愛すべき二つ目小僧――コダック「EasyShare V570」:矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(2/2 ページ)
海外メーカーは時に突拍子もない製品を見せてくれる。コダックの2レンズ&2CCDデジカメ「EasyShare V570」もそうだが、このV570は23ミリ専用機として楽しむべきだろう。
ウルトラワイドレンズでフレーミングを学ぼう
発売年が新しいだけあって、スペック的な問題はない。画素数も5メガピクセルとそこそこあるし、2.5インチの液晶も時代を感じさせないものだ。
さてV570で遊ぶとなれば、23ミリ/F2.8のウルトラワイドレンズを使い倒すしか無いだろう。ズームレンズの一部としての23ミリではなく、23ミリの単焦点レンズであることに意味がある。
人は写真を撮るとき、ズームレンズだと無意識にレンズをズームさせてフレーミングをしてしまう。これでは本当のフレーミングは学べない。単焦点レンズの場合は自分が前後に動き、あるいはしゃがんだりして絵を作って行かざるをえないから、体感としてフレーミングのやり方が解っていくし、レンズの画角も体得できるのだ。
その点、この23ミリはピントが80センチ〜無限大にあうので、ピントのことを気にせずじっくりと絵作りに集中できるだろう。またV570はアスペクト比3:2のモードを持っている。画素数は4.4メガに落ちるが、ウルトラワイドを使うならこちらのモードのほうがよりワイド感が出ていい結果が得られる。
また、このぐらい広い画角のレンズは、初級者の手に負えるものではない。なかなか様になる絵を作るのは大変なのだ。しかし、だからこそ上達したときの喜びは何物にも替え難いだろう。そういう意味で「撮りがいのある」レンズだと言える。
ポケットにつっ込んでも邪魔にならないデザインのV570は、持ち歩いてもストレスがない。天気の良い日の散歩には最適だろう。23ミリのワイド専用機と割りきって、ちょっと上級者のスナップ写真に挑戦してみるのも楽しいだろう(※この文章中のレンズのミリ表示は、すべて35ミリ判換算です)。
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