電子書籍の価格操作は業界にとって危険な領域

Appleと5大出版社が、2人の原告とシアトルを拠点とする法律事務所に告訴された一件は、現時点ではまださざ波のようなものだが、問題の構造は業界を変動させる力を秘めている。

» 2011年09月16日 14時30分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 米国で巻き起こる訴訟関連の話題は不幸に満ちていると誰もが感じ始めている中で、また新たな訴訟が起こった。Appleと5大出版社が、2人の原告とシアトルを拠点とする法律事務所、Hagens Bermanに告訴されたのだ。


 待て、シアトル? Amazon.comの本社がある町じゃないかって? まさにその通りだ。

 この訴訟では、被告らがAmazonに電子書籍の価格を上げるように強要し、それに従わなければこれら5つの出版社から刊行されている電子書籍を販売できなくなるよう仕向けたことで幾つかの主要な反トラスト法に違反したと主張している。訴訟で明示されている出版社はHarperCollins Publishers、Hachette Book Group、Macmillan Publishers、Penguin Group Inc.、Simon & Schusterで、この5社で書籍市場全体の85%をコントロールしている。5大出版社は良くて価格操作、悪ければ恐喝に近いことに手を染めたとして告発されている。一方、本件に関する最近のニュースによると、Hagens Bermanが従事している活動はAppleがiPadを市場投入しようとしていた時期に実際に起きたことに対応しているようだ。

 2010年のインタビューで、当時AppleのCEOだったスティーブ・ジョブズ氏が「消費者が同じ電子書籍をAmazonで9.99ドルで購入できるのに(そのころのAmazonのポリシーはKindleストアですべてのNew York Timesベストセラーを9.99ドルで販売するというものだった)、iTunes Storeでほぼ15ドルも払っているのはなぜか」と質問されたときにうっかり口を滑らせたのかもしれない。ジョブズ氏は「これから両小売業者の価格は同じになるだろうと」シンプルに返答し、何らかの形でそれを知っていなければおそらく論理的に話すことができないはずのAmazonの値付けの変更についてほのめかした。

 「出版社にとって幸運にも、Amazonの人気と値付けの構造を自身と同様に恐れる共謀者がおり、それがAppleだった」と、消費者代理の弁護士でHagens Bermanの設立パートナー、スティーブ・バーマン氏は語る。

 「われわれは、電子書籍リーダーとしてiPadの対抗馬となるKindleについて、その人気が高まる前にAppleがそれを無力化する方法を必要としていたことを証明するつもりだ」(バーマン氏)

 プレスリリース全体はこちらから入手できる。

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