ITmedia NEWS > 社会とIT >

「2ちゃんねるで叩かれていた」――Facebookにはまり続ける武雄市長の“野望”とは(1/4 ページ)

» 2011年12月14日 07時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「当初の目標からすれば100%どころか、1000%くらいの成功ですよ」――佐賀県武雄市が公式ページをFacebookに移行してから4カ月。同市のFacebookページの「いいね!」の数は9000を突破し、総アクセス数は1000万PVを超えているという。

 同市の“Facebook市政”はこれだけにとどまらない。11月7日にはFacebook上に特産品販売ページ「F&B良品」を開設したほか、これらの取り組みを全自治体に広げるための団体を年内に設立するという。

 人口約5万人の武雄市は、日本をどう変えようとしているのか――取り組みの背景と今後について、同市の樋渡啓祐市長に聞いた。

2ちゃんねるで「めちゃくちゃに叩かれていた」

photo

――市のページをFacebookに移行したのは、市長のアイデアだったとうかがっています。そもそもなぜ、このような施策を実施したのでしょうか。

樋渡市長 まず、ホームページというのはもう古いんですよね。更新は遅いし、双方向性も共有性もない。要は石器のようなものです。今が石器時代であれば石器でもかまいませんが、これだけスピードのある時代に石器で対応するというのは無理な話ですよね。

 Webが紙と違うところは、ユーザーとの双方向性があることだと思っています。だからといって市の職員がHTML言語を使って頻繁にサイトを更新するのは無理だし、掲示板のようにすれば「2ちゃんねる」みたいに荒れてしまう。つまり、これまではどうしても市のページ上で双方向性を確保することができなかったわけです。それに、ユーザー同士で情報を共有することもできなかった。

 こう考えたときに、市のページには双方向性や共有性、実名制というのが大事だとずっと前から思っていました。

――そのように考え始めたのはいつごろからでしょうか。

樋渡市長 10年ほど前からですね。だって、2ちゃんねるでぼろくそに書かれるんだから。僕は当時総務省の役人だったんですが、スレッドが5つくらい立ってめちゃくちゃに叩かれた。

 例えば僕は大阪府高槻市に出向したとき関西大学を誘致しようとして、結果的にそれは成功したんですが、そのときもものすごく悪口を書かれましたね。しかも、それを書いているのが誰だか分かればまだいいんですが、分からないわけですよ。だから当時「これはだめだな」と思った。全然建設的じゃないし、“便所の落書き”だと。

 こうした自分の経験を踏まえて、やはりWebサイトには実名制があったほうがいいと思っていました。さらに、双方向性がないと意見が広がらないからもったいない。例えば誰かと誰かがやり取りしているときに、双方向性があれば他の人も会話に入ってこれますよね。

 このようなことをずっと考えていて、Twitterが出てきたときは「これかな」と思いました。でもTwitterの場合は実名制が担保されていないし、だんだんノイズが入ってきてしまって。「これはちょっと違うかな」と思い始めたころに、Facebookと出会ったわけです。

 Facebookを使い始めたころ、まだ100人ほどしかフレンドがいなかったんですが、自分の投稿などに対する反応がすごく良かった。もちろん反応といっても僕のことを礼賛するわけではなく、「こうしたらもっといいんじゃないか」とか「こういう参考資料があるよ」とか。こうやって自分が使いこんでいくうちに、これは行政でも活用できるんじゃないかと思い始めました。

 要するに、Facebookは基本的に実名利用というところが一番大きいですね。自分が2ちゃんねるで叩かれまくっていた10年前から思っていたことを、今ようやくクリアできた。これが、市のページをFacebookに移行しようとしたきっかけです。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.