デジタルの迷宮に差す光明――サイバーショットU20:矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(2/2 ページ)
携帯電話カメラとの競争に負けた――サイバーショットUシリーズをそう評するのは簡単だが、ガジェット魂を刺激する存在感は今でも健在。シンプルであるために、デジタルの迷宮に迷わず、日常を淡々と写す楽しみがある。
日録(にちろく)のススメ
さてこの個性的なU20とどうやって遊ぼうかと考えた時、すぐに思いついたのは「日録」だった。写真の本質に触れる、大切な時間だったと今も感じている、あの頃のこと。
日録(にちろく)とは僕が夜間の写真学校に入って初めて与えられた課題だ。そんなに難しい事ではない。ただ24時間カメラを自分のそばに置き、自分が見た物をただただ記録してゆくだけのことだ。
フィルムの時代なので写真のプリントには金がかかる。だから36枚撮りのフィルムを六切のベタ焼きにして、不要なカットは抜いて、カッターで24ミリ×36ミリの写真を切り抜き、台紙に貼って下に短いコメントをつける。
これが1カ月分ぐらい溜まると非常に面白いのである。その時の自分の感情、そしてそれを無意識にどのように写真として残したのかが手に取るように分かる。写真が小さい分、鳥観図のように全体が見渡せるのだ。
U20は、日録には最適なカメラではないだろうか。カメラ付きケータイでいいじゃないかという考えもあるだろうが、ここは最低限デジカメで行きたい。ケータイはしょせんケータイ、やはり撮影時の心構えに若干の差があると思う。何よりU20はカメラを感じさせないさり気なさがいい。無意識に最良の写真が撮れている可能性が高いのだ。
撮った写真はPCに転送してひとつのフォルダにまとめる。時系列で並べてファイル名の部分をコメントとする。これを大アイコンぐらいの表示で全体を眺めると今まで見えなかったものが見えてくるのだ。これが「日録」の面白さだ。例えばこんな感じだ。
こういうふうに写真とコメントをまとめてみて、印象としてはツイッターに近いな、と思う。写真表現もリアルタイムで発信することによってなにか別の意味を持ってくるような気がする。
U20の生き残れる余地は充分にある。でも、もっといいのは新しいUシリーズが発売されることなのだけどね。
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