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» 2012年04月13日 13時00分 公開

eReading Maniacs――「電読」の楽しみ(3):「電子書籍」サービスを選ぶときに考えること (2/2)

[風穴 江(Ko Kazaana),ITmedia]
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プラットフォームのリスク

 リスクはほかにもある。

 上で例に挙げた「BIG COMICS」では、先ごろユーザーに対して以下のような告知が行われた。

「Apple社に対し、本アプリのアップデート版を審査申請したところ、既に配信しております『黄昏流星群』の一部がApple社の審査基準に従っていないとして、審査不合格となりました。そこで、誠に残念ながら、本日より『黄昏流星群』を販売停止とさせていただきました。(以下略)」(2012年3月21日付けでユーザーに告知された『BIG COMICS』の『重要なお知らせ』より)

2012年3月21日付けでユーザーに告知されたBIG COMICSの「重要なお知らせ」

 「BIG COMICS」はiOSアプリケーションとして提供されており、アプリ内からコンテンツを購入するようになっている。「電子書籍」サービスがアプリケーションとして提供されているため、そのアプリケーションを提供できなければ、そもそもサービスとして存続することができない。サービス提供者(デジタルカタパルト)としては、Appleの審査を通るようにする以外に選択肢はなく、「黄昏流星群」の販売停止はいかんともしがたいことだったろう。

 すでに販売停止となった「黄昏流星群」は、2012年4月末日で再ダウンロードもできなくなる。前述のように、このアプリケーションには、ダウンロードしたコンテンツをローカルに(永続的に)保存する仕組みはない。購入したコンテンツはローカルにキャッシュされるだけなので(キャッシュ領域は、100Mバイトから4Gバイトの間で設定可能)、5月以降は、このキャッシュから消えてしまうと「黄昏流星群」を二度と読めなくなってしまう。

 せっかく購入したのに、何とかならないのかとも思うが、

「Apple社の課金システムを通してサービスをご提供しておりますため、弊社ではご購入者様の個人情報及び購入の有無を照合することができません。」(同)

ということなので、購入したユーザーへ返金することもできないし、例えば、BIG COMICSがiOS以外のほかのプラットフォームで提供された暁には過去に購入したユーザーへコンテンツを提供する、といったことも不可能となっている。

 文句を言いたい先はいろいろあるが、読者としては「どうもこうもしようがない」としか言いようがない。

当たり前の「電子書籍」へ

 こうしたリスクをすべて回避するには、コンテンツが、対応端末にもサービスにも、はたまたプラットフォームにも依存しない形で入手できるものを選ぶしかない。すなわち、テキストやPDF、EPUBといったオープンなフォーマットを採用し、かつサービス依存の仕組み(DRMなど)が用いられていないもの、ということになる。とはいえこれを求めると、現状では選べるコンテンツのバリエーションはぐっと狭まってしまうというトレードオフがあるのだが……。

 ここまで気にするのはパラノイアだと言う人がいるかもしれない。しかし、読みたいものを、読みたいように、好きなだけ読み続けられるのは、紙の書籍なら当たり前にできていることだ。本の読み手としては至極当然の欲求であり、決して無茶な要求ではないはず。「電子書籍」とはそういうもの、という諦めが安易なコンセンサスになってしまわないためにも、読みたい人が読みたい形について、もっと声を上げていく必要がある。

 最後に補足しておくと、私は決して「DRMフリーなものだけを読め」と勧めているわけではない。人それぞれ、コンテンツの永続性に対する思いの強弱はあるだろうし、どこまでのリスクを考えるかも異なるだろうから、選択はさまざまだろう。混沌とした状況はまだしばらくは続きそうなので、紙の書籍だと読むのが辛いといったような特段の事情がないのであれば、読み返すことがないコンテンツは「電子書籍」で、繰り返し読むものは紙の書籍でと、「電子書籍」に無理にこだわらない選択が賢明なのかもしれない。もちろん、「電子書籍」が安心して読み続けられればそれに越したことはないのだが。

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