裁断なしのデジタルデータ化――お手軽“自炊”スキャナ「Simply Scan A3」を試すそれゆけガジェット調査隊(2/2 ページ)

» 2011年03月08日 11時00分 公開
[池田圭一,ITmedia]
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付属の専用アプリで満足できない場合は……

 対応OSはWindows XP SP3以降。付属の専用アプリケーション「NOVACスキャナー」をインストールすることで使えるようになる。カメラからのイメージはUSB 2.0を介して、動画(YUY2形式)として出力され、640×480ドットであれば30fps、1600×1200ドットでは6fpsに低下、最大の2592×1944ドットでは2fpsで表示される。

 NOVACスキャナーでは、スキャン(撮影)範囲や出力フォーマットなどを設定し、シングルスキャンあるいはタイマースキャンを行う。タイマースキャンは、3〜10秒の任意の間隔で自動的に連続スキャンを実行するものだ。例えば本を取り込みたいときは、4〜5秒間隔でタイマースキャンを実行しておき、そのタイミングに合わせて手でページをめくってやれば連続して取り込めることになる。

NOVACスキャナーでイメージサイズを指定。取り込みサイズが小さいとモニター表示の更新速度(fps)が向上するため、ピント合わせ時に利用したい(写真=左)/取り込みイメージの保存先、スキャン間隔などを指定。原稿から手が離せないときは、タイマースキャンを使うのがお勧めだ(写真=右左)

 書籍を「裁断→スキャン」してデジタルデータ化する「自炊」では、書籍を鮮明にスキャンするために、ページごとに断裁処理をした上で、ページとカメラを平行状態に置いてスキャンする手間が掛かる。しかし、密着型のフラットベッドスキャナのように読み取り面から浮き上がった部分がうまく写らない、ということは往々にして起こる。

単行本スキャン時の様子。トリミングでカットできるよう指で押えているが、平とじ部分がどうしても膨らんでしまい、ピントがぼけてしまっている

 一方、書画カメラタイプのイメージスキャナが得意とするのは、立体物の取り込みである。しかし、書籍などをスキャンする際に浮き上がってしまうとピントが合わないため、なるべく平らになるように手などで強く抑える必要があるのだが、そうすると自分の手が写り込んでしまうことになる。余白部分を押えると力を均等に加えることができず、どうしても膨らみがのこってしまう。書籍を大事にしながら、短時間で非破壊的スキャンするのはなかなか大変なことだと身にしみた。

 なお、NOVACスキャナーでは、取り込み時の画像調整は行なえず、カメラの出力イメージ(明るさ、彩度、色合いなど)はすべて自動調整される。調整する手間が省けてよいともいえるが、ページをめくったときに挿絵などがあると取り込む明るさが変わってしまうこともある。

 また、BMP/JPEG/TIFF形式で保存した画像に対して、トリミングや回転などの処理、グレースケールやディザ変換、トーンやガンマ値の調整などが行なえる。ただし、複数イメージに対しての一括処理機能などは用意されていないため、ページ数の多い書籍などをスキャンすると大変である。

取り込み後の処理一覧(写真=左)/電子ペーパー向けデータの作成に用いたいディザ処理。プレビュー機能がないのでどのような結果になるのか分からなくて悩む

 ディザなどの処理をみるとメニューが英語のままだったりとやや不親切なところもある。“自炊”を前面にうたうのであれば、表示デバイス(液晶や電子ペーパー)に合わせてのパラメータ設定などが用意されているとよい。

 ただ、注目したいのは、対応OSではドライバがプラグ&プレイで自動的に導入されるという点だ。USBで接続するだけで、OSからはWindowsイメージングデバイスとして認識される。これはつまり、イメージングデバイス対応の一般的なキャプチャー用フリーソフトなどがそのまま利用できるということだ。

 試しにCosmosoftの「WebCam静止画・連写ツール(CamCapt-Interval)」でNV-PS500Vを認識させると見事に動作し、しかも、NOVACスキャナーでは不可能だった画像の調整も行なえ、連続撮影もキメ細やかに設定できた。これはよい点だ。

カメラのプロパティで、明るさ、コントラスト、色合いなど入力イメージの細かな調整が可能。動画カメラ特有の、外部照明によるちらつき補正機能もある(写真=左)/CamCapt-Intervalのオプション設定。詳細な複数連写設定のほか、動体監視やFTP転送機能なども装備、遠隔監視カメラ的な使い方もできる

 冒頭にも述べたとおり、NV-PS500Vはイメージスキャナというより、高画質Webカメラである。500万画素クラスのWebカメラが幾つか登場する中、折りたためる支持アームやマットが付いているとはいえ、実売価格で2万3000円前後の同製品は買い手を選ぶかもしれない。付属のソフトウェアの今後のバージョンアップを期待しながら、この市場の行方を見守りたいと思う。

筆者紹介 池田圭一

1963年生まれ。IT系雑誌・Web媒体への企画および執筆、天文・生物など科学分野の取材記事などを手がけるフリーランスライター。デジイチ散歩で空・月・猫を撮る日常。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。主な著書に『失敗の科学』、『光る生き物』(技術評論社)、『〜科学を遊ぶ達人が選んだ〜科学実験キット&グッズ大研究』(東京書籍)、『やっぱり安心水道水―正しい水のお話』(水道産業新聞社)などがある。


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