重量815グラムの標準レンズが生み出すボケと切れ味――シグマ「50mm F1.4 DG HSM」:交換レンズ百景
携帯性よりも光学性能を重視し、トータルバランスよりも圧倒的なパフォーマンスを追求する。そんなこだわりで作られたシグマの大口径単焦点レンズの描写をフルサイズ機との組み合わせでお届けする。
開放値から安心して使える描写性能
光学性能にこだわったシグマArtラインの新顔として「SIGMA 50mm F1.4 DG HSM」が登場した。同じArtラインの単焦点レンズといえば、2013年に発売された「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM」がカメラメーカーの純正レンズに勝るとも劣らない絶品の写りで高評価を得たが、今回の製品はその流れをくむフルサイズ対応の大口径単焦点レンズである。
製品名が示す通り、焦点距離は50ミリで、開放値はF1.4に対応する。同社は2008年に同じ焦点距離と開放値を持つ「SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM」を発売しているが、今回のモデルはデザインと光学系を一新したものだ。
外装は、ツヤ消しの黒を基調にした精悍なデザインを採用する。鏡胴部は金属を多用した高品位な作りで、フォーカスリングには指になじむラバー素材を配置。リングにはほどよいトルクがあり、マニュアルフォーカスの操作は快適に行える。
レンズの重量は、50ミリの単焦点としては破格の815グラム。既存レンズ「SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM」に比較した場合、重量も全長も約1.5倍に増加している。ちなみにキヤノンやニコンの純正レンズなら、50ミリF1.4のレンズは280〜290グラム。実に約2.8倍もの差があることになる。
これほどの重量があるのは、光学性能を優先して設計したため。絞り開放値からシャープネスの高い像が得られ、被写体の質感をリアルに再現できる。開放値では周辺減光がやや見られるものの、それでも大口径の単焦点レンズとしては少なめだ。また、歪曲や色収差はほとんど気にならず、このクラスのレンズで生じやすい、開放値でのハロや色のにじみ、口径食なども目立たないように低減されている。
超音波モーターによるスピーディなAF駆動
50ミリという焦点距離は万能性が高く、身近なスナップショットから風景、静物、ポートレートまで幅広い用途に使いやすい。最短の撮影距離が40センチと短いこともうれしいポイントだ。ちょっとした小物や植物などを撮るのに役立つ。
AFは静かにかつスピーディにに作動する。AFの精度については試用した範囲では特に問題はなく、ほとんどのカットを狙い通りのフォーカスで撮影できた。被写界深度が極めて浅い、F1.4の大口径レンズでは正確なAFで撮影できることが何よりありがたい。
今回は、主に散歩がてらのスナップ撮影を楽しんだ。大きくて重いレンズとはいえ、ほかの交換レンズを持たず、この1本をカメラに付けたままで持ち歩くなら、個人的には許容できる範囲の大きさと重さだ。逆に言うと、たくさんのレンズを使いたい撮影用や、荷物の量を減らしたい旅行用で使うには気合いと覚悟が必要になる。それにしても、とろけるようなボケとシャープな切れ味の両立を見れば、無理してでも持って行きたくなるのも事実である。
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