フランスの新法は合法的電子書籍の窃盗か?

2000年以前の絶版書のデジタル出版権を文化省が強制掌握する法律がフランス議会で可決された。この法律で損なわれる権利にはどのようなものがあるだろうか。

» 2012年03月05日 11時22分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 電子出版のおかげでたくさんの有益なことが実現した。例えば絶版となった書籍や容易には見つからないテキストにまたアクセスできるようになったことだ。最近、サスペンス作家のジム・トンプソン氏の電子書籍をリリースしたLittle, Brown and Companyのレーベル「Mullholland」のように、復刊なども盛んだ。しかし、最近フランスの内閣が批准した新法は、著作者やフリーソフトウェア、海賊版支持グループにとっても、権利を奪われたと感じさせるものだ。

 この新法をざっと解釈すると(こちらの英語サイトで翻訳されている)、2001年1月1日前に出版された出版物はすべてフランス国立図書館、Bibliotheque Nationale de Franceとフランス文化省の所有物ということになる。政府の法案では、本の権利を出版社と著作者の要件に合致するよう意図された管理グループに譲渡するが、出版社との関係がもはや存在しないなら、これが著作者にとって果たして有益なのかということについて一部の評論家は懸念を表明している。また、基準となる期日より前にフランスで出版された国外の著書の作品もこの法律の対象となる。

 新法の説明によると、この法律が損なう主な権利は著作者が既刊書タイトルを自主出版する権利だ。何人かのベストセラー作家はKindleプラットフォームを通じて初めて自らのタイトルを電子書籍化しているので、Amazonが踏み込んでくるだけの影響力を持つ可能性のある1領域だ。Amazonはこの法律の標的になっているとして、この新法の英語版サマリーの中で特に言及されている。

 興味深いことに、フランスでこの法律に反対する陣営に加わったのは、通常は著作権の諸問題をめぐって互いに対立するとみられている著者利益の代表組織と自称Pirate Partyの両者だ。問題となっている著者の6カ月間の適用除外申請期間に関する概略は存在しているが、著者が権利維持するために取るべき手続き、あるいは著者が亡くなっている場合、遺産となった書籍について権利維持するための手続きは不透明だ。

 写真はmassispost.comの協力による。

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