Boxを「ファイルサーバの代替」で終わらせず、コンテンツプラットフォームやDX基盤として使いこなすポイントとは。Box JapanとMISOLのインタビューから探る。
多くの日本企業が導入するクラウドストレージサービス「Box」。これを単なる「容量無制限の共有フォルダ」と捉えるのはもったいない。Boxは「Microsoft 365」や「Slack」、「Glean」など1500以上のアプリとつながり、業務のハブとなる機能を備えている。チーム全員で一つの資料を同時編集できるのはもちろん、強固なセキュリティを保ち、社外のパートナーとスムーズに共同作業ができる。情報の活用基盤となる「コンテンツプラットフォーム」としてのポテンシャルこそが、Boxの真価だ。
しかし、本来の価値を引き出せず、ファイルサーバの代替にとどまるケースは多い。
背景には、利便性とガバナンスの板挟みがある。「働く場所を選ばず、いつでも最新の情報にアクセスし、社内外と自在に共有できる」という利便性を追求すると、管理の目が届きにくくなる。かといって制限を強めると部門ごとにバラバラなフォルダ構成が乱立し、人事異動のたびに権限管理が形骸化する「運用の壁」が立ちはだかる。
これに直面したIT部門は、膨大な権限の棚卸しやAPIによる個別開発といった「システムの維持・管理」に忙殺され、リソースが枯渇してしまう。その結果、業務プロセスの変革やデータ活用による新たな価値の創出といった、ビジネスの成長を加速させる施策に注力できずにいる。
こうした壁を乗り越え、BoxをDX基盤として機能させるにはどうすべきか。Box Japanと、Boxの販売パートナーであり、丸紅I-DIGIOグループの丸紅ITソリューションズ(以下、MISOL)に聞く。
Boxを導入した企業が最初に突き当たるのが「全社統一の運用ルールを確立できない」という壁だ。部門ごとに異なるルールが乱立し、管理負荷が増大する。組織変更や人事異動のたびに権限設定が複雑化して棚卸しが追い付かなくなる管理の形骸化は、多くの企業が抱える悩みだ。
MISOLの廣瀬翼氏は、企業から寄せられる相談について語る。
「ファイルサーバからBoxに切り替えると、『基幹システムとつなぎたい』『AIを活用したい』といったニーズが出てきます。これら全てをAPIによる個別開発で対応しようとすると、開発や保守の負荷が大きくなりかねません。これを防ぐには、個別開発に頼り過ぎない『運用の標準化』のアプローチが不可欠です」
Box Japanの滝澤友章氏は、日本市場特有のジレンマを指摘する。
「日本企業がBoxを選ぶ大きな理由は、セキュアな環境における堅牢(けんろう)性と直感的な操作性です。ただし日本は統制型の組織文化が強く、『誰が何にアクセスできるか』を厳密に管理したいというニーズが極めて強い。Boxの強みである柔軟なコラボレーションと、この厳格な統制をどのように調和させるかがポイントです」
自由な運用と厳格な統制のギャップを埋めなければ、Boxは「便利なファイル置き場」の域を出ない。DX基盤として真の価値を引き出すためには、戦略的な運用が求められる。
Box JapanとMISOLが重視するのは「Boxを導入すること」ではなく、「使い倒せる状態にすること」だ。長年蓄積した知見と開発力を武器に、MISOLはBoxの標準機能でカバーし切れない日本特有の運用の“かゆいところ”に手が届く支援体制を確立している。同社のカスタマーサクセスチームを中心に、運用課題の整理、実効性のあるルールの作成、それらを仕組み化するソリューション開発を一貫して支援している。同社の稲垣宜彦氏は語る。
「ニュースレターでの最新情報の解説はもちろん、新機能が出るたびに検証して日本企業の統制環境でどのように使えるか、どんな懸念があるかをまとめたユースケース資料を用意しています。ユーザーとの定例会も開催し、常に伴走する姿勢を大切にしています」
この地道な支援が、Box定着を後押しする。廣瀬氏は、ある製造業のユーザーで経験したエピソードを振り返る。
「トップダウンで導入を進めたものの、一部の拠点で『なぜBoxを使わなければならないのか』と強い反発がありました。そこで私たちが現地に出向き、メリットや事例を丁寧に説明しました。その結果、1200ライセンスを導入していただき、今ではその拠点が全社で最も積極的にBoxを活用する部門に変わっています」
MISOLの神髄は、どのような目的で階層構造やルールを定めてBoxを運用すべきなのかという全体設計から深く関与する点にある。解決すればユーザーがBoxを使い倒せて、業務効率化も進むとなると、どのような課題にも全力で向き合う。この基本姿勢こそが、多くのユーザーから信頼を獲得している理由だ。
ルールだけでは運用が回らない部分に対して、MISOLは「Boxエコシステムソリューション」(以下、エコソリューション)を開発し、運用の自動化を推進している。開発の方針について「まずはBoxの純正機能で要件を満たせるかどうかを検討した上で、複数のユーザーに共通するニーズだと判断すればエコソリューションとして製品化しています」と同社の山口望氏は説明する。
こうして生まれた製品の一つが、人事異動に伴うアカウント管理、フォルダ生成、権限付与を自動化する「Suite for Box CSV Sync Cloud」だ。人事システムと連携して大量の変更設定を高速で処理するため、IT部門の負荷を大幅に軽減できる。
セキュリティ統制を自動化する「Suite for Box Light CASB Cloud」も、複数の要望を受けて生まれたものだ。「パスワードなしのオープンリンクの共有禁止」といったポリシーに反する挙動をログ監視で検知すると、Boxの設定を自動で修正し、ガバナンスを担保する。
もう一つの主力製品が、外部共有の状況を可視化できる「Suite for Box 棚卸Reporter Cloud」だ。「共有状況のログを集計して、部署ごとのレポートをメールで共有できます。監査などで『誰がどこにアクセスできて、承認者は誰か』を説明する際にも有用な製品です」(山口氏)
Box運用の標準化は、現状維持のためのルール作りでは決してない。真の価値は、AI時代の恩恵を最大限に受けるための土台作りにある。その象徴とも言えるのが、Boxに蓄積された情報を生成AIが理解してユーザーとの対話や分析を可能にする「Box AI」だ。
ただし、Box AIは“魔法のつえ”ではない。AIが精度の高い回答を生成するためには、読み込ませる情報の質が鍵を握る。
「AIはデータの正誤の区別がつきません。『最終版』『FINAL』などとファイル名を付けて別ファイルを作る習慣を絶ち、Boxのバージョン管理機能を使い倒すべきです。一つのファイルに情報を集約することが、AI活用の大前提となります」(廣瀬氏)
参照頻度の低いデータをAIの参照範囲から外す「Box Archive」や情報をポータル化する「Box Hubs」も有効だ。AIが情報の検索や要約を担うようになれば、人間によるサポートの在り方も変化する。
「AIがさらに普及すると、カスタマーサクセスの役割も変わります。AIが正しく回答を返せるようにコンテンツをどのように整理してAIに渡すべきか、AIに負けない価値を提供するために準備しなければなりません」(稲垣氏)
Box運用を標準化・仕組み化することの価値は、単なる工数削減にとどまらない。IT部門が日々忙殺されているアカウント発行、アクセス権の変更、監査のための利用状況の集計といった業務は、システムの現状を維持するための「守り」の業務だ。これらが属人化して放置されていると、IT部門のリソースは現状維持で枯渇してしまう。
しかし、MISOLのカスタマーサクセスやエコソリューションなどを活用して工程を削減できれば、IT部門は「守り」の業務から解放される。新たに生まれた時間的・精神的な余力が、ビジネスを加速させるAIの導入支援や業務プロセスを変革するDXといった「攻め」の施策に注力する原動力になる。
IT部門がビジネスの変革者に進化するための展望を、廣瀬氏は語る。
「今後は中小企業にもオンラインコンテンツを活用して、私たちの数々の失敗を乗り越えて培ってきた『運用の型』を効率的に提供できる体制を強化します。Box専任のエンジニア集団が検証を重ねて得た深い知見と、さまざまな業界での支援によって蓄積してきた成功ノウハウを横展開することで、日本企業全体のDXを底上げする一助になりたいと考えています」
滝澤氏は、MISOLとの協力体制について期待を込める。
「AIの時代に入り、企業が安心して意思決定できる環境をつくることが私たちの使命です。Boxの進化とMISOLの支援体制やエコソリューションが日本企業を支えます」
Boxの運用に悩むIT部門は、まず「運用の標準化」から着手するとよいだろう。その際、代理店の選択は極めて重要だ。専門パートナーと協力して仕組みを整えることが、AI時代を見据えた競争力強化の第一歩となる。
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