あこがれを手にする前のフルサイズ一眼入門(後編)――キットレンズで楽しむ人気のフルサイズ機(2/2 ページ)
画質やボケを優先するなら高価な大口径レンズを選びたいが、フルサイズ一眼には高級レンズが必須というわけではない。キットレンズなど普及価格帯のレンズを使って、ボケを生かしたポートレートを撮ってみよう。
キットレンズ+低価格単焦点レンズが狙い目
もう1台はキヤノン「EOS 6D」だ。撮像素子に有効2020万画素のフルサイズCMOSセンサーを、画像処理エンジンに「DIGIC 5+」を搭載しながら、同社のフルサイズ機では最小・最軽量を実現したモデルである。
EOS 6Dは、より上位の製品「EOS 5D Mark III」に比べて価格が安い分、ファインダーの視野率やAF測距点の数、液晶サイズなどいくつかのスペック面で少々見劣りがする。外装もすべて金属ではなく、トップカバーは樹脂素材だ。だが、実際に手にすると安っぽい印象は特になく、むしろ高品位な質感としっかりした剛性感が漂っている。ファインダーやAFについても、予想以上に快適だった。シビアな撮影状況以外では不満を感じることはないだろう。D600と同じく、フルサイズ機ながらシャッター音やミラーショックが小さい点にも好印象を受ける。
機能面で気に入ったのは、ライブビューリモコン機能だ。これは、カメラとスマホをWi-Fi接続することで、スマホの画面上にライブビューを表示し、それを見ながらスマホ側の操作でシャッターを切る機能。リモート撮影はもちろん、スマホとカメラを一緒に手に持ち、バリアングル液晶のような使い方もできる。
今回EOS 6Dで使ったレンズは、レンズキットに付属する標準ズーム「EF24-105mm F4L IS USM」と、比較的人気の高い望遠ズーム「EF70-200mm F4L IS USM」、低価格の単焦点レンズ「EF50mm F1.8 II」の3本だ。このうちズームの2本は、光学性能と使い勝手のバランスが取れたレンズ。高品位な「Lレンズ」ながら比較的求めやすい価格もありがたい。
さらに明るいレンズやもっと高価なレンズを使用すれば、より大きなボケやより高いシャープネスを表現することも可能だろう。フルサイズ機に限らないが、画素数が2000万画素を超えるような高精細なカメラは、レンズの光学性能の良し悪しが写真にはっきりと反映されやすい。一般的に、高価で大口径なレンズであるほど、描写性能がよくなる傾向があるので、とにかく高画質を追求したいなら、予算(と体力)が許す限り高級なレンズを検討するといい。
といっても、安価なレンズでは駄目というわけではない。安価でも描写力が高く、フルサイズの性能をきっちりと引き出せるレンズもたくさんある。例えば下の写真は、実売1万円程度のチープな単焦点レンズ「EF50mm F1.8 II」で撮ったもの。2枚とも開放値を使用したが、ピントがあった部分の解像感はなかなかのもの。キットレンズに比べて開放値が明るいので、フルサイズならではのボケ表現も十二分に味わえる。
今回、D600では単焦点レンズを試していないが、もちろんニコンにも「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」など低価格ながら描写性能に優れたレンズがある。同レンズはD600のダブルレンズキットとして買うことも可能だ。
初めてフルサイズ一眼を体験するユーザーにとっては、キットレンズを選ぶのがもっとも一般的で無難な選択だが、それとは別に低価格で軽量な単焦点レンズを1本購入すると、フルサイズでの撮影がいっそう楽しくなるだろう。あるいは、あえてキットレンズを外して、単焦点レンズ1本で挑むのも面白い。
(モデル:佐藤愛美 / オスカープロモーション)
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