電子書籍貸し出しの規制について理解する

図書館での電子書籍貸し出しはどのような方向性に進んでいくのだろうか。

» 2011年07月27日 11時00分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 2011年2月、出版社のHarperCollinsは、図書館界を動揺させる驚くべきアナウンスを行った。電子書籍の貸し出しを26回までに制限し、その後、貸し出しライセンスが切れた電子書籍を図書館は再度購入しなければならないというのである。控えめに言っても、図書館は悲しみと怒りに包まれ、電子書籍であれ紙書籍であれHarperCollinsの出版物の完全なボイコットを求める論争の一部の追従者を伴ってWeb上での抗議はほとんど悪意と紙一重であった。


 図書館は貸し出し目的の紙書籍については購入しているが、電子書籍についてはライセンス供与をしているということを理解する必要がある。従って、どんな電子書籍であれDRMが埋め込まれていれば規制可能であり、図書館の利用者にのみ提供している書籍を貸し出しできること、そして利用者が電子書籍をコピーあるいは再流通できないようにすることを確実にしつつ、図書館に電子書籍を貸し出し可能にしているのはそもそもDRMを利用しているからであり、その状況は皮肉でしかない。

 しかし、HarperCollinsの決定は、それが図書館側と出版社が代理を務める著者側の利害のバランスを取るという事実に対するHarperCollins側の説明にもかかわらず、少なくともその動きに反対する多数の目にとってかなり恣意的に映ったようだ。電子書籍データが完全に利用できなくなる前の貸し出し可能回数は、紙書籍が破れたり擦り切れたりし始めて、貸し出ししている図書館がもう一冊、同じ紙書籍を購入せざるを得なくなる前に、何回貸し出し可能なのかに基づいているようだ。

 米国図書館協会の年次会議(ALA 2011)で、HarperCollinsは米国図書館協会の作業部会との公開討論に熱心に参加し、作業部会の電子書籍貸し出しとライセンス供与に関するFAQサイトで出版社側の視点を伝えるのに寄与さえしようとしている。米国図書館協会の会長、ボニー・ティヘリナ氏は、妥協しない出版社に対して謝意を表明した。それは、HarperCollinsが電子書籍貸し出しと図書館を取り巻く議論に参加したこと、またもともとのアナウンスが引き起こした懲罰的意思決定への感情を幾らかぬぐい去り始めたように多数が感じた動きを起こしたこと、そして電子書籍貸し出し回数の抑制を受けて一部の図書館がHarperCollinsに対して感じた冷たい態度をゆるめたことによる。本当のところは、米国図書館協会が、すべての出版社は図書館を通して読書する人々に素晴らしいコンテンツを提供しつづけることを可能にする決定をくださなければならないと認識しており、より成熟しているようだ。

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