ハイクラスコンデジ総チェック(4)――気になる操作性を確認する(2/2 ページ)
いわゆる「ハイクラスコンパクトデジカメ」を集めてみようというこの企画、最終回の今回は、このクラスで一番気になる使い勝手を検証する。
PowerShot S100
PowerShot S100は極めてコンパクトなボディに大きな液晶モニタを搭載しており、一見するいわゆるコンパクトデジカメっぽいのだが、使ってみるとやはりハイクラスコンパクトなのが分かる操作系を持っている。
先々代にあたるPowerShot S90で初採用された鏡胴周りのコントローラーリングがポイントだ。適度なクリック付でくるくる回るダイヤルをここに取り付けたアイデアが素晴らしい。非常にコンパクトなボディながらハイクラス機らしい操作を楽しめるのはこのリングがあるからだ。
このリング、一応撮影モードに応じてデフォルトの機能を定められているが、カスタマイズ可能なのがいい。背面のRING FUNC.キーを押すと機能を割り当てられる。ISO感度を割り当てるのがポピュラーだが、他にもステップズームやダイナミックレンジ補正などいくつかの機能をセット可能だ。リングに割り当てる機能は固定でいい、という人は、RING FUNC.の機能をカスタマイズすることもできる。
コントローラーリングと背面のロータリーホイールの2つをうまく使うのがキモなのだが、両者を入れ替えて、たとえばリングを露出補正に、背面のホイールをISO感度にすることもできる。
細かい設定を行うときは、ホイール中央にあるFUNC.SETボタンを使ってメニューを出す。さらに細かく設定したいときはMENUキーなのだが、たとえば、AFモードの切り替えなど比較的使いそうなキーがMENUの中にいたりするので注意が必要だ。でもまあこのサイズのカメラとしてはなかなかこなれた操作系といえよう。
細かい事だけど、上に紹介した3モデルもそうだが、ストラップホールが両肩にあって、首から両吊りできるのもよい点かと思う。
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COOLPIX P310
普及型モデルと同じ1/2.3インチセンサーを搭載しながらP310がハイクラスコンパクトのジャンルにいるのは、明るいレンズとハイクラスを意識した操作系にある。
これもまた上部の電子ダイヤルと背面のホイールの2つを組み合わせて操作できる。絞りやシャッタースピードをさっとセットできるし、プログラムシフトもできる。
背面は非常にシンプルで特にカスタマイズの余地はないが(ちょっと残念)、前面のレンズ下あたりにFnキーがあり、そこに機能(ピクチャーコントロール、ISO感度、AFエリア選択など)を割り当てればよく使う機能をさっと呼び出せるようになる。
AFエリアには自動的に被写体を見つける「ターゲットFAインドAF」もあるし、ISO感度には感度の上限をセットできる感度制限オート機能もある。ただ、いくつかの撮影時によく使う機能にさっとアクセスできるメニュー(キヤノンのFUNCやリコーのADJ.のような)も欲しかったかなとは思う。その辺がちょっと残念。
今回唯一のUSB充電対応機種だが、充電器を選ぶ(パソコンや付属ACアダプタはOKだが、市販のモバイル機器用USB出力ACアダプタのたぐいに対してはけっこうシビア)なので、外出先で充電を考えている人には注意が必要だ。
ハイクラスコンパクト、こんな人がこんな風に使うのがいい
今回は、買いやすいハイクラスコンパクトを5機種ピックアップしてみた。
基本は「コンデジでは画質面で物足りない」、「コンデジはフルオートで撮るユーザーをメインに考えているので、ちょっと凝ったセッティングを求めるとメニューからあれこれ探したり、タッチパネルを何度も押したりしなきゃいけないのでストレスが溜まる」という人にお勧めだ。
コンデジを使っていたけど、もうちょっと撮影を楽しめるカメラが欲しい、でも、レンズ交換式まではいらないというステップアップ系の人。そういう人には今回のどのモデルもお勧めだ。
どれもレンズ交換型に比べてコンパクトで、どれもデジタル一眼の標準ズームよりレンズスペックが高い。標準ズームレンズは以外にマクロに弱いしレンズもF3.5〜5.6と暗いし、かといって交換レンズを用意するとかさばるし高くつくしレンズ交換が面倒、という人もこの辺から手をつけてみるといい。
普及型コンデジに近くて、でも使ってみるとワンランク違うなってのをもとめるならPowerShot S100が一番無難だ。アートフィルタに心ひかれたならXZ-1もいい。もともとカメラ好きでいろんな撮影をしたいのだけど、手軽なレンズ一体型がいいという人。そういう人はメインに撮るターゲットに応じた選び方をすればいい。撮るという行為を楽しむならCOOLPIX P310やFUJIFILM X10、GR DIGITAL IVがお勧めか。
メインカメラとしてデジタル一眼を持っているのだが、セカンドカメラ、あるいは常用カメラとしてコンパクト機が欲しい、という人もハイクラスコンパクトを選ぶべきだろう。デジタル一眼とまではいかないが、普及型コンパクトより画質や操作性に期待できる。実際、デジタル一眼とハイクラスコンパクトの両方を持って行くと、その時々で使い分けられて便利なのだ。
面白いのはハイクラスコンパクトといっても様々な種類があること。今回取り上げた以外にも、富士フイルムの「FUJIFILM X100」、ニコンの「COOLPIX P7100」、キヤノンの「PowerShot G1 X」、これから発売されるシグマの「DP2 Merrill」など数多い。
これらは価格的にエントリー向けミラーレス一眼とかぶってくるのだが、今の時代、普及型コンデジと、中級機以上の一眼レフの間にある、意外に大きな溝に各社がミラーレスや高級コンパクトも含めて、様々なスタイルのカメラを提案していて、一番面白い領域になっている。
ハイクラスコンパクトにはレンズ一体型ならではの良さが際だつので、各社からもっと出てきてくれるといいなと思っております。
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