「代官山 蔦屋書店のノウハウを」――佐賀県武雄市が新図書館構想

佐賀県武雄市が公立図書館の運営をTSUTAYAなどを手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に委託。Tポイントカードで貸し出しを受けられ、Tポイントも付与される新しい形の図書館を来年4月にオープンする。

» 2012年05月07日 13時30分 公開
[ITmedia]

 佐賀県武雄(たけお)市が公立図書館の運営をTSUTAYAなどを手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に委託、これまでに類を見ない図書館を来年4月にスタートする。

完成予想パース図

 5月4日に開催された発表会には武雄市長の樋渡啓祐氏とCCCの増田宗昭社長が参加。その様子はustreamで確認できるが、冒頭、「市民の生活をより豊かにする図書館を作り上げたい」と新図書館構想プロジェクトについて説明した樋渡市長は、「地域の文化が向上しないと元気にならない。図書館を起爆剤に地方から文化を創っていきたい」と強調、これがロールモデルとなって全国に拡がっていけばと取り組みの意図を話した。

 市の公式ページをFacebookに移行したりと話題の同市。前例のない取り組みにCCCを鶴の一声で選んだ樋渡市長は「例えば空間演出、Tポイントカード、レコメンド機能など、書店や小売店とは異なる“企画会社”としてのCCCに感動した」とその意図を話す。

 そして、新図書館構想における9つの市民価値を以下のように挙げた。

  • 20万冊の蔵書
  • 雑誌が“買える”図書館
  • 映画・音楽の充実
  • 文具販売(プライベートブランド含む)
  • 検索・ITソリューションの充実
  • カフェダイニングの併設
  • 代官山 蔦屋書店のノウハウ注入
  • 図書館カードに変えてTポイントカード利用(Tポイントが貯まる)
  • 開館時間の拡大および年中無休

 これらの市民価値からざっとイメージできる新図書館の姿は、Tポイントカードを持っていれば誰でも貸し出しが受けられ、貸し出しでもTポイントが付与される蔵書20万冊の図書館。一角では雑誌や文具が販売され、カフェダイニングも併設。現在は午前10時〜午後6時となっている開館時間は午前9時〜午後9時に拡大し、さらに年間約30日あった休館日も無休にする。その上で、現在の図書館の年間運営コスト約1億4500万円を最低1割はコストカットしたいとした。市外からの利用については返却を郵送でも受け付ける施策などを検討中だという。

 これらのノウハウはCCCが昨年代官山にオープンした蔦屋書店を基にしたもの。顧客価値を追求した代官山 蔦屋書店のノウハウを注ぎ込んだ図書館という場を作ることで市民価値を追求したいと樋渡市長は述べた。

 質疑応答では、貸し出し履歴に関する取り扱いを巡って樋渡市長が語気を荒げる場面も。図書館の運営業務がCCCに委託され、構想の中で図書利用カードをTポイントカードに置き換える計画が明らかになったことで、貸し出し履歴がCCCなどにわたるのではないかという懸念を指摘されてのことだ。

 樋渡市長は、「何を借りたかっていうのは、何でこれが個人情報だ! って思っているんで」と個人情報の定義について独自の主張を展開、その後、自身のブログでも追加のエントリを挙げているが、インターネット上では多くのユーザーが強い懸念を示している。情報の扱いに関しては今後協議を重ね、6月に協定を締結・公表する予定としている。

 前代未聞の取り組みをぶち上げた樋渡市長。その道は平坦ではないが、「ユニークでドライブ力がある」と増田氏が評した変革の強い意欲は伝わってくる。CCCにとっても公共施設を運営するのは初の取り組みとなる。さまざまな課題を解決しつつ公共施設の新たなロールモデルとなれるだろうか。

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