは識別ルールを基にリースの自動判定を実現した機能だ。担当者は複雑なルールを意識することなく、正確に処理できる。
この他にも、申告調整用の数値を確認するため、新リース会計基準における費用と、法人税における損金の確認帳票の開発にも着手している。経理担当者は調整額を簡単に把握でき、申告作業の効率化も期待できる。
新リース会計基準対応は待ったなしの状況だ。システム対応の他、会計方針の整理や新業務プロセスの検討などを考えると、巽氏は「今が本当にギリギリのタイミング」だと強調する。
今回の税制改正は、経理担当者の業務負荷を増大させる一方で、システム化を検討する大きな契機にもなっている。IFRSの適用企業も、日本の税務対応が複雑になることからシステムの見直しを迫られているという。
新リース会計基準への対応は、単なる法令順守にとどまらない。これを機に企業のリース資産管理をシステム化することで、将来にわたる経理業務の効率化と正確性の向上を実現できるだろう。
まさに今、多くの企業が次の一手を模索している。他社の動向を気にしながら、自社の対応が遅れていないかどうかと不安を抱く担当者も多い。しかし、過去の会計基準変更の教訓から言えるのは、先行して動き出した企業ほど円滑に移行を成功させているということだ。
プロシップは、新リース会計基準に加えて税務に関する知識習得を支援するセミナーも開催する計画だ。「当社はProPlusのユーザーを対象に、円滑な対応を支援する方針支援サイトも開設しています。その情報も円滑な対応に向けてぜひ参考にしてください」
複雑なルールを自動化するProPlus+は、経理担当者の負担を軽減するだけでなく企業が変革の波を乗り越えて未来へと進むための強力な味方となるはずだ。
本セミナーでは、デロイトトーマツ税理士法人藤井氏、監査法人トーマツ木村氏が、オペレーティングリースの借り手の会計処理について解説。その上で、借り手における法人税や消費税との取り扱いの違いを整理して具体的な金額例を用いて税務調整の方法を説明します。
後半ではProPlusの税務対応機能や新リース対応において重要となる方針整理の進め方の先行事例を紹介します。
開催日時:2025年9月24日(水)午後1時半〜午後3時
参加費 :無料
申込方法:事前登録制
開催方法:Webセミナー(オンライン)
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